マーマーガールがチャクラ本出版イベントに赴く話(後編)
『kaiのチャクラケアブック』の出版イベントに行った話の続きです。もし好きな作家さんにサインを頂くチャンスを得たら、みなさんならどんな言葉を掛けますか? これは超絶シャイなわたしが、そのシチュエーションに直面したときに、ちょっとした気づきを得たお話です。(相変わらずそこまでが長いのですけども、)マーマーガールもそうでない人も、どうぞお楽しみください。
過去の出版イベントを振り返る
わたしはいままでに2度、出版イベントというものに参加したことがある。
最初は2015年頃だったと思う。やっぱり服部みれいさんのイベントで、どの本かは忘れてしまった。『murmur magazine for men』だったか『冷えとりスタイルブック』だったか……。実家にサイン本があるんだけども、手元に無くて思い出せない。当時、みれいさんは福太郎さんとご結婚されたばかりで、美濃に移住する直前のタイミングだった。ちょうどわたしも東京から地元に戻る直前で、そこにシンパシーを感じたことを覚えている。青山ブックセンターでのイベントのチケットを必死に手に入れた。
「お若いですね」。当日、サインしてもらいながら、みれいさんにそう言われ、緊張しながら「全然若くないです(アフアフ)」と精一杯返した記憶がある。そして、その会場にいた当時の福太郎さんからは、まだ人前に立つことに不慣れな青年という印象を色濃く受けた。
時は流れ、2回目は、2023年9月9日の、『まぁまぁマガジン』の出版イベント。場所はまたしても青山ブックセンターで、ゲストはkaiさんだった。ゲストは申し込みのタイミング以降に明かされたように記憶してるけども、わたしの目には、それがkaiさんであることは明白だった。みれいさんとkaiさんに会いたくて、頑張ってチケットを入手した。
その日、わたしは少し早めに青山ブックセンター本店に到着して、お店の前の椅子に腰かけて時間を潰していた。青山ブックセンターの入り口は地下にあって、その前には飲食店の名残りのような空間に、テーブルと椅子がまばらに置いてある。前日の雨で濡れている椅子が多かったけど、わたしが座った椅子は奇跡的に乾いていた。
そのうち、屋外エスカレーターからみれいさんや福太郎さん、そしてkaiさんたち御一行が現れ、お店に入って行くのが見えて驚いた。そう、作家たちは、一般人が想像するような架空の裏門からではなく、普通に表から入場する。それを初めて知った瞬間だった。先頭に立つみれいさんが、屋外エスカレーターからぐるりと場を見下ろした目が、気迫に満ちなんともパワフルで「そうそう、みれいさんって、優しいだけじゃないんだよな」と納得した記憶がある。
そして、およそ8年ぶりのそのイベントは、とても感慨深かった。まず、福太郎さんがあの頃とは別人のように大声で歌唱していらして(!)、時の流れをしみじみと感じた。トークの後にkaiさんとみれいさんにサインをしてもらう時間があったのだけど、わたしは相変わらず緊張してアフアフしてしまった。kaiさんには「kaiさんのYoutube大好きです(アフアフ)」みたいに虫の息で声を掛けるのが精一杯。kaiさんは優しく微笑んでくれたけど、なんだろう、「3分の1も伝わってねえな、わたしの純情」感はあった。そして、そんなkaiさんの傍らにお手紙があることを目撃したことが、今回のイベントへの伏線となる。
そして、みれいさんにサインをしてもらうとき、「可愛いTシャツですね」とわたしが着ていた青山ブックセンターのTシャツを褒めてもらった(なぜそんなTシャツを所持していたか? それは、青山ブックセンターはわたしの推しだからです)。そのときもわたしは緊張で「ブハー、ありがとうございます(アフアフ)」とか、まともな返事はできていなかったように記憶している。
これが、わたしが推し作家たちと接触した経験のすべてだ。2回の経験を通じてわたしが得た教訓は、「本人を前にすると、意外と言葉が出てこない」だった。だから、今回もきっとアフアフして終わるだろうという予感があった。そこで、手紙を持参するという作戦に出たのだった。
手紙をお渡しすることへの葛藤
手紙を書くなんて、いったいいつぶりだろう。
8年ほど前に転職活動をしていた頃、内定を貰った会社に「少し考える時間をください」という旨の内容を送って以来だった(そして、その会社にはもちろん入社しなかった)。わたしは手紙を書くという行為が好きではない。なぜなら、わたしの字はとても汚い。味のある汚さではなく、小学生で成長がSTOPしたような汚字。しかも、ペンを持って字を書くと、変に力が入るのか手が痛くなる。加えて、便箋を選ぶセンスも無い。このような悪条件のなかで手紙を押し付けるのは、貰った方も困るのではないかと思って、最初は手紙を書くつもりは無かった。
でも! やっぱり! kaiさんに何かメッセージを送りたい。
イベントに参加する数日前、そんな気持ちが仕事中に湧き上がって来た(仕事してない)。そう思うといても立ってもいられなくなって、Amazonで可愛いメッセージカードを発注した。そして、それが届くまでに、テキストファイルに書く内容を整理した。わたしの境遇などをしたためるつもりでいたそれは、5000字ほどの超大作になる予定だった。
でも、届いたメッセージカードは思ったより小ぶりだった。カードと封筒が10組セットになった商品だったから、10枚すべてを使えばわたしの大作メッセージは伝えられるだろう。でも、10枚もごっそりカードが入ってるなんて、さすがに引かれてしまう。最初から大きな紙に書きなよ、って絶対思われる。わたしは泣く泣く、伝えたい内容から最も大切と思われる箇所を抽出した。「出版に対するお祝いの言葉」、「ご本の感想」、「今後のご活躍への期待」の3点だ。それらを選び取る時、「わたしの砂を噛むような境遇」とか、「kaiさんとチャクラに出会うまでの殺伐とした日々の描写」とか、そういう4900字は最初からいらなかったことに気づいた。そんなものでカードデッキを作ってどうする。
イベント当日の朝、メッセージカードに気合を入れて文字を書いた。でも、久しぶりに見る自分の汚字にびっくりして、「やっぱりこれ、渡さない方が良いのでは……?」と不安になった。でも、持参して、やっぱり渡さないということもできる。そのチョイスは後の自分に委ねようと思って、2回の試し書きの後、3回目でようやく完成させた。それ以上練習してもクオリティが上がる気がしなかったし、手が痛くなり始めていた。出来上がったメッセージカードは口頭で伝えられそうな程の文字数しかなかったけど、それだけを書くのにクタクタになっていたから、5000字なんて端から無理だっただろうな。
そのカードにアロマオイルで作った自作の香水をひと振りし、封筒に入れた。わたしはアロマに関するちょっとした資格を持っているので、字がアレな分、せめて香りで少し挽回できればと思って(アロマについては、また別の機会に詳しく書こうと思う)。
そのあと、着ていく服を入念に選び、結構早めに家を出た。会場となる藤沢駅周辺や、湘南T-SITEは初めて訪ねる場所だから、ゆっくり散策をしようと思って。
イベント開始までのあれこれ
初めての街は歩きたくなるもの。
だから、藤沢駅で電車を降りた後、会場となる湘南T-SITEまでは徒歩で向かった。けれど、これが思っていたより結構本格的な住宅街に分け入ることになる。Googleマップを片手に、「本当にイベント会場に着けるのかなあ」と不安になるほどの、閑静な住宅街。途中、サーフボードを持って自転車を漕ぐ人に追い抜かれるなどした。
でも、Googleマップという文明の利器はさすがで、ちゃんと湘南T-SITEに辿り着けた。なんだかとっても、空気が良い場所。蔦屋が入っていて、そこは都会・代官山の蔦屋とはまた違ったのびのびした感じがあり、同時に洗練された雰囲気もあった。わたしはさっそく、2号館のレジ前に置いてあったkaiさんの選書コーナーでいくつか本をピックアップした。ほくほく。
まだ時間があったから、館内にある「パンとエスプレッソと」で食事をして、蔦屋を見て回ろうと店を出ると、先ほどの選書コーナーにとても人目を惹く一団がいた。服部みれいさんと福太郎さんと、その他の何人かの方々からなる集まりだった(kaiさんはいなかった)。作家たちは普通に入店する。それを知っていたわたしはもう驚かず、遠巻きにその様子を眺めさせてもらった。
蔦屋を興味深く見て回るうちに、あっという間に集合時間になった。5分ほど前に会場に行くと、もう参加者たちが集まり始めていた。みれいさんとkaiさんのイベントは、やっぱり女性が多い(男性もいたよ)。受付で整理番号の書いてあるカードを貰い、それを首から下げる。そして、イベントスタッフの方々の誘導のもと、その番号順に列を作ったのだけど、たくさんの参加者がいたからこれがちょっと難航。スタッフの方は「XX番台の方いますか?」と声を張って頑張っていた。わたしは番号が後ろの方だったから、同じく後ろの方の番号の人と少し会話をするなどして、その様子を眺めていた。出版イベントは、参加者もスタッフも真剣勝負だ。
そして通された会場は、沢山の光が差し込む、なんともお洒落でゆったりした空間だった。壁の棚には絵やオブジェが展示されていて、その側にはゆったりした大きなソファがあった。普通の椅子もあったけど、わたしはソファを選んでリラックス体勢を取った。会場では、きっとマーマーガールなんだろうなという人たちが、「久しぶり!」と再会を喜びあう声もちらほら聞こえた。物理的にも雰囲気も明るく爽やか。でもきっと、みんな何かしらの問題を抱えながら、kaiさんの本をヒントによりよく生きたいと思ってるんだろうな。
it's showtime!!
そんなことを思っているうちに時間は流れ、みれいさんとkaiさんが登場した。一緒に会場に現れた、kaiさんのパートナーのくしまさんは、会場の後ろの方の椅子に座られた。
kaiさんは目が覚めるような真っ白なシャツとスラックス姿、みれいさんは青っぽいグレーのカジュアルな膝丈ワンピース姿だった。そんな二人の背後には、赤とオレンジの、花のようでもあり飛沫のようでもある模様が描かれた大きな絵があった。アートな空間の中で、2人はカジュアルにトークを始めた。
内容は盛りだくさんだった。ここではその中から、わたしがメモに書き留めた内容をざっくり紹介しよう。
気づかないこと=心のくせ。問題は、気づくことでほぼ解決している
これは、よくkaiさんがおっしゃっていること。気づいた時点で、問題に対して意識的な行動が取れるようになるから、もう解決に近い場所にいるってことね。
他人の嫌だなと思う部分は、自分の中にその要素がある
『kaiのチャクラケアブック』には、参考例として色々な女性が出てくるんだけど、その中には「わたし、この人嫌い……」って思う人が、誰でも1人はいるはず。でも、実はそれ、その嫌な要素が自分の内側にあるってことなんです。だから、反応しちゃうんだよね。
自分のパワーバランス(チャクラバランス)を変えることで、支配的な人が寄ってこなくなる
これは、第3チャクラ閉じすぎの人の話。そういう人は、他人に支配されやすいムーブを自然と取っているから、まずは自分を変えるという解決策がありますよ、というサジェスチョン。他人を変えるのはしんどいから、これは救いになる言葉だ。
ムカつくあの人も、チャクラが乱れてるだけ
これは、わたしの主観で、お2人が言ってた言葉ではない。でも、kaiさんがもっとまろやかな表現でそんなことをおっしゃっていた。根っから嫌な人なんて本当はそういない。そう思って生きていたい。
お2人の対談以外には、本のイラストを描かれたくしまさんがステージに登場して、みれいさんがここだけの制作秘話をお話してくれるシーンもあった(気になるその内容は……ナイショ!)。
そしてサインの瞬間
そんなこんなで大満足のトークコーナーが終わった後、サイン会へ移る前に、短い休憩時間があった。そこで、お2人に話しかけに行くこともできたかもしれない。けれど、わたしにはそんな思い切ったことはできなくて、ソファでぼんやり過ごしていた(この時間にkaiさんの選書を買うこともできたけど、わたしはもう購入済みだったこともあって)。その後、サイン会がスタートしたけど、わたしは整理番号が後ろの方だったから、自分の番をしばらく待った。この頃には、カバンの中にある手紙を渡す腹をくくっていた。対談の最後にkaiさんが今後の活動に関する展望をお話していて、それとわたしのメッセージにシンクロする部分があったから、応援する気持ちをお伝えたいと思って。
そして! とうとう! 無限に続くかに思えた待ち時間が終わって、わたしの番がやって来た。
わたしは自分の『kaiのチャクラケアブック』を携えて、kaiさんの前に立った。ご本人に本を差し出すとき、「やっぱ、上手く喋れそうにないわ」って思った。家でメッセージを書いてたときは「これくらい、口頭で伝えられる量だな」と思ってたけど、いざ本人を前にすると、そこに書いてある言葉を言うのは不可能だと気づいた。
サインをしてくださっているkaiさんの前で、わたしはゴソゴソかばんを漁って、「話せる自信がなかったんで、短いですけど手紙を書いてきました」と言ってぬっとそれを差し出した。
その瞬間に、手紙を渡すことの良さを改めて感じた。
まずもって、肝心なことは手紙に書いてあるから、この場で言葉にしないとというプレッシャーを感じなくて済む。そして、こちらの真剣さも伝わる。「ただぼーっと待ってるわけじゃなくて、準備をして臨んだものの、ドキドキで上手く喋れそうにはありません(アフアフ)」……という気概を、行為によって伝えられるってわけ(伝わってる、きっと)。
「え~、嬉しい」。kaiさんはそう言ってわたしの手紙を受け取ってくださった。そして、「ちゃんと喋れてんで」と優しく付け加えてくれた。
その後は、「どこからいらしたの?」と訊いてくださったので、アフアフしながら答えた。その間も、ご本の感想とかを言いたかったけど、でも言えなかったから、短いけどやっぱり手紙を書いてきて良かった~って思った。
その後、サインしていただいた本を受け取り、わたしは晴れやかな気持ちで湘南T-siteを後にした。4月の心地よい空気の中を歩きながら、大きなことを成し遂げたような達成感と喜びを感じた。帰りは住宅街を歩かず、バスに乗って藤沢駅に行った。その道中、今度お会いするときはもっと長く綺麗な手紙を書こうと思った。それはたぶん、幾らか年月が経った後の、次のkaiさんの出版イベントになると思う。藤沢駅から電車に揺られながら、それまでにきれいな字を書く研鑽を積むことも決意した。
手紙に関しては反省点が多々あるけど、それはもっと素晴らしい次の機会の、ほんの前準備だったと後で思えたらいいな。
あとがき(本文より大事なこと)
とても長くなりましたが、ここまでお読みいただきありがとうございました。そして、こんなにわたしを衝き動かした『kaiのチャクラケアブック』をまだお読みでない方は、ぜひ読んでみてくださいね。