人がやめない組織作り#1
先日長崎県で人気のある飲食店を経営しておられる方の講演を聞く機会がありました。長崎県内で数々の飲食業態を経営しておられる会社オーナーの方のお話です。
人がいない!スタッフが辞めていく!どうする?社長!
飲食店経営のその経営者は仕事に対する信念がありました。
「お客様に満足してほしい。ご来店いただいたお客様に素敵な時間を過ごしてほしい。」
そういう思いから一生懸命スタッフのことを指導していました。時には厳しい時も。
すると、その厳しさに耐えられず辞めていくスタッフが続出。現場が回らなくなったそうです。地域の人気のレストラン。週末は行列ができるほどのレストラン。しかしながらご来店いただくお客様はいるものの、現場のスタッフが不在と言うことで、あえなく閉店に追い込まれてしまう店舗もあったそうです。
辞められたら困る→スタッフに厳しいことが言えない→スタッフが育たない→お客様に満足してもらえない。クレームが増える→売上が落ちる
人手不足の昨今。今の世の中とても多い会社の空気ではないでしょうか。
人手不足が起こすこの負のスパイラルは、健全な職場環境を蝕んでいきます。多店舗展開している店舗にはよく見られる状況です。社長が目を離したらその店はもはや再起不能に。そんなお店も多々見受けられます。
職場の空気を変えた一人のアルバイト。
その人気のレストラン。継続して働いてくれるアルバイトの学生が1人いました。そのスタッフは一生懸命にこちらが指導しようとすると食ってかかってきたり、生意気な行動を取ったりしていました。
しかし、オーナーさんは飲食業に誇りがありました。『どうしてもお客様を笑顔にしたい』『私たちには日々の業務。でもお客様にとってはちょっとしたら特別な日の外食かもしれない。一緒に一度の外食かもしれない。そんな思いでお客様に関わってほしい。そんな思いでサーブしてほしい』
自分のプライドや飲食業に対する思いを混々と伝えました。時には衝突もしながらも。
そのバイトの彼はやがて卒業式を迎えます。そしてアルバイトを退職ししばらくしてレストランにふらりと現れました。「オーナー!警察に受かりました!いろいろとここでの経験を活かして立派な警察官になります!」
飲食業として共有した時間。何のために仕事をしているのか。自分たちの存在意義。何度も何度も伝えた気の遠くなるような時間。衝突。険悪な空気。他のアルバイトの離脱。様々な事を乗り越えて一人前の人間として社会に旅立つ凛々しい姿。いろんなことが頭を駆け巡りました。そのオーナーは目頭が熱くなるほど感動し涙が溢れ出たそうです。
昭和ストロングスタイルの強み
熱い話は今の若い人には敬遠されるキライがあります。
『昭和的。ダサい。イマドキではない。古い。ウザイ。』
しかし1つの出会いが人生を変える。それもまた真実だと思います。
そのためにも何のために仕事をしているのか、中小企業の社長にとって仕事とは人生。自分の生き方。思想。哲学。いろんなものが凝縮しています。
経営者は誰になんと言われようとここをしっかりとスタッフ一人に一人に熱意をもって説明。共有する必要があります。そうすることで1つの出会いが生涯の縁になることもあると思います。熱くないと伝わらない。愛がないと伝わらない。気合と根性がないと続かない。このおぞましいくらいの昭和ストロングスタイル笑。
しかし人間と人間。熱量がないと伝わらないように思います。仕事に対する思い。簡単にコピペできない。リロードできない。なぜなら我々はAIではないから。
この話には後日談があります。数年後、その後また彼がお店に遊びに来たのです。『今度結婚することになりました。』素敵な女性を連れてお店に遊びに来てくれたのでした。
本心本気本音本腰
私の大好きな森信三先生のことばがあります。
『人間は一生のうちに逢うべき人には必ず逢える。しかも、一瞬早すぎず、一瞬遅すぎない時に。』
1つの出会いが人生を変える。この縁が実るかどうか。
それにはお互いに本気で向き合うこと。本心で。本気で。本音で。本腰で。一生懸命に思いを語る。忖度なしに一生懸命に相手と向き合う。そうすることでご縁が実るように思います。
この飲食店のオーナーと警察官のように。