こんな夢を見た

この夢には特徴的な木造の古民家が二つ出てくる。夢の中ではこの二つの家屋を舞台にした物語は繋がっていたような記憶が薄っすらあるが今は思い出せない。

一つ目の家は本郷辺りにあった高級下宿が舞台だ。私はそこに誰かを訪ねて行く。用件を済ませて一階の談話室に降りると花が飾られている。いくつかの花束をばらし、再構成して活け直した感じだ。

私より少し遅れて降りてきたのは旧知のMさんだ。上階で行われていた会合の席で私を見つけて追いかけてきたそうだ。私はその席で彼を見つけられなかった。

吉田君が喜びそうなものがあるんだよと、取り出したのは三、四束に分けられた古いレコードと新聞の切り抜きだった。

これがなかなか渋い。具体的に提示されたのだが覚えているのは舟木一夫のLPとシングル盤、切り抜きだった。もう一つは石原裕次郎だったかもしれない。

どこで手に入れたのか聞くと、教会の放出品だという。建て替えのため不用品を無償で分けているのだという。それは私も行ってみなければ、と言ったところで場面は変わる。

二階建てのみごとな本格和風建築で広い前庭がある。庭には起伏があり、小さな小川まで流れている。快晴の午後である。

なぜか私は玄関からではなく庭の縁側から屋内に入る。何の目的で訪れたのかは不明だ。

どうも私は招かれたのではなく、ゆるく押し掛けた感じで誰何されると気まずいような空気が漂っていた。

そのうち誰か若い男性と私は家の周りで何かを探している。なぜか私は裸足だ。

ふと二階を見上げると、日ごろは人気(ひとけ)のない二階の雨戸もカーテンも空いていて人の気配がする。見咎められてはいけないと、私は二階から見えにくい場所へと移動する。

隣家との境の生垣と家の間の狭い空間を抜けて裏側に出ようとすると、裏庭に人の気配がした。家の角からこっそり見てみれば、もっとも出くわしたくない人物がこちらに向かってくる。私は慌てて前庭の方へ逃げて行く。

前庭に戻ると急に後ろめたさは消えて、堂々と歩いている。そこでも随分ご無沙汰をしている法政大学のM(さきほどのMとは違う)教授に会い共通の研究テーマについて情報交換をした。久生十蘭についてである。

少し日が陰ったところで、母屋で行われていた催しが散会になったようで大勢人が降りてきた。私も帰らねばと思って靴を探すのだが玄関に見当たらない。人は去り、靴の数はどんどん減ってゆくが私の靴がない。

そこで、ああ、玄関ではなく庭の縁側の沓脱石のところだと思い出し、そこへ戻るがそこにも靴はなく、私は途方に暮れる……。

そこで目が覚めた。見ている時にはもう少し物語性があり、整合性もあったと思うのだが、夢の世界はこんなものである。

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