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もわもわ


舞台の中央にゆっくりと明かりが浮かび

手足のないただの塊が現れる

光を吸い込み太ってゆくその塊は

爽やかに舞い始める




私の要素はこの世界の至る所で生きている。

と感じたのは高校生のとき

物語ることに意味を見いだせず

大地と自分を結びつけるものの中に真実があると確信していた


ただの石ころが、空を見上げている。

私も真似をしてみる。

昨日より昔をすべて切り離し

今日をここに置いたまま

あのアオに浸りながらどこまでも流れてゆきたい。


自分の人生に絶望していたわけではないし
大切な出会もあった
あの日あなたが持っていた大きなカバンは 
きっと昔に使っていたものを久しぶりに押し入れから出しで持ってきたのだろうと思った
あなたの要素の抜け殻が纏わりついていた
あなたは昔いじめられていたのだ
その時に私が近くにいたら
ほんの少しはあなたを救うことができたかもしれない
未来でたくさん助けてもらうお礼に。


トンネルの向こうから記憶が私を引っ張っている
そしてその引力は荷造りをする私の手をいつも止める


自分自身から出ていくことはできないと思い知らされる度に 心という臓器でも何でもない架空の塊を いろんな角度から観察するため私は劇場へ向かう



ー本日はご来場くださいまして、誠にありがとうございます。開演に先立ちましてお客様にお願い申し上げます。上演中、舞台上で起こることに無理やり感動する必要はありません。巻き起こる現象はあなたの一部であり、あなたという輪郭を辿りながら通り過ぎてゆくでしょう。あなたが自分を通して見続けるこの作品はあなただけのものであり、また世界や誰かの一部です。
近づきもせず離れもせずその席に座ったままご覧ください。―

―まもなく開演となります。―



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