ミステリアス・ピカソ〜天才の秘密
突然だが、映画紹介をする。映画館シネモンドの広告にのせる石引 OUR FAVORITE CINEMAのグループサイトに僭越ながら入れていただき、noteには映画と美術に関わることをたまに書いていきたいと思う。
最初にご紹介するのは
「ミステリアスピカソ〜天才の秘密」
監督:アンリ・ジョルジュ・クルーゾー について。
美術館や画集で気になる絵を見つけて「ああ、なんかいい。」と思う。そして、その画家について知りたくなる。どのような時代に、どのような心情で、どのような場所で、どのような画材を手にとって、描いたのだろうかと。何度も何度も絵の具を塗り重ね、絵は変化を繰り広げたはずだが、その変遷を見ることはできない。光学調査、科学技術調査、レントゲンなどで下層に描かれたものが多少わかる時代にはなったけれど、やはりその変遷がなぞに包まれることが絵画の神秘なのだろうと思う。絵画には絵画の時間が流れている。画家には画家の時間が流れている。絵画と画家の間にも唯一無二の時間が流れている。
このドキュメンタリー映画は南仏ニースのスタジオでピカソのスケッチ、水彩、油彩のライブペインティングをアンリ・ジョルジュ・クルーゾー監督が撮影したものだ。ピカソがまさに描いている瞬間をみることができる貴重な映像である。とくに興味深いのは「絵がきまらない」時だ。「ラ・ガループの海水浴場」というその作品は最初に描かれた水上スキーをする男が小さく描き直され、消され、再び描かれ、切り貼りされをくりかえす。ピカソは「こりゃあだめだ!どんどん悪くなる!!」と苛立ちながら言う。そして新しいキャンバスに描き直してしまう。「よし!これで!」とピカソは今思ったのか、、とまさに絵が生まれる瞬間に立合える。
ピカソと作品「ラ・ガループの海水浴場」の間に流れる間延びした時間と凝縮された密な時間を感じとることができる。