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【Event】Virtual Sky Service 本格派を追求する航空系イベントの極致
2023年12月10日、VRSNSであるVRChatにて有志の団体である「Virtual Sky Service(以降、VSSと表記)」が『社会科見学・遊覧飛行』を開催した。
今回の記事では、イベントの様子を駆け足で記載していく。
航空機の運行を司る管制塔
ワールド入室後、スタート地点となる受付カウンターの前にユーザー達が集められた。
ビジュアルとしては我々がよく知る手荷物預かりカウンターの様なスペースである。
そこで負荷の少ないアバターを選択する事も出来、そちらでアバターを着替えたらロビースペースへと移動する事になる。
なおロビーも含め、きちんとワールド内にある小物のクオリティは高い。
その質の高さは「空港でよく使う椅子とかよく見る看板がそのままある」という程である。
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最初に案内されたのは、空港における飛行機その他の運行を司る重要施設の一つ、管制塔だ。
よくあるイメージとして、管制官が飛行機の運行を一手に引き受けているイメージがあるだろうが厳密にはそうではない。
管制官はそれぞれ地上管制官と飛行場管制官という職務で区分されている。
地上管制官は滑走路を除く地上のエリアの航空機や車両の運行などを担当しており、空港制限区域内を走って旅客を移送するバスやタラップ車といった物も管制の対象となる。
飛行場管制管は旅客機の離着陸など、滑走路を含む先のエリアや行程の管制を担当している。
この体制により、複雑な飛行機の誘導や地上にある種々の機材の制御を行う事が出来るのだ。
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今回のイベントでは、実際にグラウンド(地上管制官)とタワー(飛行場管制官)が実際に地上で小型機を誘導、離陸させまた着陸態勢の小型機を着陸案内し、滑走路から駐機場まで誘導を行うという流れを見せてもらう事が出来た。
このワールドのシステムにもこだわりがあり、グラウンドの音声とタワーの音声はそれぞれチャンネルが設定されており、指定されたチャンネルから発された音声を遠隔地で無線通信の様に受け取る仕組みとなっている。
その為実際の航空管制業務さながらの指示を出して、機材を操作する事が出来る。
そして、今回の誘導に基づいた離着陸に関わる全ての操縦は「手動で」行われているという手の凝りようだ。
プロの仕事を学ぶ地上散策
次に紹介されたのは、到着した大型の航空機やその前にトーイングカー等の機材が並ぶターミナル付近のエリアだ。
このワールドにおける設備面の設定もしっかりとしており、実際に大型の航空機が旅客輸送などを行う為に出発するには、トーイングカーによるプッシュバックが必要となる。
何と航空機の前輪ギアとトーイングカーと接続する為のパーツも別に有り、そこにトーイングカーと航空機を「手動」で接続するという作業を行い、その上で航空機のブレーキングをパイロットが解除し、出発できるモードにする必要があるという拘りようだ。
その操作も当然ながら全て手動である。
トーイングカー側も航空機側も微調整が必要なこの作業を難なくやりとげ、参加者は旅客輸送バスにそれぞれ乗り込み次の目的地へと誘導された。
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次の目的地は滑走路付近であり、通常であればどうやっても立ち入りが制限されるエリアである。
そこから離陸する飛行機を超至近距離で眺める事が出来、仮想空間ならではの豪快な爆音と臨場感に皆が興奮を覚えていた。
バスによる移動はまだ続き、空港エリア後方の滑走路の誘導灯辺りで降車する事となった。
降車地点から少し先が機体の着陸予定位置となっている事もあり、想像よりも大きめの誘導灯とダイナミックな着陸を見せる航空機にまたも参加者は大興奮。
普段は見れない位置からこういった物を見るという、ある種贅沢な体験学習の場となった。
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なお先程から何度も述べているが、移動用のバスやタラップ車、トーイングカーにバスから航空機の操作も全てリアルタイムの手動操縦で行っている。
その上この日のワールド内の参加人数は少なく見積もっても30~40名前後という人数である。
操作する側に掛かる負荷の影響によるラグなども考えれば、相当精緻かつ熟達した技術が求められる。
勿論コントロールする為のインターフェイスは各機材ごとに異なっている上に、機材の「癖」も出てくる。
更には現実世界と違い、その手応えや反応具合というものも体感で反映されるものではない。
そういった中で精密な機材を運行しているイベントスタッフの力量の凄さを、改めて思い知らされたイベントであった。
多数のプロによる仮想現実の構築
最後に地上での機材紹介と、希望する参加者には遊覧飛行への招待が行われた。
参加者の一人は飛行機に相当不慣れかつ苦手という状況でありながら、遊覧飛行をなんとか乗り切るというイベントとの相性が大丈夫なのか問われる一幕も存在した。
実際に航空機のシートに座り窓から見た外の様子、適宜行われるキャビン・アテンダントや機長のアナウンス、甲高いエンジン音やリアルタイムで稼働する翼のフラップなど様々な要素が「現実の飛行機に乗って旅行する様子」さながらであった。
VRChat上にてこれだけ濃密な体験が出来る環境はそう多くなく、その上で運行体制に関しても徹底したリアリティを敷いている集団は皆無といっていい。
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ぜひ皆様もVirtual Sky Serviceが提供する空の旅に参加してみてはいかがだろうか。
同団体は毎週木曜日21時から定期イベントを開催している為、興味があれば声を掛けてみるのも良いだろう。