最強バーチャルタレントオーディション極、バーチャル蠱毒についての雑感
(2018/12/23:オーディション敗退者のTwitterアカウントが削除されたため、記事中の引用ツイートも消失しています。いろいろ考えた結果、大意を掻い摘んで書き直しました。文章の引用もあるけど一部の抜粋です。あと、思わず一番下にも追記した。)
表題の企画についてご存知だろうか。ご存知という体で進める。なんか12人とか13人がひとつのキャラクターの枠を巡って配信のポイントを競う悪趣味なやつだよ。悪趣味だったんだよな。
Twitterでやたらとバズったこの企画に、ぼくも興味本位で首を突っ込んでいた。以来、3週間を時間的にも感情的にも随分と専有されてしまったため、なにか、なにか残しておこうと思い、これを書くことにした。noteを開設した。ブログと何が違うのかはよくわからない。今後使うかもわからない。
最初の印象としては、『やった~デスゲームだ~!』だった。企画が悪趣味なら、飛びつく人間も悪趣味だ。少なくともぼくは悪趣味だった。
悪趣味な人間の例
(期間については勘違いで、しっかり3週間ありました)
ぼくは普段VTuberにもYouTuberにもニコ生の配信にもかなり疎く、本当に、『推しの存在を否定されてみてえ~!』という一心のみで飛び込んだ。ムカつくなこいつ。砕くぞ。
追い始めたのは、公開オーディションが始動して2日目。5キャラクター61人すべてを追うのは厳しいだろうと思ったので、雨ヶ崎笑虹の12人に絞る。今思えば、多分みんな、初めは手探りだった。正直なところ『大丈夫かこの子ら……』とも思っていた。
3日目に親不知を抜くという子がいた。スタートダッシュ期間の中日。それ下手したら向こう2日くらい喋れないのでは……?ぼくは物見遊山気分だったので、あっはっはドジな子もいたもんだな、とだけ思って、そのまま眺めていた。でも、まだぼんやりとしか個人を認識できていなかった中で、この子、雨ヶ崎笑虹7番が頭ひとつ抜けた。
Twitterを追う。もう治療も終えた頃だろうに、音沙汰がない。どうしたんだろう。一日が経過したのちようやく再浮上したツイートは、葛藤の中にあった。知ってくれたたくさんの誰かを、知ってもらったほど傷付けるだけではないのか。残酷な盛り上がり方を受けて、初めからそういうものと認識していた参加者もいたけれど、不安を漏らす参加者も多くいた。そしてその中で、この子は確かに、眺める限り、あまりにも平和な子だった。
なんだかいたたまれなくなって、というか、この頃にはこの場違いな平和さが好きになっていて、マシュマロを送った。この平和な女の子にとって、ただ横暴に振り回されるだけの悲しい思い出であってほしくないと思った。参加者に直接干渉したのは、多分これが初めてだった。
やがて、配信はできないながら(抜歯の痛みによるもの)、リスナーとの交流や好きなものについてのツイートが少しずつ戻ってきた。
そして、予選前日。7番ちゃんは、彼女の言葉で、予選への参加を表明した。「楽しむこと」を目標に。この企画が悲しいだけのものにならないように。
つらくてもそれ以上に、
誰かの人生に彩を与えられるような、
そんな雨ヶ崎笑虹になりたいし、
そんな雨ヶ崎笑虹でいたいです。
皆さんとの細やかな思い出をください。
皆さんにとって、楽しいものにできるように、
頑張ります。
この時にはもう既に泣いていたと思う。涙腺がへっぽこだと忙しいんだよな。予選期間は、一日に一度か二度、多くはないけれど、配信をしてくれた。勝つためではなく、楽しむための配信だった。テンションの上がるような、声を上げて笑うようなものではなかったけれど、毎夜日付の変わる頃に始まるそれは、修学旅行の消灯時間を過ぎたひそひそ話のようで。楽しかった。
スタートダッシュ期間に出遅れたまま勝負の場を降りた彼女は、終始ランキングの一番下にいて、そのまま、何かが覆ることもなく、予選落ちで去っていった。Twitterには、最後の挨拶があった。
つらくて、でも優しく楽しい期間だったと言っていた。
「日常に寄り添う、穏やかでしあわせな時間をつくる」という目標を掲げていたと言っていた。達成できた、とも言っていた。うん。そう思う。
なりたかった雨ヶ崎笑虹にさせてくれてありがとう、と言っていた。
…夜の、穏やかに更けていくあの時間が大好きです。これからの毎日が、素敵な日でありますように。
平和な子なんだよなー。立ち上がってくれて、本当に良かった。大切な思い出になって、本当に良かった。いや本当に、本人が頑張ってくれただけで、こっちは何もしていないんだけど。だけど、だから、こっちまで大切な思い出になってしまった。もう、雨ヶ崎笑虹はただ一人になってしまったけれど。いつかいた、ぼくの自慢の推しの話でした。
そんで。
さて、当初の目的はなんだったかな。
ほんと悪趣味だなこいつ。キレそう。
ともあれ、結果からしてみればどうだろう。いや、まだこれからと言えばこれからなのだけど、なんだか、だって7番ちゃんの幕引きは寂しくても辛いものではなかったし、他の子だってそうだった。再起を宣言する子も少なくなくて、勝ち上がった子の努力だって見ていた。だから、この目的はきっと果たされないのだと思う。ここには最初から正しいものしかなかったし、それらはこれからも正しいものだった。
すごい人たちがいた。波乱万丈の人生を送りながら、明るく笑い飛ばしてみせる人がいた。親の理解を得られず、真夜中と、屋外での配信に絞られる人がいた。アイドル然とした物腰でありながらクレバーな努力を重ねる人がいた。自分を応援するため身を削るリスナーに涙する人がいた。勝ち上がるより、楽しい時間を共有したいと言った人がいた。一人ひとりに心からのファンがいて、きっとぼくも、配信を追えばファンになっていた子がまだまだいただろうと思う。実際のところ、雨ヶ崎笑虹に絞った当初の枠組は消えていて、あれもこれもと、最終日の結果発表を終えてからも、気がつけば応援したい人は増えていた。
蠱毒と呼ばれたこの企画は、気付けばデスゲームのイメージからは遠く離れ、多くの人が、多くの出会いを喜んで、多くの旅立ちを祈る機会となっていた。勝ち取った5人が、別のかたちを選んだ人たちが、思い出を胸に日常へ帰る人たちが、それを見届けてきた人たちが、前よりも少し笑って歩いていけますように。
取り敢えず、ぼく自身はそう変われるだろうと思う。なにやらがんばろう。
以上、3週間にわたるセンチメントが煮詰まった文章でした。
感傷蠱毒かよ。
(2018/12/23:修正方法について追記しました。蛇足ではある。)
いやー、アカウント消えちゃった。最初からそういう予定だったんだけど、転生プロジェクト云々で一度不明瞭になったせいで結局しょんぼりしている。
本当は、修正は該当ツイートのスクリーンショットでも対応できるよう準備はしていました。ぼくは7番ちゃんの言葉選びがすごく好きなのでそのままぺたーってしたいのが本音ではあるんだけど、いろいろ悩んだ末にこのかたちになったので、ここで吐き出させてね。
元々この記事は、今回のことがその場にいた人の記憶にしか残らないのが悔しくて、加えて、ぼくは印象だけ残して具体的な記憶が抜け落ちるタイプなので、思わず書き起こしたものでした。だから実のところ、これを公開した時も、『消える予定だったものの記録を勝手に残している』ことは頭を過っていて。
参加者の中には、「有志が残してくれたアーカイブも、どうか消してほしい」と発言した人もいました。そんなように、今後への支障だったり、一挙手一投足が記録される心的負担だったりで、何にせよ、困らせてしまうことが多分ある。
7番ちゃんはどうだったんだろう。聞けるうちに聞いておけばよかった。それも慎重に。そりゃ受け手側は残る方が嬉しいもん、ファンサービス抜きの、本人がどう感じているか、それを確認しておきたかった。唯一の後悔なんだよなあ。
どこまでが嬉しくて、どこまでなら許容できて、どこからが負担になるのかわからなくて、この記事も『多分セーフ。……でありますように』というへろへろな判断に依って公開しています。そして、Twitterが消えた後もスクリーンショットで公開するというのは、ちょっと自信が持てなかった。ので、こんなふうになりました。
本当はもっと細やかに、素敵な筆致で綴られていたんだよ。でもすまんな、これはぼくがひっそり抱えて暮らすことにするね……すまんな……。