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深夜1時の冷蔵庫
ある日の夜。僕は初めて夜中にテレビをつけた。
その夜は布団に入ってから、1時間以上も寝付けなかった。原因は、布団が熱かったからである。
日中、雨の降る気配が少しもない、日差しが強くポカポカした陽気だった。そのため、掛布団・敷布団・シーツ・枕の寝具すべてを天日干しした。部屋に取り込むときも熱を帯びた感じが久しぶりに伝わってくるような、温度高めな布団に仕上がっていた。
天日干した日の布団は、夜になると触った感じは冷めているのだが、寝ると冷たさは感じず、不思議と太陽の温かさを思い出させるようなぬくもりが自分の身体を包んでくれる。
仕上がりは温度高めだったが、夜になれば快適な温度で僕を迎えてくれるだろうと、快適な寝心地にワクワクしながら、夜を待った。
22時半。
布団に入った。いつも通りに冷めている。しかし僕はまだ冷静なままだ。本番はまだまだこれからである。よーしよしと思いながら、目をつむった。
23時45分。
熱い。熱すぎる。
ということで、寝付けなかったのである。
寝よう、寝ようとするほど寝れなくなる。しかし目の開き方が日中と同じ開き具合なので、時間がもったいなく感じてきた。
そこでテレビをつけた。
僕は生まれてこのかた21年間、24時以降のテレビ番組をリアルタイムで見た事が無かった。というか24時以降起きていたのはこの夜で人生2回目だった。
普段から好んで夜更かしをしてこなかったが、いざ無意味な夜更かしをするとなると、否が応でもワクワクしてきた。
体を冷やさないように布団にくるまり、出来るだけ体を縮こませながらテレビを見た。リモコンをポチポチ押して適当な番組に合わせる。面白そうな番組を見つけ、それを見る。普段なら見ないような内容の番組だったが、意外にも面白かった。
その番組を見終わり、ふと喉の渇きに気づいた。部屋は寒いから、布団から出るのが億劫だったが、喉の渇きには勝てず、仕方なく布団から出て、冷蔵庫を開けた。
すると、パッと冷蔵庫の中の電気がついた。
僕は真夜中なのに電気がつくことに、なぜだか感動してしまった。
多くの人が寝静まる真夜中でも様々なエネルギーが止まることなく供給されていることは当たり前ではなく、多くの人に名前や顔を知られることなく陰で頑張っている人たちのおかげなのだということに気づき、鼻筋の奥から水がせりあがってきた。本当に感謝であります。
僕は冷蔵庫からお茶を取り出し、喉に流し込む。
多くの人に知られることがないはずなのに声を押し殺し、真っ暗闇の部屋の中、泣いた。