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読書感想文 52ヘルツのクジラたち

8月になりました。我が家の小学生3人はそれぞれ夏の読書感想文という宿題が出されていますが、毎年私の宿題のような状態になっていてやや憂鬱です。そんな親御さんもいらっしゃるのではないでしょうか。

子どもたちのに取り掛かる前に、自分の読書感想文を書いてみようと思います。とても久しぶりに読んだ小説。元々読書は好きなのですが、医者業、母親業、妻業をやりながらだと、なかなか読書の時間を確保するのが難しい。というか、読み始めて夢中になってしまうと他のことが疎かになってしまうのがわかっているので、あまり小説は読まないようにしています。

ただ、今回は読まずにはいられなかった。半年前に子どもたちを連れて映画「ウィッシュ」を見にいった時に、52ヘルツのクジラたちの予告を見て、この映画、そして小説の存在を知りました。今まで虐待や虐待疑いの子供たちと接する経緯もあり「読みたい」「見たい」となっていました。そして、先日主人が出張の際に、機内にこの映画を見たと。(JAL機内では邦画に英語字幕がついているので、主人にとっては機内でしか邦画は見られないという事情があります。)とても、深かったと。もう、読むしかないなとなりました。

本はこちらですね。

2日間程度で一気に読みました。睡眠時間は多少削りました。

お話として、「ありえない」と感じる人もいるかもしれませんが、私は「あるかも」「すぐ近くにいるかも」という感覚でした。フィクションだけど、限りなくノンフィクションに近い。虐待、ネグレクト、DV、LGBT、発達障害など今話題のトピックが盛り込まれている。そんな作品です。

小児科医的な視点から読むと、世代間伝達についてもよく描かれているなと感じました。今目の前に表出されている問題の原因が実は親、もしくは祖父母の世代に隠されている。隠されているというと響きが悪いかもしれないが、家族の闇はみんなあえて話そうとはせず、でもよくきいてみるとそこに関係性を見出すことができる。この物語に関しても複数の家族でその様子が描かれています。

色々な問題はとてもダークで、悲しくて、簡単に許して良いようなものではないかもしれない。でも、その問題があったからこそ生じた新たな関係性や美しい友情も感じられる物語になっていると思います。現実に目を向けると、同じように問題点ばかり目についてしまうかもしれない。でも問題点があるからこそ、その周りにある関係性の美しさに気がつけたり、新たな尊いものが始まったりすることもあるのではないかな、と。

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