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過去に戻る長い長い旅路 #001 この悲しい記憶

わたしの中に眠るたくさんの魂のひとつひとつを書き綴り、最も深い世界まで書き綴ることを目的に書き始めます。

#001
わたしは諏訪の湖のほとりで産まれました。
父母は、歳をとってから生まれた私をとても大切に育ててくれました。

日々、自分を律するために、川で禊をおこなうことが日課でした。寒い日も1日もかかさぬことで周囲は私に幼い頃から頑張っている、と称賛されていました。

湖の私の家では、私の他にも何人かの子どもがいて私たちは仲睦まじく暮らしていました。

ある年齢に差し掛かった時、私は試験を受けました。そしてはれて、翡翠のクニを守る神事を行う身となりました。

諏訪の友人たちと離れ、私は1人でいました。

諏訪にいた頃よりも「伝える」ことの難しさに悩んでいました。

そこにあるチイキから妻問いの話が持ち上がっていると聞きました。
わけもわからず、しかし受け入れる他にない状況でした。

そして私は2人の子供をもうけ、育てました。

ある時、コノクニはいずれ滅びの時を迎えるとみえます。天から教えられたこの事実が変わるように、変えられないか、毎日考えます。
やがて時は来ました。

この時、私は大切なお客様が来る知らせも同時に見ました。教えを引き継げる時が来たと胸躍りました。先祖が代々口伝してきたことが叶う時です。その方をお迎えしたいという気持ちを抑え、込み上げる思いも涙も抑え込み、泣く泣く旅立ちました。

私の1人めの子は、身代わりに私は残りましょう、と言いました。固く抱きしめ合い、無事を祈り、別れました。あの子は自分の定めを知っていたのかもしれません。

2人めの子は、共に諏訪に帰りました。
諏訪では共に育ったみなが、いました。ひっそりと静かに暮らしました。

しかし大切なお客様が来てクニが荒れなかった事を知った仲間は私を責めました。
あの地にいたかった、と。

私は毎日泣きました。私ももちろん、そこにいたかったのです。

そこにお会いしたかった方の使いの皆様がいらしたのです。美しく澄んだ空気を纏う方々でした。

深く深く話しました。二日間、寝る間も惜しみ話しました。
私は持ってきた大切なタカラを、託しました。タカラの秘密も全て託しました。
いつか、この世が変わり明らかとできる時にタカラの秘密も明らかになるでしょう。

時がたち、わたしは誰にも言えぬ思いをもち、悟られぬように、暗い暗い夜明け前に出立の準備をし、外へ出ました。
幼い頃、共に過ごした友人と目が合いました。私たちはもう2度と会えぬ事を知っていました。でも互いに微笑み、言葉を交わすことはありませんでした。

北にいるかつて出会った美しい命と再び出会えるように北に向かう決意をしました。
北に向かおうと決意した矢先、側近は言いました。海沿いに北へゆきましょう、と。

わたしは驚き、目を見開くと、「そう、彼らが言っていました」と教えてくれました。美しい彼らからのもう一つのギフトでした。

わたしは泣きながら北の地へ歩みを進めます。
もう1人の子を諏訪に残し、友人たちに託して。

長い長い道を歩き、みつけた北の地にかつて見たのと同じ穏やかな波の海と湖がありました。
ここで生きてゆきます。ここで新しくみなが生きて行ける場をつくります。
新しい命と共に。

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