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#2 バリキャリな私が副業決意までにもがいたこと


2023年の春、自動車会社勤務の身でありながら「車以外の仕事をしたい」と湧いてきた自分の気持ち。
この正直な思いを無視しない、何か行動してみようと決めた私がまずやったのは、異動希望先に他部署を書いて異動願を提出、という正攻法でした。

私の勤務先では毎年4月、年に一度の大きな人事イベントがあります。
自分の直属上司に、今の業務に対する満足感や適性を自分でどう思っているのか、今後のキャリアをどう考えているのか、ライフイベント(結婚、出産、介護等)の予定有無などを専用シートに記入し面談で話すというものです。その専用シートは人事部まで、強制的に自動共有されます。私の記入内容を上司が良く思わないとしても上司にもみ消されることなく(もみ消すような上司はいないと信じていますが)、本人の思い・考えとして人事部まで確実に伝わる仕組みになっています。その申告内容の一つが、異動希望の有無です。
2023年4月、私は異動希望先として、車と無関係の事業を行っている他部署の名前を書き、提出しました。

私の勤務先の主要事業は車の開発・製造ですが、車以外のビジネスもたくさん行っています。その中の一つで、取り組み内容を聞いて「面白そう!」と思った先行投資分野の部署名を、異動希望先に書きました。
上司との面談では異動を希望する理由として
・現業務に習熟してきた実感がある
・このまま同じ業務を続けていても大きな伸びしろを感じられない
・自己成長のために新しい分野に挑戦したい
と伝えました。
また、実は5年前、私は今後のキャリアプランとして「5年後には車以外の分野にチャレンジしたい」と専用シートに記入していました。当時から、あと5年くらいで現業務に習熟し飽きが出るだろうと予見していたのです。上司には「5年前に『5年後』と書いていた通り、今、自分としては機は熟したと思っている」とも伝えました。
上司は私の思いを受け止めてくれつつ、今のグループ体制からうるかさんが抜けてしまうのは致命的な損失で確実に各種業務が継続困難となるため、今年1年以内に叶えるのは難しいと思う、と、実情と所感を率直に丁寧に説明してくれました。何か新しいことに挑戦したいという私の思いを叶えるため、今の業務担当を継続しつつ業務の幅を広げ、新しさを取り入れることができないかを一緒に考えましょう、とも言ってくれました。

まあ、これは想定内でした。というのも、異動願を出して本当に異動が叶うケースは非常に稀であると、自分調べでわかっていたからです。
社内人事による異動とは、異動元異動先の双方の事情やニーズが偶然マッチしたり、人材を成長させる修行目的で遂行されたり、会社トップ方針として力を入れたい分野に人を集結させなければならないなど、かなりダイナミックな流れの中で決まっていきます。一人を異動させるとその分業務に穴が空いてしまいますので、代替要員を同じ部署内で確保できるか問われ、できなければ他部署からの補充確保に上位は奔走することになります。場合によっては部内の人事構成を大幅に見直す可能性も出てきます。
つまり、従業員一個人が「あの部署に行きたい、面白そうだから!」と言ったところでなかなか叶うものではないと、百も承知で出したのでした。

とはいえ、この異動希望は「望み薄でも、とりあえず書いて提出しておく姿勢が大事である」というのも私調べの哲学であったりします。
異動希望を書いて叶うケースは稀であるものの、何かの拍子にチャンスがやって来てひょいと異動が叶うケースも、ごくごく稀に発生するのを今まで見てきました。記入した異動希望先ズバリその部署でなかったとしても、例えば類似分野の他部署と自部署との間で人材を交換留学させ合うような人事の話が急にまとまり、誰をアサインするか上位が議論する際に「うるかさんは新しい分野に挑戦したいと言っていたな」と思い出してもらえれば候補に挙がることができるかもしれません。

また、結果叶わなかったとしても、自分の素直な希望を上司に伝えるだけ伝える、やれることをやる態度は自分に対して常に心がけたい、自分に誠実な姿勢です。「どうせ叶わないし」とあきらめるのではなく、「こんなこと書いて非難されたらどうしよう」と怖がって書かないのではなく、何を思われようと打率が低くとも書き、堂々と希望として伝えるようにしています。あくまでただの「希望」なのだから、私の希望内容というのは誰かに否定されるようなものではないし、自分の希望を自分で認めてあげなくては自分自身がかわいそうです。
「いつか線になると信じて点を打ち続けるんだ」とはスティーブ・ジョブズの有名な言葉です。私にとっては異動希望を正直に書く行為も、点の一つだと思っています。自分のために打つ点。自分の未来のために打つ、小さな小さな、自力で打てる点。年に一度の人事イベントで打てる点を確実に打っておく。自分のために行動できることは全てやっておく。
この件に限らず、私がとても大事にしている姿勢です。

さて、異動願という正攻法をやるだけやった私が次に飛び込んだのは、新規事業立ち上げワーキングへの参画でした。
このワーキングは新規事業立ち上げの専用コンサルに入ってもらって会社として公式に実施されているもので、希望者は誰でも参加できる活動です。
参加当初は勤務時間外の扱いで活動しますが、新規事業案をエントリーし審査会を何度か勝ち進むと、自分の業務時間の一部を充てて活動OKと認められるようになります。更に審査会を勝ち進んで最終審査を通過した暁には、本当に会社の一事業として部門ができ、予算がつき、事業化できるという夢ある活動です。
このワーキングではまず、新規事業を立ち上げるまでのステップや全体像、新規事業アイデアの探し方、そのアイデアが本当にこの世にニーズがあるのかの検証方法等、新規事業に関する学習動画や講演会を無料で視聴することから始まります。そうやって新規事業立ち上げの基礎知識や心構えなどをインストールしつつ、開催されるワークショップを通じてワーキング参画者同士が交流したり、自分の新規事業案に賛同してくれるチームメンバーを募ったり、逆にチームメンバーとして参画したい新規事業案を探したりして数名から成るチームが結成され、最初の審査会までに市場ニーズ有無の検証を行います。
私も、とある新規事業案のオーナーに賛同し、チームメンバーとして活動、審査会に臨みました。が、書類審査は通過したものの第一次審査会で落選してしまいました。
この内容を本業で取り組めたら楽しいだろうなと思うテーマだっただけに、そして市場ニーズもあると確信できていただけに、落選は本当に本当に残念でした。上司にも「7月下旬の審査会に通過後、業務時間の一部を新規事業活動に充てさせて欲しい」と、審査を通過する前提での業務相談を7月時点で伝えてあったほど、通過できる手応えがあったのです。

新規事業の審査会に落選し、ここまでの試行錯誤を振り返ってみて、会社員の業務として車以外の仕事をするのは難しそうだと私の中で結論が出ました。
同時に試行錯誤してみたおかげで、今の業務をこのまま継続するメリットにも気付くことができました。
他部署への異動にしろ新規事業にしろ、新しいことへのチャレンジは楽しいでしょうが、反面新たな知見獲得のために大量のパワー投入は不可欠ですし、新たな人間関係構築に伴うストレスもあるでしょう。また、会社の業務として実施する以上は給与が発生しているわけですから、一定以上の成果を出さなければならないプレッシャーもかかってきます。
「車以外の仕事をしたい」だけであれば何も会社員の業務内容を無理にシフトしなくても、副業やボランティアとして新しい仕事を探す方法もある、と思うに至ったのです。そうすれば、今ある知見や人脈で今まで通り会社に貢献しつつ給与を確保しつつ、新しい仕事をしたい欲を満たせます。

新規事業の落選が知らされ一通りガッカリした後、私は気持ちを切り替え、もし自分が副業をするなら何ができるのか、自己分析を始めることにしました。

次回以降の回へ続きます。


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