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けがれた者達の歌 春雷

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春の季節に書いた 春の詩と物語の在り処
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#月

満月

満月

今宵は

月明かりの中に居ると

僕の影が
はっきりと分かる程に
明るいんだ

月明かりを
掴める筈無いのに

手の平を広げて
掴む真似をして

僕は鼻唄を歌って歩くんだ

僕の歩く早さに
現れる合図に

足を止めて

僕は

ただ 月を見上げているんだ

月の扉

月の扉

月の扉は

撫でる様な

夜風を吹かせる

夜風に纏い憑かれ

身体には

夜風の匂いが染み付いてく

僕は綺麗な月に捕らわれ

月明かりに

視界を奪われるんだ

なんて事ない夜

なんて事ない夜

夜道を歩いていると

星が瞬く

夜道を歩いていると

猫が鳴く

夜道を歩いていると

暗闇が視える

夜道を歩いていると

風が吹く

なんて事ない夜に

夜道を歩いていると

月が見えているんだ

駆け行く時

駆け行く時

僕は月を眺めに出掛けたり

雨の音を聞きに離れたり

風の向きを見に外に出たりと

歩き回ったりするけど

僕を君が呼ぶ時

綺麗な人が待ってるんだ って

駆けて行くんだ

嘆きの唄 

嘆きの唄 

太陽と月を崇める者達の

嘆きを如何か聞いておくれ

夜空も星も静寂閑雅

黒い太陽の静けさに危惧し

地上の月の灯りに恐れる

侵食するのは悪意の言葉だ

黒い太陽に溜息させるなと

月を満ち欠けさせるなと

青銅の悪魔が嘲笑う

いつかが来るのか 来ないのか

時は刹那に過ぎ逝くだけ

月夜の衣装

月夜の衣装

月の光を反射し

綺羅びやかに見える布地

纏えば 月の光の中

捕らえよう

月の光を

此の手の中に

月光の衣装で舞えば

神さえも眼に止めるはず

緩やかな風を味方に付け

長い尾鰭を持つ魚の様に

優雅に舞い続けるんだ

闇夜の宴

闇夜の宴

太陽を海に落とせ

月を陸に置け

夜明けなど求めないし来ない

生きる者共に眠りは無い

生命有る者達の

本能を掻き乱せ

欲望を目覚めさろ

乾きと飢えの世界で嘆き吼える獣は

感情が枯渇し涙するか?

空からの雫を手に入れろ

炎は身を守る武器か鎧か

夜目で闇夜の者を見極めろ

心が痛いんだ

心が痛いんだ

月が恋しいからと
鳴かないで

涙が月に届くから

月が恋しいからと
鳴かないで

哀しく月も涙するから

月が恋しいからと
鳴かないで

心が痛いんだ

月が恋しいからと
鳴かないでいて

僕が側に居るから

願い花月香

願い花月香

夜空が淡い色に染まり

月の輪郭も

薄雲に隠れている

風が草原を撫でる様に

通り過ぎてく

春風に乗って薫るのは

草花の匂い

眼の前に有る桜が

風に揺らされ

月光に照らされた花弁が

僕の目の前で舞い落ちて来るんだ

秘かな思いを

花弁に願い

届けば良いのにと…

声

隠そうとしても
私から零れ墜ちてゆく
ものが有って
隠せてはいない

如何しても止まってしまう足

四方は壁に囲まれ
八方塞がりで出口が無い

響くのは自分の声ばかりで
もう、声も枯れ出なくなる

上を見上げれば
空が有って
偶に、壁から
月が姿を現すのを
見ては悔しかった

「私の気持ちなんて分かって無いだろ!」
なんて…

目の前に有る
真っ白い壁に
赤い色でデカデカと
今の気持ちを書いてやる

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森

森の中で追いかけて
走り回って
見失って
置いて行かれた

何時だって月は遠くて

幻の様な月明かりを
手で触れるだけ

月が太陽を
手に入れたから
置いて行かれたのかな?と思い

風に「如何したら良い?」と
聞いても答える訳無く

ただ、ただ、
青い空を見上げ
雲の流れを眺めてた

昼と夜の狭間

昼と夜の狭間

今は
昼と夜の狭間
空に見える月は
欠けた白い月

暗くなり
星が見える頃には
何時もの
黄色い月に
変わるのか

月の無い夜道

月の無い夜道

月の無い夜道
全てが
黒き色に染まる

夜の景色の中に
闇の物の作り出した
影に入れば
闇の物の餌食となり
その身、
削られ失う