医療人2030 Core - アイリス・沖山CEOが語る「生成AIと医療機器、現状と未来について」
新しい医療のパラダイムが求められている現在。そんな時代にふさわしい、次世代医療を担う人材を育むプロジェクトが「“医療人2030”育成プロジェクト」です。
活動の核となるセミナー「Coreコース」の第1回は、アイリス株式会社CEOの沖山翔先生をお招きしました。「どうやってAIで医療を豊かにするかが、永遠の問い」と語る沖山先生は、生成AIと医療機器をめぐる諸問題をどう捉えているのでしょう?
2024年10月11日に行われた講演の一部をお届けします。
登壇者プロフィール
アイリス株式会社CEO/医師
沖山 翔
2010年 東京大学医学部卒業。 日本赤十字社医療センター救命救急科での勤務を経て、ドクターヘリ添乗医、災害派遣医療チームDMAT隊員として救急医療を実践。 石垣島・波照間島の沖縄県立病院や診療所での勤務、また南鳥島・沖ノ鳥島(国交省事業)にて離島医・船医として総合診療に従事。 国立研究開発法人 産業技術総合研究所 AI技術コンソーシアム医用画像ワーキンググループ発起人、救急科専門医、日本救急医学会AI研究活性化特別委員。 2017年にアイリス株式会社を創業。代表取締役。
「死ぬまで臨床医をやるつもりだった」と語る沖山先生でしたが、キャリアを重ねる中で医療資源の格差を痛感。自らそれを解消するべく、2017年に医療AIのスタートアップを起業しました。
医療AIの身近な実用例——アイリス「nodoca」
イントロダクションとして、アイリスが開発した医療機器の第1号である「nodoca」について語られました。専用カメラで撮影した患者さんの咽頭画像と問診情報等をもとに、インフルエンザ感染の有無をAIで判定する検査機器です。既存の抗原検査よりも高い点数で保険収載されています。
従来の検査よりも患者さんの負担が少ないnodocaですが、この元となる咽頭画像データベースの価値はそれだけではないと沖山先生は主張します。喉の粘膜から得られるデータをもとに、様々な病気の傾向やリスクの判断も可能になる未来が待っているからです。
「医学的には、喉からわかる病気は300ぐらいあると言われています。将来的には1枚の写真を撮影してボタン押すだけで、300の病気の陰性、陽性、今は大丈夫だけどハイリスクな陰性みたいにスクリーニングできたら、ものすごく便利ですよね」
現在nodocaは保険適用になっており、1000以上のクリニックに配備されています。一般的な患者さんにとって、最も身近なAIの医療活用事例と言えるでしょう。
臨床以外にも波及する生成AIの医療活用
続いての話題は、現在急速に注目を集める生成AIの医療活用について。
アイリスの「Perceptual CycleGAN」は、ピンボケや手ブレなどで綺麗に撮れていない咽頭画像の生成AIによる鮮明化を、世界で初めて実用化しました。同様の高画質化技術を搭載したCTやMRIも、すでに国内では商用化されています。
他にも生成AIでは、テキストtoテキストやピクチャーtoイメージのようなモダリティの変換が行えます。
アイリスの「Sketch2Medl」も、100万枚を超える咽頭画像の学習により、手描きのスケッチから架空の咽頭画像を生成することを可能としました。こうした生成AIの用途は臨床の現場に限らないと、沖山先生は期待を寄せます。
「こういう技術は医学教育でよく用いられています。例えば頭部のMRI写真でも、何百万人に1人しかいないような稀な脳腫瘍ってあるんですよね。そうした稀少な症例の写真は数枚しかないので、読影の習熟度が進まない。けれども生成AIで別の部位に同じような病気の腫瘍がある画像を生成するといったように、AI用の学習データではなく、人間の医師の学習データを作る分野にも応用されています」
セミナーはまだまだ続きましたが、本レポートはここまでとなります。
沖山先生の話題は「医療におけるICT/AI化の課題」「医療分野でも最先端を走るAI・Med-Gemini」「生成AIの医療機器化に求められる法整備」と多岐にわたり、その知見と先見性は参加者にとっても大きな刺激となったようでした。
“医療人2030”育成プロジェクトにぜひご参加ください!
「“医療人2030”育成プロジェクト」では、魅力的なゲストを招いたセミナーを今後も開催していきます。2024年度は全12回+αを予定しているので、興味を持たれたらぜひ以下よりWEBサイトにアクセスしてください!
未来の医療を創る‘医療人2030’育成プロジェクト
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