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球磨川くだりは”清流復興コース”として運航再開します

球磨川くだり株式会社は名前の通り日本三大急流球磨川での川下り事業を生業とする会社。令和2年7月豪雨で船が流され、発船場は壊滅的な被害を受けたことはこれまでnoteで何度も記してきた。とても困難な道のりでしたが国や県をはじめ多くの関係者の皆様からのご支援を頂き着実に復興を進めている。

復興第一弾として豪雨災害から1年後の令和3年7月4日に人吉発船場を観光複合施設HASSENBAとしてリニューアルオープン。本日無事に1周年を迎え、ありがたいことに人吉球磨の復興のシンボル・新しいランドマークとして多くのお客様にご利用を頂いている。先日、現地でお客様の様子を見ていると観光客や友人、休憩を兼ねてPCで仕事をする方、試験期間中で勉強をする高校生のグループ、視察らしき方々など多種多様なお客様を目にすることが出来た。HASSENBAの根幹にあるコンセプト”地域の拠点となることを目指す”が実現できている手応えを感じ素直に嬉しい。

梅雨明けの夏空と川のブルーが美しいHASSENBA周辺の景観

川の地形が劇的に変化

被災以降、多くの方々から期待を寄せられていた川下りの再開だが、その道のりは多くの困難が立ち塞がった。令和2年豪雨では多くの被害だけでなく、球磨川の地形が劇的に変化。HASSENBA前の水域は平均30cm以上、場所によっては1mも浅くなり、これまで無かった泥や石が堆積。航路のメインスポットである筏口の瀬は全く別の景色に。水圧の凄まじさ、自然のパワーを見せつけられ人間の無力さを痛感することになった。

水害前の美しい球磨川・筏口の瀬付近
変わり果てた水害後の同じく筏口の瀬付近

航路掘削の努力が一度は水の泡に

実は昨年夏も再開に向けて準備が進んでいた。4月に国土交通省による治水関連工事に併せて航路確保の為の河床掘削工事を実施して頂いたが、5月下旬に大雨が降りかなりの増水。せっかく確保した航路が再び埋まってしまった。球磨川は漁協との取り決めであゆ漁解禁の6月1日から秋までは重機を入れての工事をすることが出来ない。何故なら鮎は水の濁りをとても嫌い、濁りが出ると一気に不漁になる可能性が高くなるとのこと。唯一可能なのが川堀(手作業での浚渫作業)となり対応策は限られている。それでもなんとか航路が確保できないかと梅雨の増水が落ち着き始めた令和3年7月22日に船頭及び球磨川ラフティング協会の有志と川堀を試みたが、人力では限界があり懸命の作業も虚しく川下りの再開は延期となった。

流れが早く危険を伴う川堀作業
大量の土砂や石が堆積した掘削工事前の中河原付近

代替案で球磨川遊覧船「梅花の渡し」の運航

ビジネスは常に最悪を想定するのが鉄則だと私は考える。航路浚渫を行なっても埋まる可能性があり、川下りができない場合の代替案を準備する必要があると考えていた。それがHASSENBA〜人吉城址間の水面をのんびり巡る球磨川遊覧船「梅花の渡し」だった。

梅花の渡し
江戸時代、人吉城と城下町を結ぶ橋は1本しかなかったと言われています。そのため、対岸と往来をするには川舟が用いられ、川沿いには多くの舟渡場があったと言われています。渡船は城内と商人町、侍町との交通手段でありましたが、梅花の渡は五日町裏の渡し場のことです。球磨川くだりの梅花の渡しでは人吉城址の石垣を間近で眺めることができ、春は桜、初夏の新緑、秋は紅葉が見どころとなり、まさに人吉の四季を感じることができる風情ある遊覧体験です。

球磨川くだりHPより

このような代替案を準備していたことで、上記のようにマイナス印象を極力抑えるようなプレスリリースの発信が可能に。そしてこの梅花の渡しの運航には船頭の技術力の低下、操船の勘が鈍ることの防止の意図もあった。どんなベテランでも1年、2年と間隔が開くことで勘が鈍ることは間違いなく、船を漕ぐことでしか技術と必要な筋力を維持することは不可能。実際に1年のブランクの後は先導歴20年のベテランでさえ舵や艪がとても重く感じたようで、感覚がフワフワすると話していた。スポーツ選手が大怪我からの復帰後になかなか調子が上がらないのと同じようなことだと同様ではないか。だからこそ、梅花の渡しの運航が必須だったのである。

満を持しての川下り再開

当社は社名の通り川下り船を運航する河川旅客運送業。カフェや物販、サイクリングなど多角化を図ったとはいえメイン事業は川下り事業であることは間違いなく、令和4年度中に再開できなければ財務面そして社員のモチベーションの面でも厳しいと感じていた。だからこそ、今回は国土交通省・球磨川漁協へ早めに相談を行うこととした。

令和4年5月の航路掘削工事の様子

今回は航路を大雨でも崩れにくい場所かつあゆ漁の邪魔にならない場所をしっかりと調査を行い掘削工事を行なった。これで被災後初めて試験運航の実施が可能になって6月末から試験運航をスタート。最初は2年ぶりということもありベテラン船頭たちもかなりの緊張感が漂う中、航路の調査、国・漁協との協議を先頭に立って頑張ってくれた船頭歴22年の運航課長藤山がリーダーシップをとって先陣を切ってくれた。トップ画像の後ろ姿の船頭が藤山であり、その背中には責任感が伝わって来る。

試験運航はまだ継続中だか、今のところ問題なく運航再開の発表に至ることが出来た。

清流復興コースとしての運航再開

今回、これまでの清流コースではなく、”清流復興コース”として運航再開する。水深などの安全が確保された人吉発船場(HASSENBA)〜相良町着船場(くまりば)での部分再開となる。相良町〜温泉町は西瀬橋の架け替え工事や未掘削の部分もあり来季へのお預け。これまでの航路の全長が4.5kmから2.5kmへ短縮となる分、水害当時の話やスタート時に人吉城址周辺を周遊するなど新たな付加価値を付け加えて運行する予定となっている。

清流復興コースの航路図

今、人吉の復興を牽引し関係人口・交流人口の拠点であるHASSENBAくまりばが発着点となることはある意味意義深く感じる。川下りは余程のことがなければ7月22日(金)より再開。この2つの復興のシンボルを拠点に多くの人々が人吉という街を体験して頂き、多くの関係人口の創出に繋がることを期待したい。

くまりばに入居するIT企業に勤める稲橋氏より提供頂いた試験運航の写真
球磨川くだりの風情を感じる素晴らしい写真
早くお客様を乗せて運航したい


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熊本県をフィールドに観光と公共交通を軸とした水辺のまちづくりに取り組んでいます。また、補助金なしで公共交通立ち上げや債務超過の三セク再建な…

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