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暮らしは短絡的幸福の連続

去年の秋に、柿のジャムを作った。思い立ったが吉日、さっそく退勤後に、私は柿を3つ買って帰った。

 柿に『柿助・柿右衛門・柿五郎』と名付け、机の上に並べて3日。痛んだ柿を水・砂糖と一緒に鍋に投入。あとは柿がじゅくじゅくになるのを待つ。音楽やラジオを聴きながらゆったり過ごしてもいいし、実家の親に電話をしてもいい。少し寝ても、お菓子を食べながらワルツを踊ってもいい。これぞ贅沢な時間の使い道である。

 柿全体にとろみがついたらレモン汁を入れる。ぐつぐつと煮立ったら、さらに2分煮て、完成。湯気で眼鏡を曇らせながらヨーグルトと一緒に食べる。ほくほく温かいジャムと冷たいヨーグルトは相性が抜群だった。柿助・柿右衛門・柿五郎、ありがとう。私の幸福は君たちの犠牲の上に成り立っている。

 時間が緩やかに流れていく中、暖房は25度、電気は点けたままで私は眠った。ジャムは机に放置されたままだった。見ないふりをしていたけど、洗濯物は2回じゃ終わらない量だ。少し積み重ねた「幸せ」を台無しにするだらしない私を、置き去りのジャムはどう思っただろう。どうかこの人間らしさに呆れないでほしいと願うばかりだ。

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