ペットロスを克服したボランティア活動 〜獣医学生さん相手に飼い主役を演じています〜
13年前に、最愛の愛犬を亡くし、私は深いペットロスに陥りました。
最愛の人生のパートナーを失ったことも悲しかったですが、愛犬に苦しい思いをさせてしまったと自分を責める気持ちが大きかったです。
特に病気や怪我をする子でなかったので、それまで動物病院とそれ程関わりもありませんでした。
ですので、どうしてあげたらいいのか・・・迷って悩んで。
でも動物病院の先生を信用できる訳でもなく、私の気持ちに寄り添ってくれているとは到底思えませんでした。
「私(獣医さん)の言うとおりにしないと、飼い主さん、後悔しますよ。」と言われて、でもそれはきっと愛犬が望んでいることでないと思い、病院から連れて帰り、愛犬が安心できる自宅、私の腕の中で最期を迎えました。
何をしていても、悲しくて辛くて、後悔することばかり・・・
ダメな飼い主だったと、もっと信頼できる動物病院の先生を探しておけばよかった。飼い主として、もっと勉強しておけばよかった。
ごめんね、ごめんね・・・と、涙が出ては止められない日々でした。
そんなある日、行政書士の先輩から、
「こういうボランティア活動をしようとしている獣医さんがいるんだけど、一緒に参加しませんか?」と、誘っていただきました。
そのボランティア活動というのが、獣医さんのコミュニケーション相手になる模擬飼い主を演じるというものでした。
「獣医師にも、もっと飼い主の気持ちに寄り添ったコミュニケーションが必要」ということで、獣医さん達によって立ち上がった活動だったと思います。
愛犬が亡くなったのが13年前なので、その翌年くらいに始まりました。
当初は女性獣医さん2名が代表としていらっしゃっいましたが、現在はそのうちの1名の先生のみが代表となり活動が行われています。
当初は任意の活動で、獣医学生さんも希望者だけが休日を使って私たちと実習していました。
ところが時代が追いついてきて、途中から大学の正式な授業に組み込まれ、現在はこのコミュニケーションは国家試験の試験科目にもなっています。
学生さん達が飼い主とのコミュニケーションを練習するために、私達ボランティアが「飼い主役」として演技をします。
病気や怪我の犬や猫を、動物病院に連れていく飼い主です。
シナリオに基づいて、ペットの状態や日々の悩みを相談する飼い主を演じるのですが、何年やっていても緊張を伴います。
実習では動物はぬいぐるみを使いますが、大学内にある本物の診察室で行います。
スーパーバイザーの先生が各診察室にいらして、獣医師役の学生さんの他にも数名の学生さんが診察室にいてやり取りを見ています。
そして実習は全てビデオに録画されます。
(学生さんの振り返りや、先生の確認のために)
また演技を行うだけでなく、セッション後には学生さんにフィードバックを行うという難しい役割もあります。
普段、自分の感情を言葉にして相手に伝えるという事をしていないので、改めて飼い主として「どう感じたか?」を、きちんと言葉にして伝えるのがとても難しいです。
「良い」「悪い」の評価をするのではなく、「私はどう感じたか」を学生さんに伝えなければいけません。
学生さん1人あたり、約20分ほどのセッションを行います。
ボランティアの数によって変わりますが、私たちは学生さん2〜3名(多い人は4名)担当します。
みんなが実習を終えた後、振り返りの授業をシナリオごとに行うので、私たちも授業に参加して意見を求められたら発言をします。
話は前後しますが、このシナリオの勉強のために、大学での実習に向けての研修会が別にあります。
この研修会では、シナリオごとにどんな病気(怪我)で病院に行くのか、家族構成や普段の生活、飼い主としてどういう気持ちで病院に行くかなど代表の先生から細かく指導があり、実習までに全て覚えていかなくてはいけません。
いろんな病気のことを知ることが出来るという良い点はあるのですが、なかなかハードです。
しかも研修会は皆が行きやすい場所で行われますが、獣医学部のある大学はかなり遠方です。朝から出かけて、実習は午後から夕方まで。帰ったら夜です。
(遠方ですので、交通費も結構かかってしまいます)
ボランティアメンバーも続かない人が多いのですが、私はぼちぼちですが現在も続けています。
当初は飼い主の気持ちに寄り添ってコミュニケーションをとって下さる獣医さんが増えることを、とても願ってはじめました。
それは今でも変わりませんが、実際に学生さんと関わると、その一生懸命さが可愛くて素直な方が多い印象です。
実習に真剣に向き合い、動物や飼い主に対して真摯にコミュニケーションをとろうと一生懸命な姿勢に心を打たれます。
特にここ数年の学生さんは、とてもとても練習して実習に臨んでいるのがわかるほど、上手で真面目で熱心です。
私たちの意見も一生懸命聞いてくれるので、いつも清々しい気持ちで実習を終えて帰ってきます。
大学の先生方も、感じの良い方が多いです。
この活動の代表をされている獣医さんが、飼い主さんの気持ちをとても大切にしていて私のペットロスに関しても当初からずっと話を聞いて支えてくれました。
グリーフの勉強もされていて、このボランティア活動以外にもペットロスの方の心を癒す活動もされています。防災や保護猫の譲渡会もされています。
また、このボランティア活動に参加されている方々も同じような経験をされている方が多く、皆さんと話をすると癒されるというのも感じています。
ある研修会の時、ボランティアのメンバーさんが、私の愛犬の写真を見て、犬の人形を作ってきてくれました。
それがとても上手で愛犬そっくりだったのです。
思わず涙ぐみそうでウルッとした瞬間、隣で代表の獣医の先生が「〇〇ちゃん!(愛犬の名前)」と叫び、涙ポロポロ。
「先生、私より先に泣いたらダメじゃないですか。」(私)
「ごめんな、ごめんな。でも、久しぶりに(愛犬と)会えて嬉しいやろうなぁと思って。涙出てきてしまった。」(先生)
と、こんなに寄り添って泣いてくれる獣医さんがいてくれて幸せだったのと、こういう獣医さんが増えてくれたらいいなぁと思い、ますます先生の活動を応援したい気持ちになりました。
こうして、少しずつですが私はペットロスの悲しみから回復していきました。
この活動は、愛犬が繋いでくれた縁です。
あの経験がなかったら、きっと出来なかったし、続いていなかっただろうなと。
これからも頑張って取り組んでいけたらと思っています。
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