『ONE PIECE』の「魔法」にめちゃくちゃ感動しました
「魔法」が登場するお話はファンタジーである。魔法使いのおばあさんが登場して、「なんてかわいそうなシンデレラ。私が何とかしましょう」と言わんばかりに、シンデレラに都合の良い衣装と馬車を与えるシーンを見て、僕はようやく『シンデレラ』におけるファンタジィウムを感じるのだ。
シンデレラに魔法使いのおばあさんが出てこなかったら、ただただ陰湿なお話だよ。そんなの一体だれが喜ぶだろう。
ファンタジーの登場に僕は安心する。「これで大丈夫だ。だってこれはファンタジーなんだから、ファンタジーで不幸になるなんて、マットの上で転んで怪我をするくらい難しいぞ!」って。
ファンタジーを使えば作者の望み通りの展開ができるはずだ。整合性を取るために、やむなく不幸になるキャラクターは生まれないだろう。不幸になるのは、不幸になるべくして作られたキャラクターだけだ。
多くの場合ファンタジーが出てくればキャラクターは幸せになるので、僕は安心して物語を読んでいられる。
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物語がファンタジーを扱う時、その入口を示す場合がある。『シンデレラ』なら「魔法使いのおばあさん」だし、『不思議の国のアリス』は「喋るウサギ」がファンタジーへの案内人だ。「魔法」や「不思議なこと」がファンタジーの入口である。
漫画『ONE PIECE』においては「悪魔の実」というアイテムがこのファンタジーの入口の役割を果たしているなあと感じた。
『ONE PIECE』は海賊が戦う漫画で、宝・仲間・家族・食べ物・誇り・意地・権力・国などなど、様々な物を賭けて争いが繰り広げられる。
ここまでは、近代の海を舞台にしたドラマだろうか? という思いもあるが、「悪魔の実」の登場により「ONE PIECEはファンタジーだ!」と僕は、はっきりと分かることができた。
「悪魔の実」は作中で出て来る果実で、食べると実の内容に即した特殊能力を得ることができるアイテムである。
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この「悪魔の実」は作品中の価値も高いが、設定的にもすごい役割を果たしている。
主人公に能力を持たせたい場合に「生まれつき」「ある日突然」「偶然」と言われると何だか不安になってしまう。理由がブラックボックスの中にあると「主人公が能力を持っているなら、他のキャラが持っていてもおかしくないのでは?」「主人公だけが特殊なのは作者のえこひいきでは?」と、世界観への疑いが浮かんでしまうのだ。
しかし、「悪魔の実を食べたから能力者です」なら納得できるし、因果関係が分かりやすい。能力を得た理由を丁度よく説明できていると思う。
また、「悪魔の実」という設定を作ることで、悪魔の実を巡って争いが起きる。ストーリーの進行に噛ませても違和感のない歯車になる。
そして、先に述べたように読者に対して「これはファンタジーです」と世界観をはっきりさせる役目も行っている。(「悪魔の実」がない『ONE PIECE』ってちょっと物足りなくないかい?)
なんてすごいんだ。
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僕が『ONE PIECE』を読んで、一番感動したことについて書きました。
他にも感動シーンはいっぱいあるんですけど、「悪魔の実」が『ONE PIECE』の世界観を支えてるなあと感心しています。
一番好きなのはCP9編です。
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