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〜 霧 〜





物語のあるリボン作家『いろいと』です
私の作るリボンには1つずつ物語があります
手に取って下さった方が、楽しく笑顔で続きの物語を作っていけるよう心を込めて作っています
ストーリーは、一つではなくどんどん増えていくもの、これからのストーリーを作るのは、あなた
あなただけのストーリーを楽しんで行って下さい♡
こちらでは、リボンの物語を紹介しています楽しんでもらえたら嬉しいです♪


〜 霧 〜

姿を隠して見えなくするのは気のせいか
そこにいるはずのキミは私を見てるのか分からない
『ねぇ、こっちに来て』
『どこ?』
『ほら、ここだよ』
声のする方を向くが、姿が見えない
こんなに濃い霧の中だと少し先へ行かれると、見失う
キミは私を見つめているのだろうが、私には見えないので少し不安になる
『もう、ここって言ってるのに、君は僕を見つけるのが下手だなぁ』
いい香りと共に、ふわっと柔らかな感触を感じたと思ったら、後ろからギュッと私を抱き締める
『だって、こんな霧の中じゃ、すぐに見失っちゃうよ』
『そう?僕は、いつだって君を抱き締めれるのに?』
くすっと笑う声と共に、キミは私の首の前で手を組み合わせ、私を軸にくるりと回り込む
そして、キミは私の目の前へと来るなり、微笑む
『大好きだよ』
首筋に置いた手が、スルスルと背中へと降りていき、もう一度ギュッと私を抱き締める
私の中にある不安だった気持ちが、嘘のように晴れていく
『もう不安じゃなくなったでしょ?』
『うん』
抱き寄せた体を少し離し、おでこが当たりそうなくらいの距離を取る
俯く私は、りんごのように紅く頬を染めた
·
手を繋ぎ森の中を歩き回る
今度は離れないように、大切に大事に
それなのに、ふと私が後ろを振り返った瞬間に手が離れてしまった
キミの姿を確かめようと、キミを見るも、姿はない
どこへ行ったのか、どこまで行ったのか
『ねぇ!どこ?!』
『え?ここにいるよ?』
『いないよ?見えない』
『ほら、ここだよ!僕は見えてるよ?』
『え?どこ?』
再び不安の海の中へ放り込まれた私は、必死で探す
ぐるりと辺りを見回し、左右確かめる
いない
どこにもいない
真っ白な霧は、見えているはずのキミを隠す
そんなに濃い霧のはずじゃないのに
『ねぇ、ここにいるよ?』
『なんで私には見えないの?』
『見えないの?僕はこんなに君をしっかり見ているのに。こんなに君を愛しているのに。君は見えないの?』
ぞくっと鳥肌が立つのを覚えた私は、どこか不安の他に何かを感じ取る
『ほら?ここにいるでしょ?』
耳元からキミの声を感じ、そのまま、また後ろから抱き締められる
『ねぇ?なんで僕を見つけてくれないの?』
今度は、背筋が凍るようなとても冷たい声で、私に問いかけられる
『大好きだよ。君は?』
『・・・大好き』
『そう。それは良かった、僕は、君が好きで好きでたまらない。ねぇ。どこにも行かないで?ねぇ。僕を探して?ほら?ねぇ?早く見つけてよ』
可愛い顔をしてケラケラと笑いながら、私の手を掴む
どんどん森の奥へと
·
ザクザクと草木を踏む音だけが鳴り響く
そして口を開く時には、移ろいゆく
『ねぇ?君は僕のこと好き?』
『うん。ダイスキ』
『本当?じゃあ、なんで霧の中で見つけられないの?』
『だって、本当に見えなくなるの』
『そうなんだ?僕は君をすぐに見つけられるのに』
濃い霧は、私を惑わせる
私は、ここに何しに来たんだっけ?
キミは誰だったっけ?
ワタシは・・・
『僕は君が大好き。誰よりも君を愛しているんだ。この霧があっても僕だけは君を見つけられる。そう・・・僕だけがね』
前を歩き私の手を引くキミは、チラリ私を見てニヤリと笑う
ねぇ?キミは、私をどこへ連れてくの?
·

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