新しい推しとの出会いはいつだって刺激的

今の推しとの出会いを覚えている人はどれくらいいるのだろうか。
言い方を変えよう、今の推しにハマったきっかけを覚えているだろうか。
鮮明に覚えているという人もいれば、全く覚えてない人もいるだろう。
私は圧倒的後者で、ここ数年の推しに関しては気づいたら沼の中、という落とし穴状態である。

オズワルドさんもそうだった。
オズワルドさんとは「夢王国と眠れる100人の王子様」に出てくる王子のことで、現在の最推しである。
彼は一目惚れ、というわけでもなかったし、ストーリーがめちゃめちゃよかったというわけでもない。いやよかったけど。
ガチャではなくてクエストをクリアしてドロップさせる方法でしか通常Verの彼とは出会えないのだが、なぜクエストに何度も挑戦してドロップさせたのかは謎のままである。
一つだけ言えることは、見た目は好きだったのだろうということである。
一目惚れではないにしても一定ラインの見た目の好みはクリアしていたようだ。
いったい何様のつもりだ、といった感じだが、オズワルドさんにどうしてこんなに沼っているのか本人にもわからないのだ。

そんな彼が、今回イベントに登場すると聞いて私は急いで対策本部を開いた。
何せ初めてのガチャイベント。課金は覚悟の上だった。
夢100にはマンスリーセールというものがあって、通常妖精石16個で1220円のところ、月に一度だけ20個1220円で買え、最大100個の妖精石を6000円で購入できるのだ。
私はこの中で収めると心に決め、ガチャラインナップへ向かった。
オズワルドさんのイベントガチャ期間は1か月ある、焦ることは何もない。
なあに、もしでなくたって来月になればまた石は買えるんだ。

…そう思っていた時期が俺にもありました。
結論から言うと6000円以上回した。
私が多大に影響を受けているソシャカスの方が言っていたことは本当だったのだ。
用意した予算を使い切るなんてことは夢にも思っていない、と。
6000円以内で推しを出すなんて考えが甘すぎるのだ。
何がもしでなければ来月に回せ、だ。だまらっしゃ。
鉄は熱いうちに打て。推しは推せるうちに推せ。
それを思い出したとき、私の財布にいる魔法のカードがほほ笑んだ。

詳細は省くが、新たに設定した予算よりもあと10連回せるくらい残してオズワルドさんは私のもとに現れた。
推しは出た瞬間黒字。
オズワルドさんが姿を現した時点で課金した金額など忘れてしまった。
体の震えが止まらぬままスクショを撮り、さっそく彼をマイルームへ招待した。

オズワルドさんは通常Verではそんなに甘い言葉を言ってくれるタイプではない。
しかし、イベントとなるとそうではない。
大人の余裕を出しながらも、こちらを喜ばせてくれるいい塩梅のセリフを言ってくれる。
今回のオズワルドさんも例にもれず甘すぎず、だからと言って糖度なしでもない。
アラサーの体に本当にやさしい、ちょうどよい甘さの言葉を言ってくれた。
その感想は「好き…」以外にない。

オズワルドさんがマイルームに来てくれたのは金曜の夜。
次の日は休みで、こんな時期なので予定もない。
思う存分、堪能した。否、hshsprprした。
もう今後は小西克幸さんへ足を向けては寝られない。
小西さんがいる(であろう)方角を向いて座礼をし続けた土日であった。

問題は月曜日早朝、それは突然だった。

普段は7時少し前に起きるのだが、その日は5時ごろに目が覚めた。
経験したことがないような強烈な頭痛。
思い返せば日曜の時点で頭の具合が悪かった。頭痛的な意味で。
寝る前はそんなことなかったのに急に、早朝に、目が覚めるレベルで、痛み出した。
寝方が悪くて肩が凝り、頭が痛くなることはままあったのでそれかと思い、枕の位置を変えてみたりしたが痛みは増す一方で
やがて頭だけでなく首や目まで痛み出した。

さすがにちょっとまずいことになりそうだったので、とりあえず頭痛薬を飲んで再度ベッドに入った。
もちろん眠れるわけもなく、ただじっと目をつぶって痛みに耐えている間、某芸人さんが頭痛を訴えて病院に行くと脳梗塞だったという話を思い出した。
もしそうだった場合、私はどのタイミングで病院に行くべきなのだろうか。
痛みはまだ耐えれそうだし、救急車を呼ぶほどの痛みでもない。
そもそもこの時期にすぐに病院に入れるのか。
あの芸人さんは本当に運よくすぐに病院が見つかったから大事に至らなかっただけで、私はそうはいかないのではないか。
ほんの数秒だったのか、もう少し時間がたっていたのかはわからないが、そんな考えが頭を駆け巡っているとき、一つ思い出したことがある。

「これは代償である」、と。

私としたことが、うっかりしていた。
ソシャゲで推しを出すとその代償で体に何らかの支障をきたす、
という都市伝説だ。
私は週末にオズワルドさんを出した。
その喜びの代償が頭痛となって表れたのだ。
オズワルドさんを出した代償の痛みならば耐えねばなるまい。
何故なら、何度も言うが、これは推しを出した代償なのだから。

それが分かったとき、私は少し笑った。
これが推しを出した痛み。
マゾヒストというわけではないが、この痛みを経験してみたかった。

推しは役にしかたたない。
推しというものは様々な経験を通して私の人生を豊かにしていってくれる存在なのだ。

しかし、痛いものは痛い。
オズワルドさんを出した痛みに少し興奮しながらも早く薬が効いてくれることを祈りながら、私は目を閉じた。