さる若手落語家の『妾馬』を聴いた。

いくら八五郎がハチャメチャだからといって、大名屋敷に草鞋(わらじ)で行っちゃいけない。足軽が戦に行くんじゃないんだから。

最初は単純に「草鞋」と「草履」の良い間違えかと思ったら二度目も「草鞋」だったのでもう世界観が崩壊して聴いていられなかった。稽古をつけて貰ったのではなく音源で覚えたのではないか。師匠の型ではあるがちょっと穴だらけだった。

と言ったが、草鞋と草履の定義が自分自身腑に落ちていなかったので調べてみた。大雑把に言えば「草鞋」は長距離を歩くためのもので、「草履」は近くに行く時の「つっかけ」的なものだ。では長距離は歩かないが、足下がしっかりしないと困る大工などの職人は何を履いていたんだろう?

職人用の草履というのがあったようだ。そういえば、大井川の渡し人足が履いていたのは確か「草鞋」ではなく「草履」(とは言え尋常なものではなく厚みと言い、大きさと言い大きく頑丈だった)だったように記憶している。

ことごと左様に江戸時代の日常生活は私を含む一般人には謎だらけなのだ。明治の後半くらいになると写真で画像を残すことが出来るようになったが、それでも実際にどう使われていたのかまでは分からない。分からないからあれこれ考えて楽しいのだ。落語は想像力。想像は楽しい。

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