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〜 勇者だって 〜




物語のあるリボン作家『いろいと』です
私の作るリボンには1つずつ物語があります
手に取って下さった方が、楽しく笑顔で続きの物語を作っていけるよう心を込めて作っています
ストーリーは、一つではなくどんどん増えていくもの、これからのストーリーを作るのは、あなた
あなただけのストーリーを楽しんで行って下さい♡
こちらでは、リボンの物語を紹介しています楽しんでもらえたら嬉しいです♪


〜 勇者だって  〜


大きく開いた口から滴り落ちるヨダレは、滝のように流れ落ち地面を湿らせていく
そして、グルルッと喉を鳴らし、距離を詰めてくるのだ
一軒家ほどの大きさをした、オオカミのような魔物は、その黒い体を揺らし、ジッと私と睨み合う
両手で握りしめた剣を目の前に構え、脂汗をかく
ゴクリと魔物が生唾を飲み込んだ瞬間、私は間合いを詰めた
『ぬぁあああああ!!!!!!!』
気合の入った雄叫びと共に、魔物の右上を目指し走り込みジャンプする
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『うわぁああああああああ!!!!!!』
攻撃範囲に入った私は、一気に飛び上がり、大きく振りかざした剣に自分の全体重をかけて、右上から左下へと振り下ろす
と同時に、次の攻撃態勢へと体制を変え、着地した右足を軸に、くるりと回転して遠心力を使った技を繰り出す
『勇者様ぁ!!!いっけえええええ!!』
同じパーティーの魔導士リビは、魔法で援護しながら私を応援する
『これで最後だ!!!』
剣を左手で添え、下から突き上げて必殺技を食らわす
『ぐおぉおおおおおお』
バタンッ!と大きな音を立て、家が崩れると同じように、毛並みを砂まみれにしながら、魔物は倒れた
『・・・ふぅ』
一息ついたのも束の間、少しずつ手が震えるのが分かる
『さすがです!』
『いや・・・いやいや。無理って!もお、ヤダよ!!』
『はぁ。大丈夫だから落ち着けって!』
半べそをかく私に、弓使いのメリルが、ギュッと抱き締めて落ちつかせる
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『はいはーい。大丈夫、大丈夫』
大丈夫だと言いながら頭を撫でるメリルと、回復魔法を使うリビに、私は心底感謝をする
『やっぱ怖いよぉ!無理!!絶対無理!!』
『でた。また始まったよ勇者様の無理』
『大丈夫だって!今までも攻略してきただろ?』
『そうそう♪勇者様は、強いんだもん、いけるいけるぅ!』
『二人共、そんな他人事のようにぃぃぃぃ。怖いから、もう勇者やめる!』
『よしよし。・・・さっ!先を急ぐぞ!』
『ヒールも終わりましたし、行きますよ』
『うえーん。やだぁ』
うるうるとした目を、これでもかってくらい潤ませて訴えるも、その効果はなく笑顔で手を引っ張られて旅路は続く
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だいたいどこの国にも勇者はいて、代々魔物倒す一族とされている
と言っても、勇者と言う一族は少なく、人の目につかず繁栄させていたのもあり、広く知られていないのが現実だ
それに加え魔物を倒す技術を伝承されるものは、ごく一部の勇者だったりもする
これが世にいう『勇者』なのだ
この私も、由緒正しい勇者一族の一員である
8歳を過ぎる頃に、勇者の適正診断のようなものがあり、それに受かった者だけが『勇者』となれる、というのが仕来りだ
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昔は、稽古に励み、世の為、人の為と厳しい稽古を乗り越え、僅かと言われる適正診断も難なく通った
ここまでは良かった。そう良かったのだ
初めて魔物に会ったのは、適性診断も終わり、見習いとして仕事をするようになった9歳の頃
その当時活躍していた『勇者』のパーティーで勉強することとなり、そこで魔物に出くわし、瀕死になるものの、勇者に助けられ無事だった、という苦い出会い方だ
魔導士や賢者を引き連れた勇者は、とてもかっこよく、いつかこんな風になりたいと思っていた
初めに瀕死になったのが良くなかったと思うが、出来る!と言って止められるのも聞かずに、突っ走った自分のせいでもある
あれ以来、魔物が怖くて仕方がない
世間的に、勇者は魔物にも怖気付く事はなく、堂々としていて、かっこいい人々のリーダーである
すでに絵に書いたような、その理想図のせいで『私は怖いから行かない』と言えるわけがなかった
幸いにも、幼なじみの魔導士と弓使いがパーティーに加わることになり、隠さずとも良いのが、まだ救いである
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魔物がいた森を抜け、少し歩くと街が見えてきた
街へ入ると、『勇者が来てくれた』と街をあげて歓迎をされる
魔物を倒すのは勇者の仕事なのだが、勇者の人数は国に数人しか居ないので、街へ行くと歓迎を受けることが多い
それほど勇者という者は頼りにされ、崇拝の対象になる存在なのだ
今夜はこの街で過ごすことにした私達は酒場へ行く
店へ入るなり、先に来ていた客たちが私の元へやってきて、口々に感謝の言葉を渡してくる
『魔物がいなくなったおかげで畑仕事も安心だ』
『夜警をする必要がなくなった』
『この間は助けてくれてありがとう』
たくさんの感謝の言葉に、私は微笑みを返す
そして、どこか安心した
夜も更け、宿へと帰る道のりに、リビが口を開く
『勇者様?魔物は怖いです。逃げたいし、私ももうやめたいって思うことある。でも皆の笑顔と感謝の言葉を聞くと、辞めなくて良かったって思うの』
『魔物が怖くて、逃げるのもありかもしれんが、それを逃げずに戦うお前はすごいと思うよ。だから大丈夫』
『メリルもありがとう。うん。皆の顔を見て安心した・・・うん。護りたい。二人共いつもありがとう』
・・・そうは言っても怖い
それでも、ここにいて良かったと思う私は、明日も魔物と戦うんだ
皆の為、そして自分の為に・・・
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