夜は眠って朝が来るようです 後書き
終わるのに1年以上かかってしまった。
こういう話を書きたい、と思ったのはそもそも3年前、コロナ禍に入りたての頃だった。
自宅で簡単に出来る副業特集というものをぼんやり見ていた時、
『モーニングコール代行』というものが紹介されて、まさに鱗が目からぼろぼろ落ちたのだ。
身内や仲の良い人同士でやるイメージがあったし、自分も学生時代友達とやったことがあるが、まさか全く知らない人に起こしてもらい金銭が発生する職として存在するだなんて考えた事がなかったから。
その衝撃の中で『起こし起こされる人たちの話を書いてみたいな』とメモ帳に書いておいた。
ゆっくり、ぽつぽつと気が向いた時に設定を考える。設定を考えている時が一番楽しい気がする。主人公は起こす方と起こされる方どちらが良いだろう。お客様はどんな人達にしよう。AAはどんな感じに当てはめようか。
いつ頃か主人公は起こす側で、静かな雰囲気のキャラクターが良いなとやんわり固まって来た。
素直クールを主人公に置く。何でモーニングコールをしているのか。モーニングコールの為に早く起きている?いや眠れないからそれを職にしたらどうだろう。起こす側にも起こしてもらう側にも小さな悩みがあって交差していく形にしようか。
輪郭が出来てきたのは秋短祭の時で、音楽部門で出そうと考えていた。
なので少し音楽に触れてる部分がある。本当にちょっと撫でる程度だけど。流石に100レスにまとまらないしその時は他に4?5作品?書いていたので断念。それからゆっくり書いたけど、ゆっくりやって良かったと思う。一番最初の設定メモを見直したけどだいぶ変わっている部分もあって、熟考した分良くなっている、気がする。
おはよう屋さんという職について
ネーミングセンス皆無なのでまんまになってる。
皆が普通におはよう屋さんって呼んでくれていたの嬉しかった。
弟者が簡単なHPを作ってくれていて、モニコの時間と呼ばれたい名前(アカウント名みたいな)とかをメールとかでやり取りしてはい、起こしますねみたいな感じのもの。
弟者もクーもお客さんがそんなに来るとは思ってなかったし、クーは他の人の話を別の人にするのを良しとしなかったから弟者にどういうお客様がいるみたいな細かな話をしたことはない。何人くらいいるよ、えっ思ったよりいるなって位の緩い認識、あんまり良くはないけどまあ、割愛。
ギコについて
『ギコ』は多分本名『カシワギ コウキ』とか(ごめん今付けた)からギコ、知人に呼ばれてるあだ名を呼ぶように依頼している。彼のイメージ曲は『お料理行進曲』
余命一年と言われてから二年経ったからビクビクするのをやめて美味しいものを食べるために早く起きて料理する人、としてぼんやり考えて書き始めた。もともとああいう性格にしよう、と思って書いていたわけではないので、なんとなくゆったりとしたキャラクターになったのは意外だった。
ギコほど酷い診察も現実では起きてないと良いけど、私自身、割と大きな病院で検査を受けた際に「脳に腫瘍があるから手術予定です」と言われて真っ白になりかける頭で手術方法ググって絶望しかけた事がある。
そのあと別の患者さんと間違えていたと言われた時ほど脱力した事はなくて、そういう事ってもしかしたら多くはないけど少なくもないのかなと思ったり。
余談だけどモナーの息子どのAAにしようか悩んだ際、『しぃの親だしギコにしようか………もういるわ』と危ないミスをしかけた。間違えなくて良かった、ギコが2人になるとこだった。
朝食専門店は行ってみたい。是非頑張って開いてほしい。
ペニサスについて
『ペニサス』はエルメス的なこの世界でのブランド名から取って付けた名前。
曲は『君の横顔が好きだ』せっちゃん好き。
お化粧に数時間かけてるという人を見て、何で?私と顔のパーツの数違うんかなって調べたことがあって、パーツ数は一緒だったけどすごい工程めちゃくちゃあるしカタカナのコスメいっぱい使い分けててすげー!ってなった。
一番凄いのはそれを義務とかじゃなくて、楽しんで自分のテンション上げる為にやってる事。めちゃくちゃカッコいいなと思った。
朝早く起きる理由としては一番リアルかもしれない。朝はスムージーとか飲んでる。私の中のオシャレな朝食がスムージーくらいしか無いから。
一番最初のメモを見ると化粧の理由が、馬鹿にしてきた奴らに対する復讐となっていて、今よりロックな感じだった。
今の、自分が好きで、自分と戦ってて、人を大事に出来るペニサスを気に入っているので良い感じに設定というか性格とかが変わって良かったなと思う。ペニサスといようとクーは関東に住んでそう。でもお互い住んでる場所は知らないし、ペニサスが言っていた「なんかすごい人身事故」も路線違ったりなんだりするよきっと違うはず、てきな一文入れ忘れちゃった。
モナーについて
語尾がモナだから孫娘に『モナーおじいちゃん』って呼ばれててそこから取った。曲は『大きなのっぽの古時計』
70代くらい、息子は遅くにできた子供。息子は思春期反抗期辺りでちょっとモナーのこと嫌になってるけど、成人して娘さん産まれて実家に連れて帰るくらいには歩み寄れるようになったのかなぁと思う。
だいぶ最初の頃からああいう締めにする予定だったんだけど、去年身内に不幸があってちょっとあー…みたいになってたりしたから書き切れて良かった。
わざわざ人と話したい人というのは結構いるんじゃないかなって出来た依頼理由。ちょっと先が見えるのはいつなんで生まれた設定だったかはちょっと忘れてしまったけど、それがキーポイントになるのだから不思議。
台無しだけど、モナー自宅でしかも手紙を置いて…だったから警察立ち会いみたいなのめちゃ「?」ってなってそう。大変だったろうな。
キュートについて
唯一本名。多分SNSのアカウント本名でやるタイプ。
彼女のイメージの曲が私のプレイリストになかったので募集中。
顔がめちゃくちゃ良いけど自己肯定感が低いから悪い人に飲まれちゃう。おはよう屋さんが悪い人じゃなくて良かったね。
最初の設定だと5股だったのにいつのまにか2股増えてた。あと1股で蛸になってたね。
ヒポポタマスは語感が気に入ったから記憶してただけで彼女にとって何も意味はないんだけど、要はカバって言ってるわけだから結構なバトー。
人にモーニングコールをするために自分もモーニングコールしてもらっているという、不器用な感じの子を書きたかった。
周りに優秀な人沢山いて、それに対してやっかむのではなく素直にすごい!って思えるのに自分の価値を見出せない人だけど、尊敬する人が頑なに馬鹿じゃないって言ってくれたら、それが宝物みたいになるんじゃないかな。いようの前だからちょっと軽い感じにした。
いようについて
本名が『太陽』なのでそこからたを抜いたとか。余裕がなかったからそういうハンドルネーム的なの考えられなかったけど今だったらヒロトとか付けそう。
曲は『人にやさしく』学生時代軽音サークルで演奏してたんだと思う。
彼は①の時余裕がないので唯一電話の後もおはよう屋さんのことを考えたりしてないし各レス内の余白もできる限り無くしてみた。
占いに一喜一憂できるちょっとの余裕と、占いに縋らないとしんどいぐらぐらしてる重いキャラとして書けてたら本望。
元々明るめの性格だったけど、初めて働いた先で散々ハラスメントを食らってるうちに色んなもの壊されてギリギリのとこまで行ってたんじゃないかな。行きたくないのに身体が動いて会社に向かう、心と身体が引き裂かれるような気持ちにトドメを刺してもらいたい一心で「頑張れ」を言わせていたんだと思う。
兄者について
姿を出せないばかりに出番をわりと削られた人。姿を見せないよう頑張った。
就職と共に県外へ引っ越してそのまま実家に帰れない&電話も出来なかった。顔を見ていれば、声を聞けば母者辺りは異変に気付けたんだろうけどそれが出来なかった。優しい家族がいてもああいう結果になったのは多分睡眠が取れてなかったことが大きいと思う。睡眠本当大事。
そんな中で書いてた日記、最後の方はぐちゃぐちゃになってただろうな。
弟者について
「弟者おまえ…!」ってなってほしくて頑張ってギミック入れたけど果たしてどうだったのか。なったかな?
多分兄者のことがあって急遽進路変えたり色々あった。
クリニックは本当に小さい。紅茶とか嗜好品集めるのが好きで、暇があると篭ってお菓子食べながら勉強ばかりしていたのでちょっと小太りになってた。
最初の頃は早朝4時半に起きてジョギングも筋肉痛すごかっただろうし、クーに声バレしちゃあかんとテンション高めのユーチューバーみたいな感じで電話してた影の努力賞。
受付の人は弟者くらいの年齢の子どもがいるから運動もいいけど食べるもの気をつけて欲しいって思ってる。
兄弟の曲は『決意の朝に』。
弟者も兄者も2人がいなければクーに朝は来なかったかもだから、クーにとって2人とも大事なお客様だった。
根野野郎について
本当は名前も付けたくない位には嫌いだったけど便宜上仕方なくつけた。まあ名前知ってた方が呪えるし多少はね。
奥さんの親族のコネで今の地位にいるだけの、自身には何もないタイプ。でもそういう人は得てして狡賢さがあるから、有効的に使ってクーの履歴書見たり面接したりして弱みを握った。後ろ盾がいないと踏むと強く出る嫌なやつ。いようの元上司ともまた違う嫌な人間。
あの女について
名前付けなかった。20代30代のあの、不貞行為に浮つき自分の魅力のなせる技みたいな謎の自己肯定感の高さとか、息をするようにマウント取ってくる、粘着性の強いもの踏んだ時の嫌悪感が出せてたら嬉しい。
この人は根野が正直に既婚だと教えてくれた誠実な人!って思ってるけど、当たり前に知らないより知ってて関係持った方がどちらにも慰謝料請求出来るから共犯に仕立てているあたりタチが悪いんだってことに気が付けていないだけ、ご苦労様です。
クーは誰からも聞けないだろうから知り得ないことなので本文には入れなかったけど、クーが退職宣言したあとくらいに根野の家に奥さんに別れてください!って凸してすったもんだしてる。赤ちゃんがいるご家庭にそんなことする最後まで迷惑な女。仲良く慰謝料払ってね。
モブについて
名前付けなかった。ああいう、上の意見に合わせるタイプの人たちが一番普通にいて、それでもって何事もなかったかのように過ごして何のお咎めも受けないんだと思う。彼らは彼らで1人がその場にいないときはその人の悪口を言い合うだとかしてる。
クーについて
静かだけど頑固みたいなそんな人かな、よくわからないまま書いた。静かだけど弱いわけではないというか、社会出たての20代前半はキラキラしてて柔らかくて、若くて脆いよねって思う。何でもできるし何でもできなくなるよねって。
周りの人達が優しかったからマウントとかもあまりない世界で生きていた人間にとって最悪の部署に配置されてしまった結果があれ。
感想で『体温の変化の表現が多い』と書いてもらえたけど、わりと意図的にしていたので気付いてもらえて嬉しかった。
私の昔の上司の人が結構だいぶアレな人で、部署が変わってからも姿を見るだけ、声を聞くだけ、似た人を見るだけで身体からサッと血の気が引いて冷たくなって手が震えたことがあった。
人間の身体ってすごい、正直すぎる、くそ絶対何かに活かしてやるって強い印象だったのを思い出して、あの場のクーもきっと冷たくなっただろうなって書いた。最後の方でクーはよく笑うし、お腹もなるし、一丁前にクズとか言うし、ヒポポタマスも勢いで言っちゃう。フォロワーさんのクーへの言葉ですごく気に入っている表現がある。
『ちっぽけな人間』という、ちっぽけが物凄くしっくりきたのだ。実のところそんな性格だったんだなと、終わってから知った。彼女を主人公にして良かった。
眠りたいのに、眠いのに寝れない時のしんどさってびっくりするくらい苦痛で、頭も体もおかしくなるし重たいし碌なこと考えられない、思考も狭くなる。子が赤ん坊の時、夜から朝にかけて眠らなくて外の空が明るくなってきて新聞配達の音が聞こえ始める時間、世界は今から働き始めるけど私はまだ寝てないし勝手に朝にならないでくれ、と思ってた。目をつぶって数秒で眠れそうなのに眠れないもうやだよー!っていう気持ちの辛さを思い出しながら眠れないクーを書いてた。
長い時間をかけたからという訳だけじゃないけれど、わりと自分の中でちゃんとした形に出来た作品。好きなんだけど、しんどい時には読まないで欲しいので手放しにおすすめ!はし辛い。
でも登場人物一人一人に(ヘイトサイドは置いておいて)朝が来たところを書けて良かったなと思う、書き終えた瞬間楽しかったー!となったので終わらせられて良かった。ここまで読んでくれている方々のおかげです、本当にありがとう。
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