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【Event】Virtual Sky Service 旅客向け新システム「FDMi v2β」お披露目

 2023年12月26日、VRSNSであるVRChat上にて航空業界を始めとした有志が集う団体である「Virtual Sky Service」が新システム導入の公開とそのテストを兼ねたイベントを関係者向けに開催した。
本記事ではそのイベントの様子と実際に体験した様子を記載していく。


プロフェッショナルの搭乗手続き

 今回のお披露目イベントは、1月3日、6日、7日に実施される「初日の出フライト2024」に関わる要素をテストする為に行われたものである。
これまでの航空機をはじめとした乗り物につきまとう諸条件をクリアした画期的な物という事で、当日は多くの関係者がロビーへ詰めかける事となった。


搭乗時に説明を受けた中で画期的であったのは「コライダー検知ゲートシステム」とでも呼ぶべきギミックだ。
飛行機内に搭載されているシステムは、アバターに導入されている当たり判定(コライダー)と相性が悪い。飛行中のトラブルを回避する目的で、事前にアバターにコライダーが入っているかを確認・検知する金属探知機の様なゲートが搭乗口に設置されている。
これに引っかかるとブザー音が鳴り、アバターの切り替えを促されるという物である。
搭乗前に引っかかったユーザーも居たようで、アバターチェンジを行う案内も含めしっかりとしたフォロー体制が取られていた。


 今回は多くの旅客が経験するのと同様に、ターミナルから伸びる通路を直接機体出口付近に寄せる形式での乗降となった。
準備完了の合図と共に飛行機に乗り込んでいくが、ここで一つ追加要素の説明が行われた。
離陸前にも見て確認する事が出来るのだが、この通路部分はターミナルに接続している。
構造上機体の出入り口の近くに微調整する事も可能な代物だが、今回のイベントでもVSSは手を抜くことが無い。
つまるところ、この通路の位置調整は全て手動で行われているという事である。


夜間飛行とパーティーのすゝめ

 今回搭乗する航空機MC-10を用いた夜間飛行において、これまでとは違うシステムが搭載された機材が用意された。
それに関する説明を受けた後に、参加者は着席し離陸を経て機体は上空へと舞い上がる。
離陸後3分の後に、キャビン・アテンダントからアナウンスが行われた。
それは「座席を離れて自由に行動して良い」というものであった。

 今回搭載された「FDMi v2β」はこれまでの乗り物に付きまとう2つの大きな問題を解決するソリューションとなっている。
一つは「乗り物搭乗時に移動する事が可能となる」という点だ。
これは動く乗り物にSit判定を持ったオブジェクトが接続しており、そこに座った状態でオブジェクト移動中にSit状態を解除するとその場に取り残されてしまうという仕様を解消するものである。
不意な移動操作により航空機などの乗り物では真っ逆さまに落ちてしまい合流が困難となる他、自動車や電車・船舶といった陸上・海上を高速で移動する乗り物でもこの操作ミスにより多くのユーザーがこれまで辛酸を舐めてきた。

 もう一つ重要なのは「搭乗時にアバターのポリゴン含め、髪などの揺れ物が流されなくなる」という特性だ。
移動する乗り物に乗っていると髪やアクセサリのようなものは、進行方向反対側に強く引っ張られる様に流れていく。
更にVRChatの仕様として、ワールドの中心点である原点から離れれば離れる程、その見た目が崩れていってしまうという点が挙げられる。
この両方の問題を一挙に解決する事が出来るのもこのシステムの大きな特徴だ。

 飛行中にアナウンスがあった後から着陸前の着席アナウンスまでは自由に機体内を動いても良く、特別にコクピットの見学ツアーも開催された。
なんとコクピット内に搭載されている水平器は常に機体の傾きに合わせて現実の機器同様動く仕組みとなっており、更には各種スイッチで機体の制御を実際に行っているという現実同様のインターフェイスの再現具合である。
実際に第三者が触れてしまった場合は機体の制御に重大な影響が出るという点も含めてそのままであるので、動き回れるにしてもコクピットへの入室は案内が無い限り行わない事を推奨する。

 そしてこういった機体内で自由に動き回れるというシステムは、大きな可能性を持っている。
機体内にどれだけのオブジェクトが搭載できるかは未知数ではあるが、機内を自由に歩き回り交流可能な状態でコミュニケーションに主眼を置くパーティを開催したり、あるいは今回予定されている初日の出フライトの様な景観を鑑賞する為の飛行プログラムを組み込んだツアーなどを計画しても良いだろう。
これまで「乗るしか無かった」飛行機での旅が、ファーストクラスどころかエアフォース・ワン並の歓待を可能とする「乗って楽しむ」物へと変化する可能性は十二分にあるのだ。


 かくして今回のフライトは無事に終わり、乗客は着陸後に再接続された通路から空港の到着ロビーへと移動する事となった。
なおこういった設備の稼働に関して、一部をアニメーション制御で実施していた事もあったとの事だが「手動で動かした方が効率よく動かせるし、やりやすい」という現場からの要望を汲んで全ての要素が全手動となったとの事である。
まさしくプロの仕事を見せつけてくれるVirtual Sky Serviceの「初日の出フライト2024」は、2024年1月3日、6日、7日の3日に渡って開催され、1月3日は21時の便のみ、6日と7日には21時と23時の2便制で運行される事となる。
年始から良いフライトで良い一年を迎える事をお勧めしたい。

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