裁判所の法廷に立ったよという話
大学を中退して最初に勤務した証券会社。上場はしていたのですが母体は先物会社。証券会社と思って入った会社ですが、簡単に入れたと思ったら先物取引の営業としてでした。
大学を中退してしまった以上、辞めるわけにもいかず3年はやろうと決心して入った会社でした。
仕事はきつかったですが、営業は得意だったのかあれよあれよと3年で入社当時の2倍の年収を貰うようになっていました。今より多い・・・。
それはそうと稼いではいたのですが、何せ仕事はきつく、色々あり3年で退社しました。もう2度と会社勤めはしたくないと思い退職金と持株の売却とでニート生活を送っていたある日、退職した会社から一本の電話が。
恐る恐る出てみるとなんと裁判所に出廷して欲しいとのこと。
こちらは???だらけです。
何も悪いことしてないし、なんせこちらはニート。勤労の義務は怠っていますが、家でお酒飲みながらTSUTAYAで借りた24(ジャックバウワーのやつ。当時メチャクチャ流行っていた)を24時間で全部見てやろうと意気込んでいたぐらいです。
落ち着いてよくよく話を聞くと、私が入り口としてお客様になっていただい方が大損をして会社を訴えたとのこと。裁判だと最初にしっかりリスクなどを説明していたがどうがが争点の一つになるという説明でした。なので最初にアプローチしたわたしに白羽が立ったようです。
弁護士から連絡があるから対応してほいと。手当もでるからとこちらを揺さぶってきます。
裁判なんてドラマでしかみたことないですし、刑事と民事の違いも当時は分かりませんでした。
不安しかありません。何か変なことに巻き込まれないのか?何なら罪になるのか?など良からぬことを考えてしまいました。
そこで私なりに色々調べました。
民事訴訟の仕組み。
証人の役割。
人生で法律のことに興味をもった瞬間でした。
実際のところリスク説明をしなかったお客さんはいなかったですし、先物には付き物の追証拠金の話は当然しています。なので元本保証をしたことなどは絶対あり得ないので、自信を持って良いのですが、それでも初めての経験ですし、ドラマによく出てくるあの法廷に自分が出ると思うと不安しかありませんでした。
そして弁護士事務所に初めて行きました。緊張しまくりでしたが、まとめると裁判というのは半分出来レースですということです。弁護士さんからのヒアリングのあと、事前に法廷で聞かれる質問を伝えられ、端的に余計な事を言わないように釘さされました。後はスーツを着てくれと。
証人の身なりが大事なのか?と思いましたが、まあそんなもんなのだろうなと。
そして迎えた当日。
東京地方裁判所。
当時の上司などと呼ばれていたようで裁判所で顔をあわせました。俗に言う集中証拠調べにあたる日なのか、証人尋問は連続でするようでした。
証人同士で話して良いのか?その場にいて良いのか?など色々疑問はありましたが、知っている人がいるのは心強かったのを覚えています。
法廷の証言台に立ちとにかく私の出番になりました。
そしてテレビでも有名なあのセリフを言いました。
「宣誓
良心に従って真実を述べ、何事も隠さず、偽りを述べない事を誓います。
ハロ吉」
本当に言うのだなというのが実感です。勝手にドラマのワンシーンの気分でした。とは言っても現実は淡々と進むだけで、弁護士からの想定問答に打ち合わせとおり答えていまきます。味方の弁護士との想定問答が終わったあとの相手方の弁護士の質問になります。
相手側弁護士からの質問は想定できません。そこはアドリブで答えるしかありません。弁護士からは思ったとおり真実を話して良いよと言われていましたので、聞かれたことに素直に答えました。
特にいじわるな質問があったわけではなかったですが、最後に「あなたは〇〇さん(原告)がこんなに損すると思っていましたか?」と聞かれた時は、だいぶ心揺さぶられ、申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。
たしか何億と損したと聞いていましたので、悪いことはしてないつもりでも、罪悪感が込みあげてきました。
とこんな感じで私の裁判所出廷は無事終わりました。
もう15年以上前の話になるので、鮮明に覚えていませんが後味が悪かったことははっきりと覚えています。
その後会社から連絡があるわけでもなく、勝ったのか負けてのか、和解だったのかも分かりません。
一つ言えることはこの経験がキッカケで法律関係の資格に興味を持ち、結果行政書士廃業にいたるわけです。
そして会社の利益だけのために動いても誰の特にもならないことはハッキリと分かりました。
このお客様と契約できた時はそこそこ高額でしたので歩合も沢山ももらいました。もちろんお金のために働いているわけですから、嬉しかったのも事実です。でもその結果お客様は裁判を起こすしかない所まで追い込んでしまった一人でもあるわけです。
やっぱり商売は売る方と買う方の双方が得しないとダメです。長続きしません。現に今先物の営業なんてほとんどないのではないでしょうか?
もちろん先物取引は社会的に必要な取引ですので、今もありますしネットでやっている人も沢山いると思います。
でもわざわざ電話をかけてお客様を集める商売にまともなものはありません。黙っていたら誰もこないからわざわざ電話をかけてまで営業するわけです。
訪問販売や電話セールス。それをやっている人が悪人ではないと思いますが、その商売をやっている会社は・・・という感じです。
皆さんだけでなく家族なども標的になることがありますので注意してください。
ちなみに簡単に説明すると証券会社の儲けの柱は手数料です。売ったり買ったりしたときに発生する手数料で食ってるわけです。
なのでお客様には儲けてもらうより売買を沢山してもらうのが重要になります。
お客様が入金したお金をすべて手数料に変えれるディーラーが会社から評価をされます。
ただ相場を外して損させてしまったらお客様はすぐにいなくなってしまうので、相場を勉強して利益を出してもらいながら、長く取引をして売買を沢山してもらいたいわけです。
そのためにはドンドン入金してもらいいっぱい売買をしてもらうのが正解で預かったお金を全て手数料に変えれるディーラーは神扱いされます。
この訴えられた裁判もすべて手数料に変えられてしまったのだと思います。もちろん勝手に売買などは流石に上司もしていなかったと思いますが、目的はお客様の利益でなく会社の利益なのは間違いありません。
皆さんも営業マンの口車に乗ってはダメですよ。
私が証券会社を辞めたのはこの仕組みに気づいたからです。営業マンの時は気づかず、係をもって手数料を稼がなきゃいけない立場になって初めて気づきました。だから退職したというのが真実です。
と長文になってしまいましたが、裁判所の法廷に立ったよというお話しでした。