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誰が為に腰は泣く

東京丸の内に日本で最初の郵便局の1つ、東京中央郵便局がある。
現在は昔の外観を一部残したまま、建築家の隈研吾氏が手掛けたKITTタワーとして鐘楼の如く天高く聳えており、商業・オフィスも併せ持つ複合施設へと進化している。

当然郵便局としても機能健在で、日本全国の郵便局の総本山だけあって土日含めて毎日対応してくれる。
平日に至っては21時まで開いてるのでとてもありがたい。

郵便局エリアに入ると、白く滑らかな1枚板の座面でできたアイコニックな椅子が目に入る。
細いクロムメッキの4本脚構成の彼は、宛先記入台ごとに配置されている。

通称セブンチェアと呼ばれ、世界で最も普及したスッキングチェアだ。

正式名称はseries 7 となり、1955年にデンマークの建築家アルネ・ヤコブセンによって発表された。

9枚の薄いプライウッド(成形合板)を重ねて構築した椅子で、カラーバリエーションがとても豊富なため結構色々な所で見かける。

初めて東京郵便局で置いてある白の座面の彼らを見た時は、何となく手紙を連想してしまった。
うっすら見える縦の木目が僅かに黒く、便箋の文字が浮いているように見えたのは流石にこちらの思い込みかもしれない。

セブンチェアはオフィスシーンだけでなく、ダイニングや勉強机用、カフェやラウンジ等、様々なシチュエーションに合う万能椅子である。
我が家のリビングにも置いてあり、身体に負担が少ないのでよくそこで仕事をしている。

ところで、誰かに何かを伝える手段として1番手頃なのは、文字よりも音だと筆者は考えている。

例えば昔、土曜の正午に鐘がボーンとなればもう学校仕事は終わって休日の始まりである。
とてもシンプルな伝達。
筆者が小学生の頃は土曜の午前も学校があったため、この所謂"半ドン"はとても楽しみだった。

ちなみに、半ドンのドンは鐘の音ではなく"半分ドンタク"の略で、ドンタクは休暇を意味するポルトガル語の"ゾンターク"が日本語的に訛った言葉だと言われている。
博多ドンタクも同様と聞いたことがある。

音の方が手軽なため、メールよりも電話の方が楽でついついやりがちなのだが、言いっ放しで終わることがたまにある。
そして言った言わないの不毛なやり取りが発生し、失敗したと思うことがある。
ここが音と文字の大きな違いではなかろうか。
記録に残す点では文字が優れている。

思えば勤務中、メールを読んで、メールを書いて、メールと睨めっこして、メールを書いて、その間に溜まったメールを読んで、またメールをチェックをしている気がする。
そして途切れることなく作業していると気付けば長時間ずっと椅子に座っている。
体の大事な橋梁である腰が、じわじわ攻めてくるゲリラ隊により最後は爆破されるのではないかと思うくらいに辛くなってくる。

座る行為自体が人間の身体に無理をさせている以上、少しでも良い椅子を選んで仕事した方がよいと思うが、程度の問題であってぶっちゃけしんどいことに変わりはない。

どんなメールも鐘をドンっと1回鳴らせばこちの意図が伝わって、もひとつ鳴らせば仕事は終わり!とならないかと切に願いながら、手紙をしたためるように苦心して日々タイピングを行っている。

この原稿も、自宅のセブンチェアに座りながら打ち込んでいるが流石にちょっと疲れてきたので今日はもうドンタク。
そろそろ腰に戦線離脱の警鐘が鳴ってる気がする。

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