マーマーガールがチャクラ本出版イベントに赴く話(前編)
暖かい春の夜のできごと
2024年4月8日月曜日。わたしはいつもより早く会社を出た。
20時前。川沿いの道は桜が満開で、その白さが夜道に浮かび上がって見えた。近づいて写真を撮っている人もいる。屋内で働く会社員にとっては、満開の桜との出会いは貴重。朝晩の通勤時に眺めるか、開花予定とぴったり重なった週末に、運良く見られればラッキーという感じ。幻想的な風景に心洗われながらも、しかし足早に駅の方へと急いだ。
桜に気を取られている場合じゃない。
推し作家のイベントチケット販売時刻が迫ってる。
販売はその日の20時開始との情報を、普段はほとんど使わないインスタグラムから入手していた。なお、わたしがインスタグラムでフォローしているのは、ほんの数人で、その厳選された中に推し作家が含まれている。余談だけど、他には仮装しているロバート秋山のクリエイターズファイルもいる。だって、面白いんだもん。あとそこに最近、しょっちゅう韓国へ美容旅に行く女性と、SNS代行業務をしながら世界中を気ままに旅する女性がジョインした。まあ、たまたま情報が流れて来たから、何の気なしにフォローしただけなんだけど。いまこういうのが流行ってるんだなあって眺めるのが、世俗と離れがちなわたしにとっての一種のグラウンディングなんだな。
それはさておき。
空いた電車に乗り込んだとき、チケットの販売時刻を迎えた。
わたしは「湘南 蔦屋」と検索し、湘南T-SITEのサイトへとたどり着く。
売り切れちゃったらやだやだ!
どこ? 申し込みフォームどこ?
どこから買えるのよ?
はやる気持ちを押さえながらスマホに全集中すると、窓外の夜景も、周囲に立つ人々も意識から完全にシャットアウトされた。そして、最寄り駅に着いたそのとき、やっと購入ページに辿り着いた。ちなみに、会社から最寄り駅への距離はたった2駅分。時間にして5分程度という短時間だ。
電車を降りて閑散としたホームに立ち尽くし、購入の手続きを慎重に行った。無事完了すると、安堵と喜びが込み上げてきて、るんるんしながら改札を出た。そして、暖かい夜風に吹かれながら家へと歩いた。
こうしてわたしは、マーマーガール大注目の、湘南T-SITEで行われる作家kaiさんのイベントチケットをゲットしたのだった。ちなみにこのチケット、翌日にはもう完売していた。早めに退勤して買って良かった。
というわけで、この記事は、マーマーガール歴約10年のわたしが、『kaiのチャクラケアブック』に関する感想や、その発売記念イベントのことを記したものです。しかしながら、チケット入手でもう1000字ほど書いてしまっているので、長くなること請け合いです。あらかじめご了承ください。
そもそもマーマーガールとは?
チケット購入の喜びを正確にシャアするためには、時を10年ほど遡らなければならない。そして、わたしがマーマーガールになったいきさつをお話ししよう。
マーマーガール。男性の場合はマーマーボーイ。
このちょっと間延びした長閑な呼び名は、服部みれい氏が編集長を務める「マーマーマガジン」や「まぁまぁマガジン」に由来する。早い話がその読者たちのこと。もっとも、最近のみれいさんが手がけるコンテンツは、音声配信やオンライン講座など多岐に渡るから、それらを「いいな」と思ってる人全般を指すのかな(それらのコンテンツのことは「マーマーなコンテンツ」ともいう)。わたしの感覚では、緩いファンダムネームのようなもの。
わたしは何事にも熱しやすく冷めやすいから、長年特定の誰かを推すことはないのだけど、みれいさんは例外。気持ちに濃淡はあれど、出会って約10年、常にウォッチしてサイレントなファンを貫いている。
え? ちょっと待って。kaiさんって人の話をしてたんじゃないの? 別の人の話にすり替わってるんですが。そう思ったそこのあなた。実にいい気付きです。それもそのはず、わたしは本の著者についての話をする前に、その編集者との出会いを書こうとしているのだから。みなさんはいま、下の図の最初のポイントにいるってわけ。状況がご理解いただけただろうか。そんなところから書くから、記事が長くなるわけだよ。
わたしとみれいさんの出会い
服部みれいさんという人は、美濃で彼女自身が編集長を務める小さな出版社「エムエム・ブックス」を営んでいる。そして、彼女自身が作家でもある。
これ、マーマーマガジンのテーマ。ね、良くないですか? この文章に、みれいさんのエッセンスがぎゅっと詰まってる。自分を大事にすること。そして、自分から溢れた幸せで周りをちょっと幸せにすること。誰もがそれを自然とできたら、みんなもっと明るくなれるはずでしょう?
そんなみれいさんとわたしの出会いは、彼女の著作『あたらしい東京日記』だった。
この本は、分別不可能な何かを探して新宿のブックファーストを彷徨っていたわたしの目に留まった。
きっと帯のこの言葉に、何か感じるものがあったんだろうな。いま読んでもすごくいい。
内容は彼女が東京に住んでいた頃の日記で、スリリングなストーリーや愛憎劇が展開されるわけでもない、淡々とした日々の記録。でも、この本は不思議とわたしの心に刺さった。こんな風に世界を見ることもできるんだなあって。そこに超越性はないけど、他人の視点をインストールした気持ちになれた。そして、毎日忙しく、でも楽しそうに、大都会の真ん中で作家と編集者の才覚を活かして生きる姿を眩しく感じた。
あとは、どんなものを食べたかとか、何時に寝て起きたとか、そういう細かいところもツボ。それを読んで、「めっちゃヘルシー」とか「全然寝てないじゃん」とか心の中でツッコむのが楽しい。そして、すごく砕けた口語で書かれてるけど、文章がめちゃくちゃ上手い。服部みれいという人は有名雑誌でライターをやっていた経歴もあるから、そのさり気なくも狂いなき筆致たるやという感じ。
もちろん、本として刊行されているからには、抽出され、加工され、戦略的に読者を惹きつける内容に作り上げられているとは思うけど、それを感じさせないこのナチュラルさ。みれいさんの日記シリーズは他に2作出てるけど、どれも読んだ。繰り返し繰り返し読んだ。
そして、この日記をきっかけに、「マーマーなコンテンツ」に手を出す。
その代表作がマーマーマガジン。大型書店に行って過去の号を探した。当時は生まれて初めて地元を出て、東京に住み始めた頃だったから、何もかもが新鮮。そんな中で、マーマーマガジンを探して大都会を巡る小さな旅は、喜びそのものだった。あとは、彼女のブログを読んだり、メルマガを定期購読した。メルマガは後に「声のメールマガジン」という音声配信になっていまに至るけど、それもちゃっかり購読し続けている。
わたしとkaiさんの出会い
ときは流れ、東京のど真ん中にいたみれいさんは美濃に移り住んだ。
わたしは東京から地元に1度戻り、そしていまはまた関東に住んでいる。
みれいさんは変わらず、スピリチュアルな感性とシビアな観察眼を持ちながら、美濃という地方で発信を行っている(彼女にも色々変化はあると思うけど、わたしの目にはそう見えている)。そんな彼女のコンテンツに、2年ほど前から「チャクラ」が登場するようになった。そしてkaiさんという人が声のメールマガジンに登場し、みれいさんとチャクラについてトークをする回もあった。ふーん、kaiさん素敵だし、チャクラもなんか面白そう。そう思ったけど、そのあと開催された、2人によるチャクラに関するオンライン講座には参加しなかった。理由はまあ、なんとなく。
ただ少し経ったあるとき、何の気なしにその「第2チャクラ講座」、「第3チャクラ講座」のアーカイブを購入して聞いてみた。そして、その内容は、当時のわたしにとって、痒い所に手が届くものだった。『あたらしい東京日記』に出会ったときみたいにびりびり興奮した。
チャクラについては、ぜひ『kaiのチャクラケアブック』を読んで知ってほしい。でも、ここでちょっとだけ紹介しておきたく、1枚の図に著わしてみた。
チャクラが乱れるきっかけは、過去のできごととか、いまの生活習慣だったりするんだって。そして、わたしがこのチャクラの考え方の良いなと思ったところは、何歳からでも、日々の生活のなかでヘルシーな方法でセルフケアができること。食べ物を変えるとか、ハーブティーを飲むとか、アロマを焚くとかね。
わたしの場合、第2チャクラと第3チャクラがぴったり閉じてるなと自分で思った。いつも底抜けに自信が無くて、不安で仕方なくて、やりたくないことを嫌々してる。そんな個性。特に、職場で意味も無くオドオドしてる自分が嫌いで、「自分に自信がつく方法」みたいな自己啓発本を読んで、でも何も変わらなくて落ち込む、みたいなことを繰り返していた。でも、いまにして思うと、その本たちは「最後のひと押し」って言うのかな、ある程度整った人に向けたものだと思う。熱湯風呂で例えると、「押すなよ!?」って言いながら、ちらりと後ろを見て待ってるときに押してくれる存在よ。でも、その状況になるためには、自分の力で踏み台を上り、手足を使って湯船のへりで四つん這いにならなきゃいけない。でも、当時のわたしは、力なく床に蹲っている状態だった……っていうかさあ。この例え、kaiさんの持つ素敵なムードに全くマッチしてないけど、いいのかな。
ともあれ、わたしは講座の内容やkaiさんのYouTubeをもとに、第2チャクラと第3チャクラのケアを開始した。詳細な内容はここでは割愛するけど(せっかくなら本、買って欲しいし)、ハーブティとか、食べ物とか、そういうものを生活に取り入れたり、改善したりした。あとは朝晩に少しだけど瞑想をするようにした。そうして1年ほど経つと、むくむく調子が良くなってきたのが分かった。いまでは熱湯風呂の中で跳ね回ってるくらいまではキてると思ってる。
そして、今年3月末にkaiさんの初となる著書が発売した。8000円の高級な本だけど、わたしは迷わず購入した。第2チャクラ、第3チャクラの理解を深めたかったし、それ以外のチャクラについても知りたかった。そして、届いた本は圧巻のボリュームだった(物理的にも内容的にも)。この本、辞典のようでありながら、エッセイと詩もあり、物語もあって、相当型破り。でもその軽やかさが、わたしの好きなマーマーらしくて良いなと思った。
その本を読んで得た新たな気付きとしては、わたしは表現を司る第5チャクラも閉じているみたいだということ。SNSは専ら見る専で、そこで発信しようなんて夢にも思ってないし。第2チャクラ、第3チャクラが整ってきて、勢い余って小説を書くという自己表現をしたけど(その手記はこちら)、第5チャクラが整ったわたしは、いったいどうなっちゃうのかな。なんて考えるのも楽しい。
そして、話は冒頭に戻る。
春の夜にゲットしたあのチケットは、このチャクラ本の刊行イベントのものだったわけ。そこでわたしは、わたしをより良い状態にする知恵をくれたkaiさんに会えるだろう。
そんなところで、話は後編へ続きます。後編は、2024年4月20日に行われる(予定の)イベントへ参加したレポートや、過去にドキドキしながらみれいさんにサインをもらった話などをしようと思う。マーマーガールやマーマーボーイ、そうじゃ無い人もぜひお楽しみに。