マッ()ョ()ョタハ ナシのようです

注!百物語参加作品〜ホラーです





1.

開いた段ボールを畳んで、ひと息つきます。

「はー…荷解きこんなとこかな」

(;TДT)  

こんにちは、僕はしがない独身マッチョです。
今日僕はこの家に引っ越してきました。
そう、この素晴らしい一軒家に。

(;TДT)「まさか運び出しと掃除に半日以上かかるとは…まぁ全部1人でやったらこんなもんか…」

廊下を歩けばギシギシと音が鳴ります。僕の下腿三頭筋と前脛骨筋が素晴らしいからとかではなく、純粋に家が古いのです。

壁紙はところどころ剥がれ、床もベキベキのボロボロ、小さい庭は雑草がパーティーをしていて荒れに荒れまくっています。
僕はあまりインテリアに興味ないタイプのマッチョなので、持ってきたものは少ないものの元からこの家にあった家具などが置かれてあるのですがどれもよく言えばアンティーク、悪くいえば粗大ゴミ。
内覧は一度もしませんでした。写真を見て直感で決めたのですが、まさか実物がここまでとは。

こんな家、人間が住めるのか?
住む人はおろか近寄る人もいないですよ大丈夫ですか、と不動産屋から何度も確認のメールが来ました。
この家はあまり良くないんですよ、とまわりくどい文章が書かれていましたが僕は読む度に溜息をついていました。

(;TДT)「いやあやっぱりこの家………すっごく良いなぁ」

何度も答えました、「この家が良いです」と。

僕はこんな『人間が住まなそうな、人が寄り付かなさそうな家』を探していたのです。

(;TДT)「一休みしようかな」

ギッ

(;TДT)「……?」

音がしたのでそちらを見てみます。

何もいません。
建て付けも悪いから彼方此方が傷んでいるのでしょう、僕は気にしませんでした。
布団を出しておこうと寝室に向かおうとする大腿直筋が、ピクリと何かを感じ取りました。

ザァ

(;TДT)「え?水……」

今度は台所の方から音がしました。
蛇口から水が出ています。古く錆びているのでこういったこともあるのでしょうか。
水道、もう動いているんだなんてぼんやり考えながら止めに行きました。
キュッと蛇口を締めます。あまり強くすると壊れてしまいそうなので、優しく。

「ここに、住むんですか?」

(;TДT)

(;TДT)(後ろから…声…)

誰かの声がしました。
そんなはずはない。
だって、誰も寄り付かないのがウリなのだから──

恐る恐る、振り返ります。

 ( l v l)

 ( l v l) 「おじさん、この家に住むんですか?」

細かい年齢はわかりませんが、そこには『少年』と表される齢の子が、立っていて──

(;TДT)「にっ」

 ( l v l) v「に?」

(;TДT)「にっ人間のショタだーーーーー!!!!!」

 ( l v l) 「そんな悲鳴上げられたのは生前死後含め初めてです」

僕は内喉頭筋を痛めることも恐れずに叫んだのでした。

(;TДT)「きっ!きみ!どどどどっ!?ぅ、えあっ、おぇなん、何で人間のショタがこん…こんなところに…」

恐ろしいことです。
何より、どんなことより怖い存在が目の前にいるのです。

僕はいっそ正気を失いたかった。

シックスパックパッドをつけた時のように身体が震えています。

(;TДT)「あわわわショタ…ショタが出た…」

 ( l v l) 「その名称やめません?大体僕は人間ではなく、言うなれば幽霊のショタですよ」

人間の──もとい彼が言うには──幽霊のショタの言葉に震えが止まりました。

幽霊、幽霊ってことは、生きている人間では、ない……

汗がぴたりと止まります。

(;TДT)

(;TДT)「幽霊……?」

 ( l v l) 「そうです」

(;TДT)「な…」

 ( l v l) 「怖いですか?怖いでしょう、ならさっさと出ていくので…」

(;TДT)「なぁんだ!幽霊か!びっくりしたぁ〜〜!!」

 ( l v l) 「はい?」

(;TДT)「もぉ〜生きている人間だと思ってびっくりしちゃった、おばけさんね!良かったぁ」

 ( l v l) 「僕が怖くないんですか?」

安堵しきって身体中の筋肉という筋肉が緩みました。
目の前にいるのは生きてない、つまり人間では、ないのです。
怖くないのか、という問いかけに大胸筋を張ります。

(;TДT)「僕が怖いのはただ一つ、生きている人間だよ!!」

 ( l v l) 「ええ…」

(;TДT)「生きてる人間が何よりも怖くて仕方ないから、この誰も来なそうな家に越して来たんだ!君はここの住人なの?」

 ( l v l) 「ぼ」

(;TДT)「ぼ?」

 ( l v l) 「ぼく様を怖がらねーなんておもしれーマッチョなんです…!」

彼は生気を感じさせない目を器用にキラキラさせてこちらを見ていました。

 ( l v l) 「僕は成仏の仕方がわからなくてこの家にふわついている浮遊霊です!ちなみにシんだ要因や生きてる時の記憶が一切無いので、悲しい運命背負った幽霊ってわけじゃないです」

浮遊霊。本当に存在するもんなんだなぁと思わず感心してしまいます。

 ( l v l) =3「良いでしょう、貴方がここに住むことを許可します!面白くなりそうだぜ!」

(;TДT)「よろしく!」

あれよあれよと決まりました。
半分透けた小さな手と、僕の素晴らしい自慢の筋肉質な腕で握手をします。

こうして、僕と彼との不思議な生活が──いえ彼は生きてないのですが──始まるのでした。

(;TДT)「それにしても僕、霊感とか無い筈なんだけど君のことははっきりくっきり見えるなぁ」

(;TДT)そ「ハッ!もしかしてシックスパックを鍛えたからシックスセンスも優れてしまった!?」

優れた筋肉には優れた力が宿るもの、つまり僕と僕の筋肉もその域に達したということでしょうか!
僕の筋肉達が喜び勇むようにぽこぽこしてます、可愛いやつらです。

 ( l v l) 「ちげーます」

ショタの幽霊はわりかし厳しい判定をします。幽霊だからなのか、冷ややかな目が僕の身体に突き刺さるのです。

 ( l v l) 「この家、霊や怪異達が住みやすい逆バリアフリー設計なんですよ、霊達にとってのマイナスイオンみたいなのが溢れてるから、普通より見えやすいんですよね」

(;TДT)「じゃあ君以外にも…」

 ( l v l) 「たっっっっっっっくさん霊や怪異がいます」

 ( l v l) 「ちなみに僕以外全員悪霊です!これが本当のアウト霊ジってね(笑)」

(;TДT)「へぇ〜」

そんな環境なら人間は近付かなそうです。まさに理想の地です。僕はこの家に住めることを悪霊達に感謝しました。

ギィギィ天井や床が音を立てています。
家も僕を歓迎してくれているのでしょうか?嬉しい限りです。

(;TДT)「あっそうそう僕の名前は…」

今更ながら自己紹介をしていないことに気がつきました。名前を名乗ろうとして、目の前のショタが手を上げて制止してきます。

 ( l v l) 「あ、待って待って。僕は悪霊じゃないとはいえ幽霊ですので、そんな存在が名前を呼ぶ行為は危ないんですよ」

(;TДT)「危ない?」

 ( l v l) 「ノロわれてしまうかもしれません」

そういうものらしいのです。僕は今まで幽霊界に縁がなかった身なので、大人しくショタの言うことを聞くしかありません。
そもそも呪われるってなんだかとっても健康に悪そうですね、よろしくないです。

(;TДT)「そしたらなんか…あだ名とかかな…」

 ( l v l) 「じゃあマッチョさんて呼びますね!ちなみに僕は名前がないので好きに呼んでください」

(;TДT)「なんて呼ぼう……おばけのおばちゃんとかどうだい?」

 ( l v l) 「最初におじさんって呼んだのを根に持ってるのと元のセンスが無いの、どっちですか?」

おばちゃん、愛嬌がある良い呼び名だと思うのですが彼は不満なようです。
仕方なく、夜に食べる予定だったトリの胸肉から、ムネオくんとつけました。

引っ越して来て数日が経ちました。あちらこちらから音がしたりするこの家にもようやく慣れ、片付けもおおよそ終わりました。

(;TДT)「カーテン買わないとなぁ」

 ( l v l) 「どうしたんですか?」

ムネオくんは家の中をふわふわ浮かんでいて、この家や周りにいる幽霊のことをよく教えてくれました。自称通り悪霊では無さそうです。

(;TДT)「ここの家、夕焼けが綺麗に見えるんだね。綺麗だけど眩しすぎるし真っ赤になるから目に良くないなって」

前の家で使っていたカーテンは、この家の窓のサイズに足りなくて捨ててしまったのです。いくら人間が寄り付かないからといって後回しにしたツケです。
部屋の中は外からの光が入って、赤く染まっていました。

 ( l v l) 「夕焼け ですか」

(;TДT)「?うん」

 ( l v l) 「引きこもりはよくないですねぇ」

(;TДT)「え?」

確かにこの家に来てから外に出ていません。必要がないからです。
だからといって筋肉を育てることをサボったりはしていませんよ!?室内でも運動は欠かさずやっているので、一概に悪い引きこもり扱いされるのは如何なものか。
ムネオくんは続けて言います。

 ( l v l) 「今、5時半ですよ」

(;TДT)「うん、夕方だから…」

 ( l v l) 「朝」

(;TДT)「え?」

 ( l v l) 「朝ですよ今」

朝?朝の5時……いつの間に体内時計が狂ってしまったのだろう。いや、それにしたって。

(;TДT)「…でも部屋…夕焼けで赤い、よ…?」

 ( l v l)

 ( l u l) 「ネ」

ニタニタ笑うムネオくんの顔も、部屋ごと赤く染まっているのでした。

 ( l v l) 「マッチョさんはあれ使わないんですか?」

(;TДT)「あれ?」

ムネオくんが指差した方を見てみると、大きな姿見がありました。

僕は鏡が好きではないので持っていません。
あれは前の前の住人が置いていったものだそう。アンティーク調のしっかりした作り、だと思います。遠目で、しかも薄目でしか見たことが無いので細かな造形は分かりません。
僕はうっかり見てしまわないよう目を逸らします。

(;TДT)「鏡ね…僕自身、曲がりなりにも生きてる人間だからさ…自分の姿見てると気持ち悪くなっちゃうんだよね」

 ( l v l) 「可哀想なマッチョ」

 ( l v l) 「でも、その方が良いかもですね」

(;TДT)「?なんで?」

ムネオくんはスッと姿見を指差しています。
その先を目を細めながら見てみるとやはり僕が写っていて、そして僕の後ろに立っている長い髪の女性と目が合いました。

 ( l v l) 「あの人、ずぅっとあそこにいるのにマッチョさん気付いて無かったでしょう」

(;TДT)「ああ、それで置いていったんだね前の住人…」

女性はニタリと笑っていましたが、僕が振り向いてもそこには誰もいないのでした。

ファンファンファンファンファンファンファンファンファンファンファン

先程から聞こえているサイレンが家の側に来ました。
音から察するに救急車だと思います。
数が多いのか、場所が近いのか、ずっと聞こえていて耳の奥がキィンとするのです。
僕は何よりその車に乗っている生きた人間が怖いので、早く去ってくれと願っていました。

ファンファンファンファンファンファンファンファンファンファンファン

(;TДT)「事故かな」

サイレンが近づいて、ドップラー効果で怪しく音が揺れています。

 ( l v l) 「んー…」
 

ファンファンファンファンファンファンファンファンファンファンファン
キキーッゴンッ

 ( l v l) 「……この家の前で止まりましたね」

(;TДT)「ゴンッて音したよね?事故ってたら人間が来ちゃう…」

 ( l v l) 「ちょっと様子見に行きましょ」

(;TДT)「ええ…怖いよ…」

ムネオくんが僕のタンクトップを引っ張るので仕方なく玄関に着いていくことにしました。

ギィ
ドアを静かに小さく開きます。

ビシャ

(;TДT)「う、あ」

 ( l v l) 「あら」

ドアの前が真っ赤になって、足下は赤い赤い液体で汚れていました。
おかしなことに救急車の姿はなく、液体の元になったモノもありません。
ただそこには生臭さだけがありました。

(;TДT)「…鉄分のサプリでも置いといてあげた方がいいかな?」

 ( l v l) 「いらないと思いますよ、足らないから」

ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ
ゴゴゴゴゴゴキィヤァァァゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
ゴゴゴゴゴゴンガガガガガガガガガガガガガガ
ガガガヒィィィィイタィイガガガゴゴゴゴゴゴ
ガガガガガガガガガゴゴゴゴゴゴガガガガガガ
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴガガガゴゴゴガガガ

(;TДT)「朝からどっかで工事してるね」

音が響いています。こんな朝から工事なんて、
人間が近くにいるという事が怖くて窓を閉め
ました。不思議なことに地響きはしていませ
ん。少し離れたところなのかな?それなら、
いいのですが。

 ( l v l) 「うーんマッチョさん」

 ( l v l) 「普通の工事現場の音に、ヒトの悲鳴は混じってないんですよ」

人間が近くにいるんだと思って震えていた僕は、ムネオくんの言葉に安堵するのでした。

(;TДT)「カーテン届いた!」

僕は人間が何よりも怖いですが、置き配サービスは素晴らしい文化だと思っています。人間と鉢合わせなくて良いのです。

 ( l v l) 「良かったですねぇ」

(;TДT)「早速つけよう」

謎の赤い光が差し込むので、遮光カーテンにしました。なるほど部屋が暗くなりますね。

(;TДT)「ん…」

風でなのか、カーテンが揺らめいています。パタパタと旗めいてるのを眺めて、そもそも窓を開けていないことに気がつきました。

(;TДT)「…カーテン動いてるよね」

 ( l v l) 「そりゃあね」

(;TДT)「この家ではカーテンが自由に動くものなのかい?」

 ( l v l) 「まぁわりと」

遮光なはずのカーテンが陽の光で透けています。
内側にナニカの影が映っていました。影が動くたびにカーテンも動くのです。

影は、一つ、二つ……何やらいっぱいいるようでした。

 ( l v l) 「カーテン、外します?」

(;TДT)「いや、良いかな」

この家は本当に素晴らしい家で、人間は基本近寄りません(宅配便などは別ですが)。
ただ一つ、二つ…三つくらい困ることを挙げるならば、電気系統が弱いことでしょうか。
ボロいせいなのか、はたまたムネオくんのお友達のせいなのかは、わかりません。

(;TДT)「外の電気切れちゃったみたいだな、変えなきゃ」

 ( l v l) 「夜出かけたりしないから、よくないですか?」

(;TДT)「やー、明かりついてないのを良いことに泥棒が入ってきたら嫌だしね」

泥棒というのは、幽霊よりタチが悪いと思うのです。
だってほとんどが生きた人間なのですから。
前住んでいたところに泥棒が入ったのが恐ろしすぎたのも引越しの理由の一つでしたので、今回は万全に対策をしておきたいのです。

(;TДT)@「人感センサーついてるから人が来たら光ってくれる優れものなんだよ!これが光ってたら僕は素早く逃げられる、ありがたい電気です」

キュッキュッと音を鳴らして取り付けます。これで一安心です!

 ( l v l) 「光ってますよ」

(;TДT)「え?」

 ( l v l) 「ほら」

取り付けたあと僕は離れたというのにピカっと灯りがついていました。

(;TДT)「えー…センサー壊れてるのかな、誰もいないのに」

 ( l v l) 「誰か」

ムネオくんは光の下をジィっと見ています。

 ( l v l) 「いるんでしょ」

(;TДT)「……なるほど…電気代もったいないからはずそう」

全てのモノが見えるわけではない、と彼は教えてくれました。
電気よりよっぽど良い防犯じゃないですか!と笑っていましたが、僕は釈然としない気持ちなのでした。

僕はしがない幽霊です。って言ってもシんでるからシがある幽霊なんですけど(笑)
この住み心地の良い家に住んで早……どれくらいの月日が経ったかもはやわからないですけど、沢山の年月を過ごしてきました。

この家は何故だか色んな人間が住んでは出て行っての繰り返しです。何故でしょうかね、とっても良い家なのに。
僕はここにやってくる人間が驚くのを見るのが好きでした。他の幽霊達が驚かせてるのを見て、楽しそうだと思っていました。

僕も驚かせてみたい!
そう思ったのに、しばらくの間人間は来ませんでした。つまんない。退屈。最低な日々です。成仏できないので、それはもう暇で暇でシにそうなくらい暇でした。あっ、シんでますけどね(笑)

そんな中、久しぶりにやってきた人間はマッチョでした。
僕は喜び勇んで、彼を脅かしにかかったのです!
結果はまあ、おもしれー結果になりましたケド!

 ( l v l) 「ていうかマッチョさん、泥棒に取られて困るものないじゃないですか」

(;TДT)「お金は困るかな、生活する上で必要だって気付いたから」

 ( l v l) 「マッチョさん働いてないのに取られるほどお金あるんですか?」

(;TДT)「確かに僕もいい歳してトレーニングマチョさんだけど、お金はあるよ」

 ( l v l) 「何?」

(;TДT)「捨てるつもりで適当に買った株とか宝くじとかが全部当たったから大金はあるんだ」

 ( l v l) 「いやそこじゃなくて。トレーニング…何です?」

(;TДT)「成人後にトレーニングルーム占領するタイプのマッチョのことだよ」

 ( l v l) 「子供部屋おじさんみたいに言わないでくださいよ」

(;TДT)「僕、陰筋肉だし…筋肉のオーラがないから貧乏って思われがちだけどこの家だって現金一括で買ったんだよ」

 ( l v l) 「なんです?」

(;TДT)「どちらかと言えば陰気な筋肉のことだよ」

 ( l v l) 「隠キャって言いたいのか?」

(;TДT)「それにチープロ顔だしさ…あ、チーズプロテイン飲んでそうな顔のことね」

 ( l v l) 「マッチョスラングわかんないからやめろ」

このマッチョは僕のような幽霊は全く怖くないんだそうです。
イカしてる。そして、生きた人間がダメなんだと曰います。イカれてる。

 ( l v l) 「マッチョさんはどうして人間が嫌いなんですか?」

(;TДT)「僕は人間嫌いじゃないよ、人間が怖いんだよ」

 ( l v l) 「違いますか?それ」

(;TДT)「全然違うよ…僕は本当に本当に本当に本当に怖いんだ」

 ( l v l) 「◯シ"サファリパークかな?」

(;TДT)「本当に怖いから、人間が出たらすぐ逃げられるように脚も鍛えて100mは9秒ジャストで走れる…」

 ( l v l) 「然るべき大会に出た方が良い」

(;TДT)「人間に追い詰められた際、壁に穴を開けて逃げる為に鍛えたからリンゴも指で潰せる…」

 ( l v l) 「それだけの力があるのにコマンドが逃げる一択なの不憫」

生きた人間のくせに生きた人間が怖いだなんて、生き辛い人間です。

 ( l v l) 「何で怖いんですか?」

(;TДT)「……」

(;TДT)「人間だって、大した理由もなく幽霊を怖がったりするでしょう。そういうのと、一緒だよ」

 ( l v l) 「ふーーん」

難儀なマッチョさん。大した理由もなく、世の中のほとんどが敵だなんて。

( l v l) 「そんなに人間が怖くてよく生きてられますね」

(;TДT)「そうなんだよね、鍛えすぎちゃって皮膚が鋼みたいだから怪我はしないし病気もしない。針や包丁も刺さらないし縄も千切れるし毒も効かないから自シが出来ないんだ、寿命を待つしかないの」

 ( l v l) 「シぬ才能が無さすぎる」

(;TДT)「変に悪運が強いんだよね…」

僕は結構な時間を過ごしてきました。
幽霊たちは成仏の仕方を教えてくれない癖に、自身はサラッと成仏していくのです。僕を置いて。はっきり言って退屈な日々でした。

 ( l v l) 「でもまー、」

 ( l v l) 「マッチョさんいたら、しばらくは退屈しなくて済みそうデスね」

 ( l v l) 「ていうか、生きてる人間を直に見ればショックシできるのでは?」

(;TДT)「……!!!!」

(;TДT)「…、…!……出来なかった時がめちゃくちゃ地獄だから試し辛い…!!」

 ( l v l) 「あはは!」

 ( l v l) 「おはよう御座いますマッチョさん」

(;TДT)「おは、よ…」

いつの間に眠ったのでしょうか。気付いたら仰向けで寝転がっていました。

ガウンガウンガウンガウン、何かの音が聞こえます。

(;TДT)「なんの音だろう」

 ( l v l) 「さっきも、言いましたよそれ」

(;TДT)「え?さっき?さっきって……いつの話?」

(;TДT)「というか、何だっけ?」

ガウンゴウンガウンガウン、耳障りになってきました。
ガウンガウンゴウンゴウン。

はは、はははは、ははははは!!!

(;TДT)「誰」

わかりません、わかりません、何ですか?なんでしょう?
頭を抱えて身を掻きむしってもわかることが出来ないのです。

(;TДT)「あ、ああ」

そうして僕は、

( l v l) 「おはよう御座いますマッチョさん」

(;TДT)「おは、よ…」

いつの間に眠ったのでしょうか。気付いたら仰向けで寝転がっていました。

ガウンガウンガウンガウン、何かの音が聞こえます。

(;TДT)「なんの音だろう」

 ( l v l) 「さっきも、言いましたよそれ」

(;TДT)「え?さっき?さっきって……いつの話?」

(;TДT)「というか、何だっけ?」

ガウンゴウンガウンガウン、耳障りになってきました。
ガウンガウンゴウンゴウン。

はは、はははは、ははははははら!!!

(;TДT)「誰」

わかりません、わかりません、何ですか?なんでしょう?何がどうして、どうですか。
頭を抱えて身を掻きむしってもわかることが出来ないのです。

(;TДT)「あ、あああ」

そうして僕は、

( l v l) 「おはよー御座いますマッチョさん」

(;TДT)「おは、よ…」

いつの間に眠ったのでしょうか。気付いたら仰向けで寝転がっていました。

ガウンガウンガウンガウンガリ、何かの音が聞こえます。

(;TДT)「なんの音だろう?」

 ( l v l) 「さっきも、言いましたよそれ」

(;TДT)「え?さっき?さっきって……いつの話?」

(;TДT)「というか、何だっけ?」

ガウンゴウンガウンガウンガウン、耳障りになってきました。
ガウンガウンゴウンゴウンゴウン!

はは、はははは、ははははぁははら!!!

(;TДT)「誰」

わかりません、わかりません、何ですか?なんでしょう?何がどうして、どうですか?
頭を抱えて身を掻きむしって髪を引き抜いてもわかることが出来ないのです。

(;TДT)「あ、あああ、ああ」

そうして僕は、

( l v l) 「飽きましたマッチョさん」

(;TДT)「なに、が…」

いつの間に眠ったのでしょうか。気付いたら仰向けで寝転がっていました。

 ( l v l) 「飽きたんです、何回ループすれば気が済むんです!?」

(;TДT)「ループ?何言って…」

 ( l v l) 「マッチョさん、屋根裏部屋にあった時計に電池入れましたね?もーあれ鬱陶しいから僕が電池抜いておいたのに!」

(;TДT)「あ、時計……?ああうん、なんかまだ使えそうだったから電池入れたんだけど」

 ( l v l) 「責任持って壊しておいてくださいね!」

(;TДT)「ええー…」

何もわかりません、わかることが出来ないのですが時計を壊しました。

高い高い笑い声が、聞こえたような気がしました。

 ( l v l) 「マッチョさんって本当に怖がりませんね」

(;TДT)「人間だったら怖いんだけどね」

 ( l v l) 「あーああ!前の住人はもっと怖がってくれたのになーあ!!」

(;TДT)「よそはよそ!僕はマッソー!」

(;TДT)「隣のボディはゴツいもんだよ、ヨソと比べるのはおよしなさい、ムキッ」

 ( l v l) 「めっをムキッっていうやつ初めて見ました」

 ( l v l) 「あ、もしかしてドッペルゲンガーなら怖いですか?」

(;TДT)「ん〜ドッペルゲンガーって怪異だから、どっちかというと僕自身の方が怖い…」

 ( l v l) 「自分を哀しいモンスターとでも思ってるんですか?」

(;TДT)+「あと僕のこの美しい筋肉を一朝一夕では真似できないだろうという自負があります」

 ( l v l) 「ヨソと比べるなって言ったくせに…」

ここ数日雨が続いています。洗濯物が生乾きになることを除けば、僕はあまり雨が嫌いではありませんでした。

 ( l v l) 「ずっと雨ですねぇ」

(;TДT)「梅雨でもないのにねえ」

窓際でムネオくんがフラフラしています。やることがなくて退屈らしいです。
筋トレを勧めましたがすごい顔をされたので、もう二度と言わない予定です。

 ( l v l) 「あ」

(;TДT)「どうかした?」

 ( l v l) 「いえ、明日は晴れそうですよ」

(;TДT)「天気がわかるのかい?」

 ( l v l) 「いえ」

 ( l v l) 「お向かいのマンションで、おーおきなてるてる坊主が、ぶら下がっているから」

てるてる坊主。懐かしい。

(;TДT)「今もてるてる坊主作る人いるんだね」

 ( l v l) 「まぁ確かに、縄をかけるの、大変そうですよねぇ」

てるてる坊主に縄なんて必要だったっけ。
僕は不思議に思いながら、洗濯物を室内に干します。

それにしてもこの家からマンションってだいぶ離れてるのに、目が良いんだなムネオくん。
よっぽど大きなてるてる坊主だったのかな。

 ( l v l) 「マッチョさん、インスタとかいうのやってないんですか?」

(;TДT)「やってると思う?」

 ( l v l) 「マッチョは自己顕示欲強いと思ってます、僕、偏見あるんで!」

(;TДT)「爽やかに差別してくるじゃない」

 ( l v l) 「やってたら映り込んで心霊写真みたいな感じでバズりたかったのに…」

(;TДT)「ムネオくんのが自己顕示欲強いじゃないか」

(;TДT)「うわああああああああああ!!!!!」

 ( l v l) 「どうしたんですか」

(;TДT)「で、で、で、出た…」

 ( l v l) 「幽霊なら、はい。出てますが」

(;TДT)「違う、これ…見て」

 ( l v l) 「…足あとですね」

(;TДT)「そう!!足あと!おばけには足がないでしょ!??つまりこれは人間だ!!!人間がこの家に出たんだよ!怖いよ〜〜〜」

 ( l v l) 「警察呼んだら良いのでは?」

(;TДT)「おまわりさんも人間なんだよ〜〜〜怖いよ〜〜!」

 ( l v l) 「なんて不憫なマッチョさん」

 ( l v l) 「良いですかマッチョさん、見ててください」

(;TДT)「?」

 ( l v l) スゥー
  |   /
  | / | /
  / / ||
 (ノ U

(;TДT)「ウワー!足だ!」

ド( l v l) ャ「そうです、幽霊も足を生やすくらいできるんです」

 ( l v l) 「まぁ代わりに腕が透けますケド」

(;TДT)「使用限度でもあるの?」

 ( l u l) 「まぁだからあの足跡も怪奇現象だと思いますヨ」

俺はしがない空き巣だ。
先日の下見でとても良い物件を見つけた。
ボロボロもボロボロ、誰しもが近寄りたくないと感じるような一軒家。
廃屋かと思い調べればなんと、少し前から人が住んでいるらしい。

誰も近寄らないというのは美点で何かをした際、目撃する人間がいないということだ。
こんな家に住むくらいだから変人だろうし、荒れ果てているから何かナクなっても気付かないかもしれない。

なんて好条件。

それでも周囲に人がいないか、念入りに確認しながら庭先にお邪魔する。

ぞわりと鳥肌が立つ。
誰もいないはずだ、だというのに何かに見られているような嫌な感覚が襲ってくる。
思いの外手入れされている庭を、音がしないよう歩いて縁側に脚を踏み入れた。

ギッ

自分のものではない足音が聞こえ、心臓が止まりかけた。
家主はこの時間、いつも二階にいるはずだった。ずっと調べていたので確かだ。
しかしそんなことはどうでもいい、読みが外れることくらいある。そのあとどうカバーするか素早く動く、それが今まで捕まってこなかった秘訣だ。

ギッ ギッ ギッ

足音がすぐ近くまで来ている。

誰だ?家主か?見つかったらまずい、何処かに隠れよう何処かに──
和室に入り、押入れを見つけ身体をねじ込む。息を殺して動かないよう努める。
隙間からチラリと見えたのは少年の丸い頭だった。子どもがいたのか。

気付かれるな
気付かれるな
気付かれるな
気付かれるな
気付かれるな
気付かれるな
気付かれるな
息をコロせ

『コロすのお?』

「え、」

何かの声が『下』から聞こえた。
そちらに目を向ける前に、前が暗くなり『誰』かと目が合う。

『コロすのはマカせテえ』

声が腕が闇が下が前が指が喉を、

「何、何…やめっ!ぅあ"」

気づけば押し入れは開いていて、子供がこちらを見ていた。

「た、スけ……」

 ( l v l) 「あー」

 ( l v l) 「ごめんね、家主がねぇ人間がコワイって人だから」

 ( l v l) 「ナカマになったら出てきてよ」

 ( l u l) 「ネ」

 ( l v l) 「終末の日は何をしてると思います?」

(;TДT)「えー…考えたことないな…」

(;TДT)「多分、一日中笑ってる気がする」

 ( l v l) 「なるほど、悪霊の素質有りです」

マッチョさんが引っ越してくる少し前のことでした。
僕はやることもないので2階で物理的にブラブラして遊んでいました。

ちょっと離れたところにマンションがあります。
ぼんやり眺めていると、とある階のベランダに人がいるのが目につきました。
洗濯物でも干すのでしょうか、それにしては手ぶらなのが気になります。

 ( l v l) 「あら」

その人は僕と目があったことに気が付いたのか、笑っていました。
見えているのか見えていないのかわからないので、手を振ったりはしませんでした。

笑いながらその人はベランダを乗り越え、そうしてこちらを見て笑ったまま──地面にその身を叩きつけるように飛び散りました。

(;TДT)「で、なんで今その話をしたの?」

 ( l v l) 「いやぁ、さっき廊下でその人とすれ違ったので」

 ( l v l) 「まぁ半分しかなかったですケド」

縁側で空気椅子をしながら庭を見ます。

(;TДT)「昨日は何だっけ」

 ( l v l) 「鈴蘭です」

(;TДT)「一昨日は確か」

 ( l v l) 「スノードロップ」

(;TДT)「で、今日は」

 ( l v l) 「彼岸花」

(;TДT)「統一性がないね」

庭に狂ったように咲き乱れた花々を見ています。
彼岸花の赤が毒々しいです。

 ( l v l) 「でも庭の花が日替わりで狂い咲いてたら怖くないですか?」

(;TДT)「うーん……人間は綺麗な花が好きだから、写真撮りに集まってきたら怖いかも」

 ( l v l) 「あーマッチョさんが怖がらないからみるみる枯れてく」

(;TДT)「えー!ごめんねなんか!」

(;TДT)「ああ、今日誕生日だ」

 ( l v l) 「そうなんですか?ケーキ食べますか?僕モンブランが良いですけどショートケーキでも妥協しますよ」

(;TДT)「ムネオくんは誕生日…覚えてないよね、そっか…」

(;TДT)「あっ、じゃあ命日をお祝いする?」

 ( l v l) 「名案って顔してますけど不謹慎レベル激高ですよ」

(;TДT)「ケーキ、プロテインで作ってみたよ。半分こにしようか」

 ( l v l) 「あっマッチョさんダメですよ、霊体と物を半分こするとその魂も半分霊体に取られちゃいますよ」

(;TДT)「ええー」

 ( l v l) 「僕の身体の半分がムキムキになったら気持ち悪いので気をつけてくださいね」

(;TДT)「僕の心配じゃないんだ…」

この家はボロボロです。どこもかしこも、あっちもこっちも。
ムネオくんに言わせれば、そこが良いらしいですが。

(;TДT)「雨漏りしてるなって思ったら…大きい穴二つも空いてた」

天井からポタリぽたりと水が滴り落ちています。
ぽっかり空いた穴が二つ。その穴と穴の間から漏れているのが不思議でした。

(;TДT)「塞ぐかあ…」

 ( l v l) 「あ、マッチョさん待ってください」

(;TДT)「ん?」

 ( l v l) 「マッチョさん今、ズボン履いてますよね?」

(;TДT)「もちろんね」

流石に誰も近寄らない家といえど、僕は室内でも服を着ていました。僕の筋肉は安くないのです。

 ( l v l) 「その足を入れてるとこを塞がれたら嫌じゃないです?」

(;TДT)「あー…二つ空いてるのは…」

 ( l v l) 「そういうことです」

だとすると塞ぐのは良策ではありません。
僕は応急処置としてお椀を持ってこようとして、ふと思いムネオくんに聞きました。

(;TДT)「……雨、だよね?」

落ちてくる水滴を指差しします。

 ( l v l)

 ( 0v0)

 ( l v l) 「塞ぎましょう」

穴と、穴の間の上に(下に?)板を打ち付けて塞ぎました。
ムネオくんのあの表情は、きっと多分忘れないと思います。

穏やかな昼下がりのことでした。
屋根裏部屋から戻ってきたマッチョさんの様子が、何やらおかしいです。

(;TДT)「ウ、ウグ…」

 ( l v l) 「どうしたんですかマッチョさん……マッチョさん?」

変なポージングを決めているので、マッチョ特有の持病かと思いましたがどうやら違うみたいです。いつものゴリゴリな声ではなく、か細い声がマッチョさんの口から溢れ出てきました。

(;TДT)「ワたシは…マッチョじャなイ…人形のたまシい…」

よく見るとマッチョさんの洋服と板チョコのような腹筋の間に不気味な人形が挟まっています。変な図です。
そんなことより、僕は今までにない感情でいっぱいです。

 ( l v l) 「乗っ取れるんですか!???」

 ( l v l) 「マッチョさん、乗っ取れるんですか!???」

 ( l v l) 「言ってくださいよそういう面白そうなことは!!!!」

 ( l v l) 「順番的に僕が誰より権利あると思いません!??そういう順序守らない悪霊って本当良くないと思うなぁ僕!!!」

怒りです。怒りしかありません。僕だってロボットとか操縦してみたいです、マッチョの操縦なんて絶対面白いじゃないですか!?
だというのにポッと出の人形に先を越されるなんてあんまりじゃないですか!??乗っ取るって…乗っ取るなんて…正直その発想はなかった天才か!!

 ( l v l) 「ねえ順番こにしましょうよ順番こ!!!僕も操縦したい!」

マッチョさんもとい人形を引っ張ります。僕は頑張れば触れる系の幽霊ですよ!

(;TДT)「ウ」

 ( l v l) 「なんです!?」

急にニンッチョさんが苦しみ始めました。そんなことしても僕は交代してくれるまで離しませんよ!

(;TДT)「コノ カラダ…イシキ…ツヨ…ケ、ケサレ……」

 ( l v l) 「ん?」

(;TДT)「ヴァぁああぁあぁ!!!!」

ジュワワワワワワ

 ( l v l) 「……」

マッチョさんの口から黒いモヤが出ていきました。
その拍子に人形が床に落ちて、そのまま粉々になりました。

(;TДT)「ん?なんだ?あれ?僕屋根裏部屋いなかった?」

 ( l v l) 「…」

僕は一つ学びました。

 ( l v l) 「僕はジョウブツがしたいのであってショウメツはしたくないです!!!」

 ( l v l) 「マッチョさん」

 ( l v l) 「マッチョリチョ食べたことありますか」

(;TДT)「なに?」

 ( l v l) 「マッチョッチョですよ!」

(;TДT)「さっきと違うよ」

 ( l v l) 「お口の中が天国になるらしいじゃないですか!」

 ( l v l) 「まぁ僕は地獄にも天国にもいけてないんですけどね(笑)」

(;TДT)「不謹慎ジョークは言わなきゃいけないノルマでもあるの?」

 ( l v l) 「僕も食べたいマリオネッチョリ!」

(;TДT)「ネッチョリしたマリオ、本当に食べたいかい?」

(;TДT)「残念ながら僕、飲食は大体プロテインか胸肉、ブロッコリーくらいしか食べないんだ」

(;TДT)「プロテインの新味で出たら分けてあげるね」

 ( l v l) 「マッチョは粉状じゃなきゃ摂取できないんですか?」

(;TДT)「ていうかムネオくん幽霊だからモノの飲み食い出来ないのでは?」

 ( l v l) 「失礼な!幽霊だってオソナエされてれば飲み食いできますよ!」

 ( l v l) 「前の住人たちが食べてる美味しそうなモノを、『オソナエだ!』と思うと飲み食いできました!」

(;TДT)「お供えじゃないじゃないか!」

 ( l v l) 「ちなみに僕たちが食べたり飲んだりしたモノは味が無くなるらしいですよ!」

(;TДT)「もうほぼ強奪だよそれ!」

ピンポンパァンポォオオン♪

(;TДT)「……?」

『防災 サュナアマャ町 デス。オナマえをオヨビしマス。イトー います ダ様、ハグ るまおー様、オマ もカー様……』

町内放送のようです。それ自体流れるのはおかしくはありません。
ただ、町の名前と時間がおかしいのです。

(;TДT)「今、夜中の2時だよね…」

 ( l v l) 「そうですね」

(;TДT)「何この放送…」

 ( l v l) 「なんでしょう、ね」

ハウリングが不気味に響いています。
ノイズが耳にこびりついて不愉快でした。

『様……。イジョオ の方々が アす、◎△々∴%* 致します』

(;TДT)「……」

(;TДT)「肝心なところ聞き取れなかった」

ピンポォンパァアアンポォオオン♪

(;TДT)「今日は風が強いね」

 ( l v l) 「え?」

(;TДT)「ほら、音がしてるし家も軋んでる」

 ( l v l) 「あーーーー」

 ( l v l) 「大きめの怪異が家を揺らしてるんですよこれ。音は鳴き声です」

(;TДT)「えっ……」

 ( l v l) 「流石のマッチョさんも大きいのは怖いですか?」

(;TДT)「どんな筋肉してるのか気になる…!ちょっと見てくるね!」

 ( l v l) 「興味の持ち方気持ち悪いですよ」

ジデデデデ ジデデデデ ジデデデデ

備え付けの電話が鳴っています。
僕は電話は大の苦手です。大体は人間がかけてきますから。
でも、この家にある電話機は前の住人が置いて行ったという代物で、何より、電話線がめためたに切られているのです。

つまるところ、今かかってきている電話は生きてる人間からじゃ無いのです。

(;TДT)「はいっ、僕はマッチョです!」

『ぁあぅあ、カルメンが歩いてぬいぐるみしてることを、君さばいた、見られる泥にコわすゾ』

(;TДT)「そうなんですか?ちなみに貴方の筋肉はどのような状態ですか?僕の筋肉は今日も素晴らしいですよ、ほら、今聞こえましたか筋肉の音」

電話を気軽に取るなんて経験、今までしたことありませんでした。
とても新鮮な気分です。なるほど、誰かの声が聞こえて自分の声が向こうに行く。
電話とは中々に楽しいモノですね、長電話というものをしたくなる気持ちもわかります。

(;TДT)「それでですね!僕の上腕二頭筋の素晴らしいこと………あれっ、もしもーし?」

(;TДT)「なんか、ツーツーしか言わなくなっちゃったよ」

 ( l v l) 「切られてんですよそれ」

(;TДT)「えーっ?またかけてきてくれないかなぁ」

僕の願いも虚しく、2度とかかってくることはありませんでした。

 ( l v l) 「人間嫌いのマッチョでもテレビは持ってるんですね?」

(;TДT)「マッチョ差別だ。マッチクチク言葉は良くないんだよ」

(;TДT)「テレビゲームは好きだから、テレビは必要なんだ」

(;TДT)「ただ、映るんだ…このテレビ…」

 ( l v l) 「霊的なものです?」

(;TДT)「いや人間が」

 ( l v l) 「普通そうですよ」

 ( l v l) 「テレビ見ても良いですかっ!」

(;TДT)「ええ〜…じゃあ僕離れて目を閉じておくよ…」

 ( l v l) 「……あ、懐かしいCM特集やってる」

 ( l v l) 「何でしたっけこれのCM」

 ( l v l) 「愛情一本!…違うな……あっ!」

 ( l v l) 「元気はつらつゥ!?だ!」

(;TДT)「ハツもモツも元気ない身でよくそんな声量出るね」

 ( l v l) 「マッチョ辛辣ゥ!」

(;TДT)「ムネオくんって本当に生前のこととか覚えてないの?」

 ( l v l) 「無いですね、何故ですか?」

(;TДT)「成仏の方法がシ因とか生前に関することだったりしないのかなぁって」

 ( l v l)

 (l v l )

 ( l v l) 「……」

 ( l v l) 「…つまり、なんです?僕が生前のこと思い出せない限りは成仏できないってんですか???」

(;TДT)「いや僕もシんだことないからわからないけど…もう長いこと浮遊霊してきたって言ってたし…何かしらのトリガーがいるのは定石だし…」

 ( l v l) 「哀しい過去がないとダメですか!??」

デキ( l v l) ラァッ「明日もう一度聞いてみてください!本当の哀しいストーリーをお聞かせしますよ!」

(;TДT)「いやフィクション聞かされても…」

僕はしがないマッチョです。
この家に住み始めて、結構な日が経ちました。
人間と関わらずに済むこの家が、僕は大好きです。

ムネオくんと不思議な体験をしながらああでもないこうでもないと話すのも、中々に面白いのです。

(;TДT)「僕多分、こんなに楽しく過ごしてるの産まれて初めてかも」

 ( l v l) 「僕もまぁまぁ面白いですよ、シんで初めてかもしれません」

 ( l v l) 「……でも、たまに思います」

 ( l v l) 「僕は、いつになったら成仏できるんでしょう」

 ( l v l) 「何だかもうずっとこの世にいる気がしてきました」

 ( l v l) 「マッチョさんもいなくなったら僕はずっと1人このまま成仏出来ずにこの世にしがみついてるのかなと考えます」

ムネオくんはどれくらいこの世にいるのかわからないので、厳密にはショタではありませんが、この時ばかりは見た目相応の歳に感じました。
僕は生きている人間が怖いですが、彼はもしかしたら寂しいことが怖いのかもしれません。

(;TДT)「あ、じゃあさ!」

僕は妙案を思いつきました。脳筋では無いのです。

(;TДT)「ムネオくんと成仏の仕方を一緒に探せば良いんじゃないかな、僕がシんだら」

 ( l v l)

 ( l v l) 「それ、いいアイデアですよ」

(;TДT)「じゃあ、約束」

 ( l v l) 「……はい、約束」

見た目相応な笑顔を、初めて見たのでした。

誰かが誰かと道を歩いている。
誰かは、言う。

「あっ、ねえ遠回りしない?」

「良いけど…どうして?」

「知らない?あそこの家の噂」

道のずっと先にある家らしきモノを指差します。
誰かは家と言いますが、誰かにはボロボロ過ぎて家には見えませんでした。

「知らない…なんかすっごい古い…空き家?」

「ううん、出るんだってあそこの家」

誰かが真顔でそう言うので、誰かは少し焦ったように笑いました。

「えーやだ、幽霊?」

誰かは怖い話があまり得意ではありませんでした。
誰かは、誰かに言います。

「違う違う…なんか筋肉がすごいおじさんが1人でずっとブツブツブツブツ言ってんだって」

「えー…怖」

「ね。遠回りしてこー」

マッ()ョ()ョタハ ナシのようです

〜(チもシもない)話のようです〜

「まぁ僕はシんでるんですけどね(笑)」

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