【Event】マツダ株式会社:尽きぬロータリーの灯火と独自技術の継承
2024年4月12日から14日の間、千葉県千葉市にある展示場「幕張メッセ」にて、AUTOMOBILE COUNCIL 実行委員会主催のイベント「AUTOMOBILE COUNCIL2024」が開催された。
今回の記事ではそこに出展している企業のうち、マツダ株式会社のブースについて特集する。
ICONIC SPの華麗な衝撃
近年自動車の中でトレンド化を果たしつつある電気自動車。
インフラ網の構築も遅々としてではあるが進んでおり、自動車の中で一定の立ち位置を確保しようとしている。
先日には電動化されたフォーミュラカーを使用したモータースポーツである「フォーミュラE」が東京で開催された事もその後押しとなっている。
環境に優しいクルマという触れ込みは、着実に電気自動車へ市民権を与える動きへと繋がっている。
一方で電気自動車自体が普及に対し向かい風となっている地域も存在する。
インフラの維持管理で言えばノウハウが積み重なっているのは、内燃機関搭載車の方が圧倒的に長い。
そのうえ電気自動車よりも短い補給時間や燃料の調達・輸送の容易さといった種々の要素は、未だに大きなアドバンテージである。
そして何よりエンジンの奏でる音自体が好みであるという愛好家も多い。
そんな中で2023年に開催されたジャパンモビリティショーで登場したのが、本イベントでも見ることの出来る「MAZDA ICONIC SP」である。
同車両は他車には無い内燃機関であるロータリーエンジンを搭載し、次世代バイオ燃料を用いる事で環境に対し低負荷を実現した、走りの楽しさを追求するスポーツカーとして設計されたコンセプトモデルである。
スワンウィングドアやリトラクタブルヘッドライト搭載というギミックもそうだが、車体の外見は流線型を主軸とした造形となっている事も大きな特徴である。
こういったスポーツカー然とした造形の車両を出すのは流石のMAZDAという声も多い中で、現場では相当な産みの苦しみがあったのだと担当者は語っている。
消えかけたロータリースポーツ車の火とそれを絶やさぬ気概
昨今の自動車のニーズは、これまでとは大きく変わりつつある。
自動車が娯楽として楽しまれていた時代から、ワゴンタイプやミニバンといったファミリーカーを経て「合理的な」車両が売れ筋へと流れている。
そのため現在はクーペやセダンといった車両についてはあまり人気が無く、ワンボックスカーやミニバン以上にSUV車が消費者に好まれやすい情勢だ。
また搭載されている動力機関についてもハイブリッド車、プラグインハイブリッド車と進み現在では電気自動車までが市場に進出を果たしている。
純粋なエンジン搭載車はもとより、電気自動車の市場拡大によりエンジン搭載車そのものの存続が難しくなる情勢もなきにしもあらずというところである。
そしてMAZDAはRX-8生産以降、大きな転換点に立たされていたのだという。
RX-8はロータリーエンジン搭載のスポーツカーとして、乗り心地や使い勝手も併せて良質な物に仕上がった。
しかし2000年代前半の当時、ミニバンや軽自動車といったより手軽な車両が市場で優勢となっていた他、その頃既にエンジンとバッテリーを組み合わせたハイブリッド車が市場に出ている状況だ。
トヨタ自動車株式会社のプリウスは1997年に販売を開始しているが、その後の自動車の系譜に与えた衝撃は大きなものであった。
自動車に乗るという事の意味が大きく変わりつつある当時の世相の中で、走りを楽しむというユーザーの在り方もまた変革を余儀なくされる時代であったと言えるだろう。
そんな中でマツダ株式会社は現在の売れ筋であるCXシリーズ、特にSUVタイプのCX-30やCX-60といったモデルを展開。
身も蓋も無い言い方をしてしまうならば、昨今の同業他社の様にユーザーのニーズだけに合わせたクルマづくりという物に軸足を置いてしまったかの様に見えてしまったのは否めない情勢であった。
だがそれはいわゆる「売るためのクルマの戦略」であり、マツダ株式会社としてのエスプリを密かに集めては注ぎ、新しい車両を実現する為の知見へと昇華していたのである。
ICONIC SPはRX-8以降採算性を理由に途絶えかけた「ロータリーエンジンのスポーツカー」というマツダ株式会社ならではのブランド力を引っ提げて登場している。
搭載されているロータリーエンジンについては、「RE レンジエクステンダー」として復活したロータリーエンジンの様に連綿と受け継がれた技術が利用されている。
それでいてエクステリアのデザインはかつてのマツダの車両のそれぞれの要素を上手いこと折衷した様な設計となっており、これも昨今溢れる「直線的デザインのスポーツカー」とは一線を画するものだ。
先述した搭載燃料についても次世代バイオ燃料を基幹として環境に対する負荷を極力抑える体制の構築に向け、研究を重ねている。
その上ロータリーエンジンは多くの燃料に柔軟に対応する事が可能な設計となっているため、今後環境負荷に配慮した燃料が市場に出てきた際にも即戦力として動ける状態に持っていけるのは大きな強みとなっている。
「最終的な目的地としてCO2負荷を無くすという要素があるならば、採れる手段は他にもあるはずという思いで研究を重ねた」とは担当者の弁である。
売れるための自動車を作るならばマツダ株式会社には可能であるが、それ一辺倒に染まってしまえばそれは「マツダらしさ」を失う事になる。
かつてフォードの傘下に入った際にもマツダというブランドが生き残れたのは、ひとえにフォードがその特色をリスペクトし活かそうとする程にマツダらしさという物が評価されていた事に他ならない。
そしてそれこそが、広島県に根付く押しも押されもせぬ不死鳥の様な企業であるマツダ株式会社の誇る大きな文化と呼んでも過言ではないだろう。
MAZDA ICONIC SPは現代の自動車が忘れかけてしまった「走る悦び」を今一度再定義させてくれるのかもしれない。
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