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山桜と闇の者
#山桜と闇の者
山桜が
赤味の強い葉と
蕾を付け初める
もう
とうに春風が吹いているのに…
山桜の元に
闇の者の姿が
未だ無いのだ─
#山桜と闇の者 ②
私を呼び付けて何用か?と
春の精霊は
山桜の頼み事は薄々分かっていた
山桜は
春の精霊の前に花弁を降らせる
何時もより
少し濃い色と薫りの花弁を
我が風が
あの者に届くとは限らないぞ と
山桜に言う
一陣の風に乗せ
山桜の花弁が届く様にと
空へ舞い上げた
#山桜と闇の者 ③
ひらひらと眼の前で
舞い落ちる花弁
一枚でも
あの山桜の花弁だと分かるのだ
ずっと
恋い焦がれた山桜だ
花弁の濃い色と香りは
まるで
山桜の
強い思いが篭っている様で…
今は山桜の元に行けぬのだ
此の不快な闇の臭いで
その
気高い 桜の花の香りを
消さぬ為に
#山桜と闇の者 ③
#季節外れの詩
あの山桜の元に行けなくて…
今、此処で
逝く事は出来なくて…
あの山桜が咲く姿が見たかった
あの薫りに包まれ
舞い落ちる花弁を
見て居たかっのだ
気持ちが募り過ぎて
血の臭いも
闇の気配も拭えぬまま
遠目からでも
山桜を一目見たくて…
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#山桜と闇の者 ④
#季節外れの詩
遠くから見る
闇の者が居て
血の臭いも
闇の気配も
此の身に預ければ良いと
暖かな風に乗せ
葉を一枚
闇の者に渡す
もう朽ちて逝くならば側で眠れ
と闇の者を誘うのだ