森を守護する者
📌冬の目覚め
空の雲が低くなり
風が笛の音を真似て
高い音を出す頃
白い狼が
冬を連れて来るんだ
静かな夜の
白い狼の
遠吠えが響く夜の日から
白い霜が現れ
朝の景色を
白い幕に包むんだ
📌森を守護する者①
此の森まで
霜の降り立つ景色が来たのかと…
深い森の奥で
森を守護する者が呟く
深々とした
静寂の中で
葉に付いた
霜に触れ
霜の冷たさに
指の悴む感覚を
楽しむ
白い狼が
冬を連れて来たのか と
私は解けた霜を手に
静かな空を
仰ぎ見るのだ
📌森を守護する者②
森が痩せて
冬が越せぬと
森に棲まう者達の
声が聴こえて来る
私は木霊達に言うのだ
森は守るから と
森の奥にある
黒い木の方を見遣るのだ
📌森を守護する者③
あの赤い実を使い
森に養分を増やせば良い
森に人間の血肉の
腐敗臭が染み付いて
不快になるが
仕方がない事
森に棲まう者達の為だ と
自分に言い聞かせ
暇な烏を集めるかと
視線を周りに
ふと向けた時
あの
白い狼と
眼が合ったのだ
📌森を守護する者④
白い狼は
静かに佇んで
此方を見て
私が何か言うのを
待って居るみたいで…
だけど
私は睨み付けながら
白い狼に言うんだ
森から離れよ と
白い狼は
怒ってる様に見えたが
構わす私は
出て行かぬなら
力づくででも
と 森を守る為に言うんだ
📌森を守護する者⑤
白い狼の
唸りが響く
狼の放つ冷たい風が
私の髪を巻き上げ
森中に吹き抜けて行く
私は─
攻撃されると思い
白い狼に
棘のある葉で
攻撃してしまったんだ
📌森を守護する者⑥
あれから数日
白い狼は現れない
その方が良い
あの白い狼の
冬の風が
腐敗臭を纏わせるのも
嫌だったんだ
私は烏に
赤い実を
人間の街に
撒いて来てくれ
と 話していると
あやかしの子が
ねぇ烏に頼むの待って!
痩せているけど
木の実まだとれるよ
って言って来たんだ
📌森を守護する者⑦
此の時期に
冬とは思えぬ程の
暖かさが続いていた
それもそうだ
白い狼が居ないのだ
人間は温暖化だ
なんて騒いでいた
森では
木霊や森に棲まう者達が
落ち葉も落ち切ったよ
痩せた木の実や
歪な果物ばかりだけど
冬をなんとか
越せそうだよ って
森の皆 喜んでいた
📌森を守護する者⑧
森の皆が言う
もう冬が来ても大丈夫だね って
だけど私は
白い狼を怒らせた
硬い棘のある葉で
傷付けたんだ
きっと此の森に冬が来ないって
そう思ってたんだ
📌森を守護する者⑨
低くい空は
誰にでも等しく
冷たい風が吹いていく
木枯らしは
乾いた強さのある風
冬に吹く北風で
私は
特に 白い狼が吹かす
刺すような冷たさの
冬の風が
気に入っていた
もう見る事も無いのかな…なんて
寂しさが募るんだ
📌森を守護する者⑩
森で木霊達が騒ぎ出す
何かと見れば
雪が降って来た
どうりで寒い筈だ
なんて思い
雪を
手にして見ようとして
刺す様な冷たい風が
体の周りに
吹き続けている
感覚がするんだ
そんな筈が無いって
思いながら
風の正体を
確かめに行った
📌森を守護する者⑪
此の森のある場所に
柊の木がある
今は白い雪が舞い落ち
此の場所だけ
静けさが増してるみたいだ
其の柊の下に
白い狼が居たんだ
何故 此処に居る? と
白い狼に聞いたが答えはしない
ただ柊の木を意味ありげに
見上げてたんだ
📌森を守護する者⑫
白い狼は知らなかった筈
此の柊の木が
私の正体で本体なのを
ふと見ると
白い狼の足元に
血の付いた
柊の葉が1枚
それを見て
私は何も言えなくなって…
黙った私に
冷たい冬の風が纏い付く
柊の木に
白い雪が
静かに積もるんだ
※ 赤い実 ⤵️
※ 黒い木と赤い実 ⤵️