九州ドリームステーションに参画。産学官連携で三角駅・三角東港の活性化へチャレンジ
2022年11月30日。九州旅客鉄道株式会社(以下JR九州)本社にて開かれた九州ドリームステーション「にぎわいパートナー発表式」に出席した。JR九州と共に利用者が減少するローカル線・駅を中心として周辺地域ににぎわいづくりを仕掛けようと試みる本プロジェクト。今回の第一弾で認定パートナー4社の一つとして当社も選んで頂いた。
JR九州ドリームステーションとは
九州ドリームステーションとは一体どんな取り組みだろうか。2021年9月13日のプレス資料には下記のように説明が書かれている。
少し抽象的な表現なので具体的に説明すると、九州ドリームステーションの取り組みは駅を中心とした周辺地域の活性化を図ること。その結果、鉄道の利用者数の増加に繋げていくということを目指している。これまで、JRグループ各社は新幹線や都市部路線の収入及び駅ビルなどの不動産事業の収益で赤字ローカル線の維持を行ってきた。しかし、コロナ禍になり大きく売り上げが減少したことで、これまで以上に赤字路線の維持が難しくなってきたことが本プロジェクトの背景にある。今年JR九州が公表した輸送密度(1日あたりの平均通過人員)が2000人未満となる13路線18線区の収支状況をみるとなかなか厳しい状況なのは容易に理解できる。
今回にぎわいパートナーが取り組む駅は当然ながら長崎本線長与駅を除く3駅が赤字線区の駅である。だからこその九州ドリームステーションのプロジェクトは赤字ローカル線の維持に繋げる最後の切り札と言っても過言で無いのではなかろうか。昨年の発表以降、JR九州の担当者の方々と打ち合わせをしながら感じたのが現地民間企業との連携へのこだわり。行政ではなく民間との連携を選ぶ理由として「継続性」と「スピード」を重視していることが強く伝わってきた。駅は地域の中心であり、駅及び駅周辺が賑やかになればば自ずと地域は元気になる。JR九州とパートナー企業が協働し、地域の様々な方々を巻き込んでローカルの活性化を仕掛けていくのが本プロジェクトの理念だと考える。だからこそプレスに「念い(おもい)」というキーワードが使われていたのだろう。
にぎわいパートナーに手を挙げた理由
シンプルにJR三角線及び三角駅は定期航路「天草宝島ライン」にとって一心同体の関係性だから。2009年に接続運航を開始して13年目であり、三角線の乗客数は当航路の乗船客数に直結することからも密接な相関関係と言える。今回の募集は基本的に公募制であるが、JR九州も当社も三角駅に関しては”シークルーズ”が取り組むのが当然だとの「念い(おもい)」があった。
ここで天草宝島ラインの歴史を紹介。
2009年4月1日から天草市本渡港〜上天草市松島(前島)港〜宇城市三角港を結び、三角駅でJR三角線と接続運航開始。当時本渡港と熊本港を結んでいた熊本フェリーの高速船「マリンビュー」が経営難のため同年3月31日をもって休止(実質的に廃止)になったことから代替航路的な意味合いもあった。当航路は過疎地の航路としては全国に誇れる存在だと自負している。就航を決意して運航開始までわずか3ヶ月の驚異的なスピードで参入し、13年経った今も未だに運航補助金なし、要は行政に頼らず完全に自主採算で運航されている航路なのだ。そのような鉄路×海路で天草を活性化したいと意気込む私の想いに応えて頂いたのが唐池恒二社長(現相談役)であり、社員の皆様だ。就航直後から様々な側面支援を実施して頂いており、例えば「新幹線+三角線+船」が1枚の切符になり、九州各地のみどりの窓口で販売可能にして頂いた。今流行りのMaaSを10年以上前から取り組んでいたのである。また、九州新幹線全線開業に合わせて特急「A列車で行こう」を投入して頂き、さらには当社の船のリニューアルまでご支援頂いた。水戸岡鋭治先生がデザインを同じコンセプトで手がけたA列車で行こうと当社のマリソル号やセレナ号はまさに兄弟ブランド。その他にも書き尽くせないほどの密接な関係を築いてきた。因みにJR九州古宮社長はA列車で行こう運行開始当時の営業部長でその頃からのお付き合い。このようなこともあり今回の参画に繋がっていったのだ。
そして、何より過疎化が進み地域経済が急激に衰退している鉄道と船の結節点「三角地域」の活性化がJR三角線、当航路双方にとって不可欠なことからも九州ドリームステーションによるにぎわいづくりに取り組むべきなのである。これまでも再三noteで触れてきたが九州新幹線全線開業以降、JR熊本駅や前島港は飛躍的に開発が進み賑わいを見せているが三角駅・三角港に関しては民間企業による投資が行われず、活力がなくなる一方。今回、三角駅だけでなく三角東港を含めたエリアマネジメントまで計画する理由はそこにある。
三角東港や松島(前島)港、本渡港の変遷についての詳細は下記の記事を参照頂きたい。
三角駅・東港エリアマネジメント事業について
先ほど挙げたとおり、今回当社が取り組むのは三角駅だけではなく三角東港を中心とした三角港地域全体の活性化及び経済波及効果を目指すプロジェクト。三角駅に関してはJR九州、三角東港に関しては管理者である熊本県との公民連携も進めていく。また、2016年の三角東港リニューアルの際に設計・デザインを監修した熊本大学景観デザイン研究室の星野准教授にもご協力を頂けることとなった。また、地域住民の方々、特に若手経営者との連携も積極的に図っていく方針でTobaseLaboなど既に三角地域で頑張っているメンバーとのコラボも進めていく。
第1期として三角東港を活用したマルシェなどのイベント開催や大学との連携でアート系の仕掛けも行い、現在通過点となっている三角東港の知名度向上と目的地化を目指すことを実施していく予定。
尚、本事業は事業開発の基本であるスモールスタートで開始し、補助金に頼らない自立した経営を行う。そのために当社のアドバイザーを務めて頂いているまちづくり専門家として有名な(一社)エリア・イノベーション・アライアンス代表理事の木下斉氏にも随時サポート頂くこととなった。事業計画としては4期に分けて行う予定。需要を見ながら堅実かつ着実に事業を成長させていくので是非ご期待頂きたいと思う。
この事業が疲弊している三角地域の再生に繋がる「念い(おもい)」を持ってしっかりと取り組んで行きたい。
ここから先は
水辺のまちづくり|観光・公共交通・三セク再生のリアル
熊本県をフィールドに観光と公共交通を軸とした水辺のまちづくりに取り組んでいます。また、補助金なしで公共交通立ち上げや債務超過の三セク再建な…
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?