令和のホビーキャラゲームはここまできた!『ベイブレードエックス XONE』 レビュー
来たる2024年11月14日。
とうとう発売された『ベイブレードエックス XONE』の感想記事です。
10時間ほど遊んでの早期レビューです。
ふだんはこんなに早く感想をおさめることはしないのですが、
あまりにも嬉しい出来だったので書きます。許してください。
ベイブレードとは なにか?
ベイブレードとは、
タカラトミーから販売されている、コマのようなオモチャのことです。
金属同士がぶつかり合う迫力。様々なカラクリ細工。
モノが安定して回りつづけるという不思議さ。
さまざまな魅力から、子供たちの間で人気を博しています。
そして、販促としてYoutubeにてアニメーションが公開されています。
オモチャとアニメ。
『ベイブレードエックス XONE』は、
ふたつの原作をもつ デジタルゲームとなっています。
1. 現実さながらに動くベイブレードがもたらすサプライズ
スピード感あるバトルと、アニメのようなスロー演出。
熱中できる高いゲーム性と、どうとでも遊べるカジュアルさ。
本来は相容れることのない対極の要素。
それらを独自のバトルシステムによって両立させたゲームです。
ゲーム性としては、
格闘ゲーム と アクションゲームを 合体させたような作りです。
まず始まるのは、アクションゲームのような「オートチェイス」パート。
「オートチェイス」は、ハイスピードで自動進行します。
ベイブレードが勝手に戦い、試合状況をガンガン動かします。
各アクションの強さをリアルタイムで変えつづけるのです。
プレイヤーは「アタック」「カウンター」のアクションによって、
「オートチェイス」に介入することができます。
「アタック」は、チャージ中にぶつかると中断されてしまう、
「カウンター」は、使っている間ゲージが浪費されていく、
リアルタイムで常に変化しつづける
ベイブレードの立ち位置、
体力・スタミナ・Ⅹゲージの量、
状況をよく判断して、タイミングよくボタンを押していく必要があります。
「オートチェイス」は、アクションゲームのようになっているのです。
しかし、正確な状況判断はきわめて難しいです。
「アタック」「カウンター」は、ベイの軌道を大きく変えます。
ベイは軌道が変化することによって、
大ダメージの攻撃がおこなえる「エクストリームライン」に到達、
レールから勢いよく射出されて強力な攻撃が行えます。
「アタック」や「カウンター」そのものは決まっても、
軌道変化で有利をとられてしまうことがあるわけです。
「オートチェイス」での攻防は、
単純に「アタック」を「カウンター」しているだけではなく、
ベイの軌道をめぐった攻防が同時に行われているのです。
しかし、このベイの軌道というものがなんとも読み辛いです。
超高速でお互いの影響を受けて変わるため、なんとなく予測することしかできません。
法則がありながらも、完璧な予測が難しい。
しかし、予測しなければアクションが決まらない。
プレイヤーはスタジアムを熱中してみつめ、
サプライズをもたらすベイブレードに驚かされます。
そんなギリギリのなかでアクションを成功させる快楽。
めちゃくちゃ気持ちいいです。
また、
スタミナタイプは、
高いスピン力で逃げ続けることができたり。
ディフェンスタイプは、
防御力を活かしてガツガツぶつかりあえたり。
アタックタイプは、
高い移動能力でエクストリームラインを行かした攻めがしやすかったり。
タイプごとに「らしい」動きができるのも嬉しいところです。
強化すればどんな戦法もできる万能選手にはなるのですが、
ベイブレードは、偏りに偏った得手不得手があります。
それが逆に、たくさんの勝ち筋を生んでいるのです。
タイプごとに適した勝ち筋(と、操作)を考えて楽しむことができるのも、
「オートチェイス」の面白いところだと感じました。
スタミナで逃げ回るのも、
ディフェンスでガツガツ削るのも、
アタックで一撃必殺を狙うのも、
どれもちがった体験で面白いです。
「Xパート」という
格ゲーの起き攻めのようなパートに関しては、ふつうに出来が良いです。
ここは立ち回りパートとは、ある種、真逆の作りになっています。
スローモーション演出が入り時間が止まるため、
じっくりと考えて判断することができます。コマンドミスも起こりません。
ジャンケン形式……
と、聞くと運ゲーだと思いがちですが、「Ⅹパート」はちがいます。
ジャンケンが純粋な運ゲーになってくれるのは、
あくまで、出す手の強さが平等だからです。
上の画像ふたつは極端な例ですが、わかりやすいと思います。
「必殺技」は、それぞれ威力や効果がちがいます。
そして、あいこだと発動しません。
威力133の必殺技に負ける手
威力114の必殺技に負ける手
威力50の必殺技に負ける手
もっともダメージ効率がよい手はどれか、
最適解を探しだしていくパ―トとなっています。
さらに、
NPCブレーダーは完全にランダムに手をくりだすのではなく、
出す手がある程度きまっている……
性格付けされたパターンが設定されているようです。
(個別に設定されているのか、タイプ種ごとの共通パターンかは不明。)
そのため、
最初は、ダメージ効率を考えた最善手をとりあえず撃ち、
出す手の傾向がわかってきたら、相手のクセを読んで手を選択する……
という、対人戦における人読みのような動きができます。
この「Xパート」は、けっこうガチです。
もうちょっと運ゲー要素あってもよかったのでは? とも思います。
しかし、上述の「オートチェイス」を終えたうえで、
美麗な演出とともに派手にトドメをさすパート
として、よくできていると感じます。
主人公たちの叫び声、
プロレスを思わせる多種多様な必殺技、
気合の入ったクオリティの高いベイブレードの3Dモデル、
それを盛り上げる効果音やエフェクト、どれをとってもカッコイイです。
現実さながらのスピード感ある「オートチェイス」では、
不確実さが楽しいアクションゲームが展開。
スロー演出によるアニメーションがかっこいい「Ⅹパート」では、
結果をより確実なものとしていくロジックの面白さが展開。
相反する要素をバランス良くとりいれ、
楽しいバトルを実現していると感じます。
2. いろいろ試したくなる ゆるいカスタマイズ
カスタマイズも魅力的な作りです。
3つのパーツを組み合わせてベイを完成させます。
特筆すべきなのは、ブレードパーツの多様さ。
同じ種類であっても 個体ごとに発動できる必殺技がちがいます。
セットされた技の組み合わせが異なるのです。
そして、ベイブレードの見た目がすばらしいです。
キラキラ輝く。クリアに透きとおる。美しい。
そして、ランダムで入手できるパーツたちはカラーリングが異なります。
多彩な性能と見た目。
沼ですね。いろんなベイを集めたくなります。
先述の通り、必殺技セットには相性差がありますので、
集めたパーツのほとんどに秘めた可能性が感じられます。
性能も見た目も、
いろんな組み合わせが試したくなる作りだと感じます。
そして、ストーリーではパーツを強化することで優位にたてます。
「レベルを上げて物理で殴る」プレイができるのです。
これによって「好きな見た目だけど、性能的に微妙だから使えない」といったことが起こり辛いです。ある程度の差は強化でなんとかなります。
(第一部完! みたいな感じで新しいレア度のパーツが登場し、
最終的に型落ちはしてしまいますが……。
すこし寂しいですが、そのときは心機一転 新しい戦法に触れるときです。)
強化ポイントの入手量と、ステータスの上昇量のバランスはうまいです。
敵の強さには波がある作りになっていて、
ストーリーを順当に進めると、圧勝や激闘をバランスよく体感できます。
ベイは3つのパーツで構成されていますので、
一部のパーツだけ差し替えることで、強化・弱体化が容易です。
試合前に相手のステータスをみて組み替えることができるので、
バトルを自分の好きな難易度に調整することができます。
強化そのものも、そこまで圧倒的な差ではありません。
ある程度の差(+15程度?)なら勝ってしまうことも。
けっこうゆとりのある作りです。
まぁ……なんというか、
いろいろ試しくなるけど
ゆるい
作りになっている、という印象です。
このゆるさに拍車をかけているのがステータスの不透明さです。
上の画像をみてください。
アタック、ディフェンス、スタミナ……色んなステータスがありますね。
しかし、どういった影響があるのかは曖昧にしかわかりません。
おそらく、アタックが与ダメージ、ディフェンスが被ダメージ、スタミナがスピン力(体力のようなもの)、バーストが能力・耐性がバーストゲージ、Ⅹダッシュ力がエクストリームダッシュの……威力?しやすさ?に影響しているのだと思いますが、どういう計算でどういうダメージが出るのかわかりません。とくに詳しい説明はないです。
ベイブレードの軌道なども同様で、
どんなふうに動くのかは回してみないとわかりません。
アタックは大きく動きやすいといったタイプごとの特徴はあるようですが、
「パーツごとに細かい変化があるのか?」とかはよくわかりません。
弾かれ方まで変化していたとしたら、もうお手上げです。
シュートの仕方や敵ベイの影響によっても変わると思われますので、
いよいよもってカスタマイズの結論がわかりません。
つまりマスクデータが多く、結果が不透明なのです。
とにかく、いろいろ組んで遊んでみるしかない作りになっています。
やはり、
いろいろ試したくなるけど
ゆるい
作りとなっています。
結論がよくわからない。
でも、とりあえず遊ぶには困らない。
カスタマイズゲームとしては、ある種 理想的な作りだと思います。
3. 放課後に友達と遊ぶ 素朴なストーリー
キャラがかわいい。以上です。
ストーリーは、素朴な日常を描いた内容です。
アニメ『ベイブレードエックス』の作風をおおむね踏襲していると言っていいと思います。なんか世界征服とか悪の組織とか出てきたりせず、みんなベイブレードというオモチャで遊んでいるという世界観ですね。
ベイブレードは、オモチャでありながら対戦ゲームでもあります。
遊びと競争。矛盾したふたつの性質を併せもつ存在です。
ただ遊ぶのか、強さを求めるのか。その狭間を行き来するのか。
人は、ベイブレードの矛盾にぶちあたって様々なドラマを紡ぎます。
アニメ『ベイブレードエックス』は、
対戦型ホビーが引き起こす矛盾と人間関係。
感情の揺れと、行きつく先を描いた作品でした。
ゲーム『ZONE』でも、その作風は引き継がれます。
ベイブレードというオモチャをきっかけに友達に。
みんなで遊んだり、ご飯行ったり、ダベったり、買い物でかけたり。
作中では大会が開かれていて、
これに参加しながら日常を過ごす……といった内容なのですが、
試合がおわってロビーに戻ると、友達がいたりしてお話ができます。
街中にキャラクターたちが登場することも。
会いに行くとベイブレードできたり、ちょっとした会話が発生します。
さすがにボリュームは乏しいですし、劇的な展開もありません。
まだクリアしていませんが、あっと驚くことは最後まで起きないでしょう。
しかし、
ゲーム『ペルソナ』シリーズのコミュニティパートのような、
日常的でしょうもないのだけど、たしかな暖かさと切なさがある
そんなストーリー……というか、雰囲気に仕上がっていると思います。
4. オンライン要素について
やっていないので、わからないです。
まぁ、『XONE』のバトルシステムだけを考えてみると、
対戦ゲームとしても面白そうではあります。
わかりません。
なにぶんやっていないので下手なことは言えません。
しかし、ひとつだけ言っておきたいことは、
このゲームは本編を遊ぶだけでじゅうぶん面白いということです。
オフラインで十分!?ジャンケン要素もあるのに!?
と、驚かれる方もいるかもしれませんが、
先述したようにジャンケンではありません。最適解を探すゲームです。
オートチェイスパートも同様で、アクションゲームとして楽しめます。
なにぶんやっていないので、
オンラインがめちゃくちゃ面白い可能性もあります。ありますが、
立ち位置としては『アーマードコア6』に近いものだと思われます。語弊のある言い方をするとオマケです。
まぁ、本編をじゅうぶん楽しんでクリアしたうえで、
もしかしたら対人戦も面白い……かも!? ということです。
必ずやらなければいけないものではないと思います。
まとめ
いろんな意味で、
バランス感覚に優れた良作に感じました。
プレイしているあいだ、ずっと心地よいです。
大人さんでも、つい熱中してしまうゲーム性の高さ
子供さんでも、ガンガン進んでいけそうなカジュアルさ
矛盾の合間を縫って面白さを表現した優れたゲームだと思います。
(まぁ、大人でもと保証するには、
筆者の感性が子供すぎるので、なんとも言えませんが……。)
正直な話、コストオーバーに感じる出来の良さです。
タカラトミーさんもフリューさんも(もしかしたらアニメチームさんも?)
そうとうな気合を入れて製作したことが感じられます。
『ベイブレードエックス XONE』
遊びと競争、それにともなう日常。
そういったものに思い出や興味のある方は、ぜひ触れてみてください。
「ベイブレード」コンテンツのファンにもオススメです。