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言い訳してもいい、今はジャンプする前だから

私は2年前に会社を辞めた。
長く勤めた会社だった。

仕事がきつかったわけでも、人間関係に悩んだわけでもない。
嫌なこともあるにはあったが、長く勤めてると鈍感になってくる。
毎日同じ仕事、同じメンバー、
変わらない経営陣の考え方、そんなものに嫌気がさしたのだ。

でもそれだけじゃない。
私は自分が生きてる意味みたいなものを試してみたくなった。

子どもの頃から、なんとなく思っていた。
「大人になったら何になりたい?」
そんなこと聞かれても何も答えられなかった。

 私の居場所は? 私の夢は?

何をすればいいか分からないまま学生時代を終えて、就職、そして転職。

働いていると、自分が役に立ってる実感も少しは味わえた。
でもそんな瞬間は短くて、気づけば時間を食い潰すだけの仕事に追われてた。

それはそれで楽だけど、このままだと私、たぶん死ぬ瞬間に後悔するな。
つまんない人生だったと思い返すのだろう。
そう考え出したら、会社を辞める以外に選択肢はなくなっていた。

 会社は辞める。
 それで、私は何をするの?

そんな頃、知り合いが不動産屋を始めたと聞いた。
それならできるはずと、私は飛びついた。
「不動産の仕事始めます、資格もとりましたー」
私は退職した。

とはいえ今までやったことない仕事だし、場所も借りないと、人も雇う?
考え過ぎるよりも始めた方がいいと言ってる人も多いし、とりあえずやってみる?

 いいのかな、このまま進んでも
 いいのかな

なかなか最初の一歩が踏み出せずにいたら、そのタイミングで予想外のことが起こった。

そうだ、
コロナがあっという間に世界を変え始めたのだ。

魔法のようだった。

昨日の常識が、非常識に、
魔法の杖の一振りで、灰色に変わっていく世界。

私も、止まった。

思っていたことができなくなった。
でもなんか、ほっとしてる自分がいた。

言い訳でもいい、しばらく様子をみよう。
とはいえ、何もしないわけにもいかない。
とりあえず、どこかで働こうか。

こんな時期だし選り好みできないけど、私なんかに働いて欲しいと声をかけてくれる会社があった。
小さい会社の、Webサイトの更新作業が任された。

実は前の会社を辞める時、それまで積み上げた努力は意味なくなっちゃったと思っていた。

私は負けず嫌いのとこがあったから、
専門知識がないと半分馬鹿にしてくる(気のせいかもしれないが)後輩に負けたくなくて、会社以外でも本を読んだり、Illustratorも家のパソコンに入れて覚えたりした。
高いソフトだったから、服買ったりするのもちょっと我慢した。

HTMLやCSSも覚えた。
自分でサイト運営したら出来るようになるかもしれないと、ホームページも作った。

私は頑張ってるつもりだった。
でも家族からは会社人間なんて、昭和のおじさんみたいだと冷たい目で見られ、
社内に褒めてくれる人はいたけど、それで昇給したわけでもない。
しかも会社辞めたから、意味なくなっちゃったじゃん。

そんな私のやってきたことが、小さな会社で役に立った。
Googleの検索順位が上がるたびに、営業さんや社長も喜んでくれて、
でも自分が一番驚いた。

ちゃんと向き合って努力したことに、意味がないことなんてないのかもしれない。


そんなこんなで、半年、1年と過ぎた。
まだまだ世界は動けないままだった。

ただ、自分だけじゃなく、社会全体が動けない状態だから言い訳はできた。
私のせいじゃない、コロナのせい、人も街も動けないじゃない。

これはきっと、大きな変化が起きる前なんだ
ジャンプする前に大きく体は沈み込む
今はそれだから
きっとこのあと、大きく飛ぶ!

そう自分に言い聞かせてた。

今は準備期間だから、そのためにもインプットとアウトプットは欠かさなかった。
たいしたことじゃないけど、本を読んだり、noteの記事を読んだり、
そして心に何か溜まると、自分でも書いた。

そんな風に時間は過ぎて、
でもある時、誰かが私に気づかせてくれた。

特定の誰かというより、新しい環境で接したいろんな人、noteで知り合った人達。
自分では気づけなかった。
私にできること。
でも気づいたら、もう疑う余地はなかった。

よく、チャンスの神様の話を聞く。
チャンスの神様を見つけて、前髪を掴んだ人の話。

私はチャンスの神様を見つけた訳じゃない。
見つけたのは、ほんとに小さな端っこの点みたいなもので、
その点をたどると、もう1つの点に繋がっていて、

振り向くと、

「これが、そうなの?」

点と点が、次々に繋がっていった。
今まで自分がしてきたことが、どんどん繋がり始めた。

やってきた仕事、少しは頑張って身につけたスキル、役立つか分からなくても受けてみた資格。
そして人。
切れないように、切れそうだったら自分から声を掛けて気遣ったりして繋いできた人。

それらがずっと繋がっていくのが見えた。

端っこの点に気づかせてくれたのも人で、点を繋いでくれたのも人だった。

どうしてか分からないが、私なんかを助けてくれる人がいる。
たぶん、私が頼りないからだね。
若い頃は負けず嫌いだったけど、今は年下の子にさえ甘えられちゃう。
だって今更カッコつけても仕方ないじゃん。
分かんないもんは知ってる人に聞いた方が早いじゃん。
「ごめん、教えてーー」
面の皮が厚くなっただけなのに、なんか進みやすくなった。

私はきっと、この道を進むために今まで頑張ってきたんだ。

どうして今まで気づかなかったのか、
私ができることはこれしかないのに
そう、あとは始めるだけ。


人生で一番最後の、一番大きなエンジンがかかった。

だけど車は旧型、運転は初心者だし、初めて通る道ばかり。
それなのに不安はあまりない。

だって迷ったら、人に聞けばいいし
止まったら、言い訳してもいいし
間違えたら、戻っても大丈夫。

今までもそうしてきたのだから
これからもそうして、進んでいける。



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