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壊れちゃったわたしの耳④ 仕事ができない

産業医の先生や上司に症状の話は相談していて、これまで通り業務をこなすことが難しいと伝えていました。しかし、ほとんど1人で担当していた業務だったため、わたしの代わりができるスタッフはおらず、完璧でなくていいから広報を続けるようにと言われました。

土日の混雑した館内での業務はかなりしんどく、敵に囲まれたような気持ちになるのです。しかし、そんな状況でテレビの取材の対応をしなければならなくなってしまいました。影響力のある番組だったため、広報として断るわけにはいきませんでした。急な依頼で、人繰りがうまくいかず、対応できるスタッフは私ひとり。取材を円滑に進めるための関係各所への調整と、館内を紹介するための出演とご案内、そしてお客様への配慮と一度にたくさんのことを気をつけながら、仕事をしなければなりません。しかもタレントがくる大所帯の撮影でした。
いままでのわたしだったら、ひとりでも余裕で対応できましたが、自信がありませんでした。
不安でいっぱいのなか、ついに取材当日を迎えました。 

完璧じゃなくていい。
そう自分にいい聞かせ、取材に集中しました。取材は順調に進み、予定よりも多い撮れ高があったと、とても喜んでいただけました。

無事に終わってよかったと安心していると、スタッフから声をかけられました。
取材がイベントの邪魔になっていたというのです。
うるさい館内での取材対応に、いっぱいいっぱいになったわたしは、できるだけ周りの音を気にしないように、お客様の姿を視界にもいれないようにしていました。
それで、まだ一般のお客様がイベントに参加しようとしているのに気づかず、取材の誘導を優先してしまっていたそうです。

他のスタッフからも同じ指摘を受けました。

自分がそんな初歩的なミスをおかしてしまったこと、そして取材が終わるまで気がつかなかったことにひどく狼狽しました。

次の日の会議で、取材はどうだったかと上司に聞かれ、涙が止まらなくなってしまいました。

そんなことくらい気にしなくていいと、みんな優しく声をかけてくれましたが、自分のことが許せませんでした。

こんな状態で広報は続けられないと思い、治るまで休ませてほしいと上司に休職を申し出ました。上司もすこし休んだ方がいいと言ってくれました。
しかし、休みをとることは簡単ではありませんでした。

つづく

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