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[コミュニケーションの核心]言葉とは動物の鳴き声である
言葉とは、人類が持ちうる最も原始的で特異なコミュニケーションツールである。多くの人は、人間の特異性が知性にこそあると考えるが、実は発声とコミュニケーションこそ人間の真骨頂だ。現に、現生人類より大きな脳と強靭な身体を持っていたネアンデルタール人は、いまや存在していない。これに関しては多くの意見があるが、ホモ・サピエンスの持つ高いコミュニケーション能力と集団の力に屈したとも言われている。
霊長類以外にも高い知性とコミュニケーション能力を持つ動物はいるが、人間の言葉ほど多様で難解な伝達手段は発見されていない。動物園で手話をマスターした猿はいたが、未だ言葉体系を自在に操るサルはいないのだ。それほどまでに人間の声帯は繊細で高度な器官であり、そこから生み出す言葉は人類の発展を支えてきた。
現在でも言葉の重要性が幾度となく取り上げられており、「人を操る言葉」「部下をやる気にさせる一言」「対話のコツ」みたいなコミュニケーションスキルに関する本が多く出版されている。しかし、言葉とは有用なコミュニケーションツールであると同時に、欠陥だらけで役に立たない伝達手段でもある。いきなり矛盾しているが、これは紛れもない真実であり、これまで我々のコミュニケーションを妨げてきた根本的な要因だ。
上述したような本は、言葉の構造的欠陥によって生まれた問題を言葉で解決しようとしている。それはそれで愉快だが、折れた指で折れた指を治すことはできない。今回は、そんな言葉の欠陥を明らかにし、コミュニケーションの本質について論ずる。
まず、言葉の欠陥というのは、それが指す思想の曖昧さにある。例えば、「軽い運動」という言葉ひとつとっても、普段から運動をしている人にとっては3kmのランニングだし、ゴロゴロしているニートにとっては20分の散歩になる。言葉が指す対象は人やTPOによって簡単に変化するのだ。
ほとんどのコミュニケーション上の齟齬はこのイメージ対象の差異から生じるのだが、これを理解できない人は「こんなに言葉を尽くしているのに、なんてやつだ。悪いのは相手だ」と勘違いする。こんなのは、言葉の構造的欠陥と自分の言葉に対する慢心の責任を相手になすりつけているだけだ。ほんとうの意味でコミュニケーション能力を向上させるには、欠陥への理解と対策が必要なのだ。
以下、いくつかの対処法を処方する。
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目次
1.知的・社会レベルが同程度の相手とのみ会話する
2.マナーを身につける
3.マインドセット
4.身体的サイン
1.知的・社会レベルが同程度の相手とのみ会話する
言うまでもないが、相手の社会的階層に応じて語彙も言葉も全く異なるものとなる。そもそものバックグラウンドが全く違う相手との円滑なコミュニケーションはかなり難しい。ヤンキーが話す「趣味」という言葉はパチンコ・女・車を指すが、ビジネスマンの「趣味」という言葉は語学やゴルフである場合が多い。
これは極端な例だが、多少の齟齬は日常生活で頻繁に起こっている。基本的に、先進国では受験・就職などを通じて階層化が起こるため、ある程度付き合いが洗練されてくるのだが、例えばBtoC業界や恋愛の場では注意が必要だ。そのような場で生じた問題の多くは、自分や相手のコミュニケーション能力不足が原因ではないかもしれないのだ。
2.マナーを身につける
上述した相手選びとも関連しているが、現代社会においても礼儀作法の習得は馬鹿にできない。昨今、なぜかマナーが軽んじられる風潮があり、形式的儀礼的で前時代的な縛りのように語られることが多い。しかし、そもそもマナーとは社会階層の明確化に役立ってきたものであり、おろそかにすれば自分の社会的立場を貶めることになる。
言葉のアクセントや身体的動作は物言わぬサインであり、相手に多くの印象を与える。普段言語化していないだけで、われわれは相手の動作の機微から多くのことを無意識に判断しているのだ。ゆったりとした動きと繊細なマナーは自然と寄り集まる人間を洗練する。誰もいなくてもいただきますという、胸を張る、姿勢を正す、などといった初歩的なこともできていない人はかなり多いのでないか。簡単すぎて少しアホらしいが、騙されたと思って真面目に取り組んでみてほしい。すぐに効果が出るはずだ。
3.マインドセット
相手を選んだら、あとは自分の問題だ。
コミュニケーションに関する従来の固定観念を破壊し、再構築していく。
まず、コミュニケーションとは言葉のキャッチボールではなく、印象と思想のキャッチボールだということを頭に叩き込んでほしい。コミュニケーション能力の向上には、語彙の充実や敬語の練習なんてものではなく、他のアプローチが必要だ。
どんなに理知的で魅惑的な言葉遣いをする人間でも、聞きやすく大きな声を持つ相手に議論で勝つことはできない。この世は限りなく物質的であり、妄想や小手先のワードで変えられることなど、ほとんどないのだ。
— 藤堂藤弥(Toya TODO) (@todo_sns) February 7, 2023
少し自分の人生を振り返ってほしい。現在、もしくは過去に付き合っていた恋人との会話を思い出せるだろうか。淡く甘い感情は蘇っても、交わしていた言葉の内容までは思い出せないだろう。人が交わす言葉なんてものは所詮そんなところで、ほとんどの人は昨日の友人との会話すら思い出せない。
会話するときに必要なのは、「相手に好印象を与えること」と「相手と自分の思想の距離を認識すること」なのだ。相手と言葉をかわすのは思想をすり合わせるためであり、大切なのは言葉を操る能力ではなく、相手の言葉からその裏の思想を読み取る能力だ。
相手が言った言葉から、今相手はどんな印象を受けているのか、どんな感情だろうか、どんな思想を持っているだろうか、といったことを推測する。そうすれば、推測に基づき、返すべき言葉は自然と出てくる。改めて考えてみれば、自分の言葉なんて反射的に出てきたもので、われわれは話そうと思って話しているのではなく、自分が話していることに気づいているだけなのだ。ということは、コミュニケーションに必要なのは話す能力よりも聞き取る能力だと言えるのではないだろうか。つまり、必要なのは話すことではなく、観察することなのである。
4.身体的サイン
最後に、前述した「相手に好印象を与えること」についてお話しよう。相手が受け取る印象は、もちろん言葉の内容によるものもあるが、それは微々たるものだ。いくらけなされても相手が美女であれば許せるし、どんなに「かわいいね」といわれても相手が不潔なニートだと不快だ。
みなさんも薄々感づいている通り、読み取るべきは身体的パッシブサインなのだ。身体的パッシブサインとは、相手が無意識のうちに発する(つまりパッシブな)身体的信号のことだ。例えば、瞳孔の開閉、身体の向き、身体の距離、声の調子、表情など。言葉よりもよほど多くを語るし、しっかり観察すれば大きな武器になる。
相手が同性か異性かによっても多少変わるが、しっかり相手に身体を向けて目を見て話すことで、相手の無意識に良い印象を埋め込むことができるだろう。ここでは考え方の紹介にとどめるが、もっと学びたい人は以下の本を読むと良い。
マンウォッチング―人間の行動学 / デズモンド・モリス
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以上の処方箋をしっかりと噛み砕き実践すれば、変な自己啓発本を読むよりよっぽどコミュニケーション能力の向上が見込めるはずだ。
「実は言葉に意味はなく、動物の鳴き声だ。原始的で低俗なジェスチャーがもっとも多くを語り、無意識の反応を浮かび上がらせる。」このくらい言葉に対する懸念・疑心を持っていたほうが、余計な問題を起こさずに済む。言葉を信用しすぎない、ということを心に刻もう。
ちなみに、今回の記事は口語の言葉に関するもので、書物にある文字としての言葉に対するものではないので、ご注意を。
文語に関しては気が向いたら記事にします。
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