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輸送費の会計処理は何故クソ面倒なのか

【本記事はゆる会計Advent Calendar 2024における9日目のエントリーです】

まず、前提を申し上げますと、年商100億円程度のBtoBメーカー目線の話になります。

タイトルで私は「輸送費の会計処理は面倒である」と断言していますが、私のやり方が恐ろしく非効率である可能性が高いです。もし、良いやり方があれば私にコッソリ教えていただけると泣いて喜びます。
でも、弊社にとっては輸送費こそが経理DXを妨げる最大の障壁になっていると個人的に考えています。

1.管理会計

さて、何故面倒かというとスバリ「変動費」だからです。工業簿記の授業で習いますよね、変動費。
ここで、直接原価計算の計算式をおさらいしましょう。

売上高 - 変動費 = 限界利益
限界利益 - 固定費 = 営業利益

ここで出てくる限界利益、これ社長も営業もみんな大好きなんですよ。事業部ごとあるいは製品ごとに、限界利益の増減理由を徹底的に分析します。なぜ増えたのか、減ったのか…。
固定費も低減活動の為ある程度面倒は見ますが、所詮は配賦計上になりますので、日々の業績管理では注目度が低いように感じます。

そんな注目を浴びる変動費、分析するためにはできるだけたくさん情報を集める必要がありますよね。輸送費であれば、運送会社、発地、着地(納品先)、品目、出荷数量、輸送距離等が考えられます。
このように、会計処理の中に管理会計の情報を加える必要があるのです。

となると、単に請求書をAI-OCRで読み取って仕訳を計上するだけではダメですよね、自社の販売管理システムから情報を拾ってくる必要がありますから。また、同様の理由でこの作業を経理代行業者等に委託するのは困難ではないかと思います。

2.請求書明細と按分

幸い、弊社は長年付き合いのある顧客との取引が中心ですので、新規の納品先はあまり増えることはないのですが、それでも納品先によってはひと月に20回ほど出荷しています。そうなれば、請求書の明細は50件~200件になります。
こうなると、可能であればcsvで明細データが欲しくなるものですが、運送会社さんによっては貰えたり貰えなかったりします。
貰えないなら、紙の請求書明細を目視でチェックするしかありません。

さて、1つの明細はトラックの1出荷あたりの運賃を意味するのですが、仮にそのトラックに複数の製品を積み込んだ場合、製品ごとに運賃を把握する為にはどうすればよいでしょうか?
答えは、製品の出荷数量等の基準を用いて、運賃を製品ごとに按分してあげる必要がありますよね。
また、合積みによる分納を希望される納品先もあります。この場合は、運賃を納品先ごとに按分する必要があります。

3.物流業特有の話

固定客と毎月一定量の取引がある場合は、専属輸送がメインになります。トラック数台を貸し切って、自社荷物のみを専属的に運んでもらうわけです。この場合、トラックの維持に必要な費用(車両固定費)も荷主負担になります。はい、この固定費も製品ごと納品先ごとに按分が必要です。

物流業特有の収益認識タイミングの話もあります。我々製造業は出荷基準や検収基準によって収益認識しますが、運送会社さんは国内輸送において積込基準を採用しているケースが殆どです。
これが何の問題を引き起こすかというと、月ズレが発生してしまうのです。トラックに積み込んだ日と、納品先に到着した日が月を跨いでズレてしまうことが度々あるんですね。
これが突合作業における不一致の原因になりまして…。

やりたいことは極めて単純で、高度な話は全く無いのですが目視チェックや按分が必要で、ただひたすら「面倒だなぁ」と感じるお話でした。

4.おわりに

ちなみに大手メーカーさんだと物流子会社を持っていたり、自前で物流システムを用意して運送会社さんに入力させる、といったパワープレイをしているみたいです。
弊社はまだマシで、路線便による出荷が多い会社さんだともっと按分作業が大変かもしれません。まあ、大手運送会社さんですと独自の送り状発行システムを提供していて、出荷データをcsv出力できたりしますが。

最後に、燃料費の高騰・人材不足に加え、時間外労働時間の上限規制という、所謂、「物流の2024年問題」に直面するなかで、いつも変わらず製品を決まった時間に届けてくださる運送会社の皆さんには頭が上がりません。
我々製造業にとって、物流業界とは切っても切れない関係であり、今後とも末永くお付き合いさせていただきたいと思っております。

参考文献

  1. “物流・倉庫業における内部統制と会計処理のポイント“. 企業会計ナビ | EY Japan, 2016. https://www.ey.com/ja_jp/library/info-sensor/2016/info-sensor-2016-10-02(参照2024-11-09).

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