芸歴11年目以上のピン芸大会Be-1グランプリを観に行きました。

〇突然の改編と救済

今年のR-1グランプリから新たに芸歴10以下限定とルールの改編が行われたことにより多くの芸人さんが出場資格を失いました。

そんな中、とある有志が立ち上がりクラウドファンディングを通してこのBe-1グランプリが開催されました。


Be-1の「Be」というのは「being:存在」が由来となっており、「自分たちはここに存在しているぞ」とアピールするというコンセプトから来ているそうです。
「ベテラン」ってわけではないそうです。「Veteran」で”V"なので……

さて、先日この大会の決勝戦を新宿角座にて観戦させていただきました。

皆様芸歴10年以上というだけあって堂々とした深みのある芸を数々を楽しませていただきました。

今大会の感想を忘備録としてここに残しておきたいと思います。


出番順に感想を書いていきます。


1.ギャバホイ(フリー)


僕の推しがトップバッターでの登場です。
十八番であるショートコントを披露しました。

新作と言うよりは鉄板に受けるベスト盤といったラインアップが並んでいた印象です。
思わず数年前に新宿ゴールデン街劇場で行われていた月2回単独ライブを回顧しました。

己のショートコントを”ギャバホイ”と呼称するほど唯一無二のゆるふわな雰囲気はツカミの時点でお客さんと審査員の心を鷲掴みにしました。
”起承転転”のような予想だにしない展開と、1つ1つがじわじわと効いてくるワードセンスもショートコントの数を重ねるごとにお客さんの笑いも大きくなっていきます。

締めは人気作『肩でクモが死んでいる』を披露しました。
このようなコアな大会に来るお客さんはタイトルコールだけで大歓喜。

3分だけじゃ飽き足らず、もっと見てみたい!とそう思わせるようなショートコントでした。
久しぶりに生で拝見できて楽しかったです。


2.シオマリアッチ(グレープカンパニー)


敗者復活戦3位で決勝戦に返り咲きました。
有田ジェネレーションでお馴染みシオマリアッチです。
歌ネタ&フリップ芸『A la la la long』を披露しました。

これもまた定番かつ評判の高いネタでお客さんの心をガッチリキャッチしてました。
ギャバホイさんが温めた空気間の中、陽気な音楽に乗せたネタはとても受け入れやすかったのではないかなと思います。

今回の内容は初見でとても楽しむことが出来ました。
韻を踏むのと空耳の組み合わせ次第で無限大にネタを作れるのではないか、とても強い武器なのではないかなと思いました。

今回R-1グランプリの参戦は叶いませんでしたが、歌ネタ王など他の舞台で活躍してくれることを祈っております。



3.インタレスティングたけし


敗者復活戦2位で決勝戦に返り咲きました。
自虐ギター漫談を披露しました。

マイナーコードのアルペジオに乗せて自身の吃音によって起きた残念な出来事を切なくも面白くお話してました。
ブリッジのハーモニカもまた一層哀愁を引き立たせて良かったです。

3人目になり会場も温まってきたのかここから笑い声も大きくなってきた印象です。
自身の経験談を話している時にも何と言ってるのか分からないときもまたシュールで面白かったです。
なにより最も盛り上がったのは締めの歌の部分です。
今まで不器用に喋っていたのに突然のギャップがものすごかったです。

自分の弱みを遺憾なく発揮し、お笑いとしてものすごく強い武器に昇華させていたのが素晴らしかったです。



4.ふとっちょ☆カウボーイ(ラフィーネプロモーション)


今回決勝戦で最もベテランの芸歴30年目、あらびき団でおなじみのあの人です。
よく見る腹出しカウボーイ姿ではなく、『デブンゲリオン』、いわゆる”バケモノシリーズ”です。

全身青タイツにギョロ目の装飾を施し完全に出落ちインパクトで会場を大いに沸かせました。
ネタ中も十八番のおデブあるあるを用いてATフィールドを破壊するというネタでエヴァンゲリオン自体は詳しくありませんがその場の勢いとシチュエーションで大爆笑でした。
奇声がもう猟奇的最高でしたね。

今でももう一回見て腹抱えて笑いたいと思っているくらい中毒性の高いネタでした。



5.Gたかし(サンミュージックプロダクション)


藤原竜也さんのものまねでおなじみ。
今回はR-1グランプリの最終決戦で披露するために温めていたネタだという『プロレスラー空耳ものまね』でした。

最近相席食堂とハリウッドザコシショウのものまねでフィーチャーされている長州力さんをはじめとした滑舌の悪いプロレスラーが話すとこう聞こえるというフリップ芸でとても面白かったです。
ものまねのクオリティーが高いのに加えてフリップにイラストと字幕もついており、聴覚と視覚で楽しむことができ、とても頭に入りやすくプロレスラー初心者でも楽しむことが出来ました。

流石R-1グランプリ決勝進出経験者でもしも本当に最終決戦に進出したら優勝もするのではないかと思うほどのクオリティーが高いネタでした。



6.カトゥー(マセキ芸能社)


最近片岡鶴太郎さんのものまねで注目されており、持ちギャグの「おげんこ~!」もやや有名な方です。
今回は自虐漫談を披露されていました。オネェネタは小道具を忘れてきたとのこと。

宣材写真のオレンジの派手なベストと半ズボンスタイルで舞台を縦横無尽に動き回りながら明るく漫談を披露されていました。
芸歴25年の売れない芸人生活の中で「見方を変える」という手段で不幸な出来事もポジティブに変換するという若干開き直った語り口。
とても軽妙で快活な漫談ネタは思わず笑ってしまいました。

この後に同じく売れない芸人の自虐漫談を披露する野田ちゃんとかなり比較されMC、審査員と様々な方からいじられ平場でも大盛り上がりでした。



7.街裏ぴんく(トゥインクル・プロモーション)


嘘の漫談でおなじみ僕も近いうちにR-1グランプリの決勝にも進むんじゃないかと思っていましたが、残念ながらルールの改正の影響を受けてしまいました。
今回もまた”ウソ”の漫談を披露されていました。

顔を真っ赤にしながら真摯に語る姿は嘘だと分かっていても本当のように聞こえてしまいます。
今回はレストランでアルバイトをしているが、与えられた仕事はごく限られたシチュエーションでしか発揮できず……という内容で、奇妙な物語が展開されていきました。

唯一無二の漫談でテレビ番組等でたくさんの人の目に留まって欲しいと願います。



8.ドック石橋(ラフィーネプロモーション)


手作りのオリジナルアニメと一人コントを組み合わせた唯一無二のネタを披露されていました。
今回は『甲子園』のネタ。無名だった高校が強豪校にリードしており、ざわつく会場、無名高校にはある秘策があり……

アニメと実写の2つの場面を同時に進めていき、ボケとツッコミの役割を与えて物語を展開させました。
野球においてあまりにも馬鹿馬鹿しい作戦をもって戦いに出ているのも面白く、ツッコミのアニメ側に我々観客の代弁の役割を持たせていてとても見やすいと審査員からも評価されていました。



9.ふみつけ大将軍小仲(SMA)


初めて見たのは数年前に中野で行われた『ハゲロンゲライブ』にてハゲとロン毛を司る”ハゲロンゲ様”役として進行されている姿でした。
ピン芸は初見です。

その落ち武者のような様相を上手に利用したピン芸でネタは『タイムスリップ』。
ターミネーター風パロディで過去の自分を助けにタイムスリップ来たが、結果として未来のことより将来の自分について気になってしまう……という内容。

良い声かつ演技力も高くとても見やすいコントでした。
また、展開も面白く、その設定の背景も役に落とし込まれており、物語が進むにつれて「なぜ将来の自分はハゲているのに余裕なのか」というのが分かってきたのが面白かったです。



10.おぐ(SMA)


2回R-1グランプリの決勝に進出した実力派です。
今回もとてもクオリティーの高い一人コントを披露されていました。

今回のネタは『山頂』。
各お笑い賞レースの権威と立ち位置を風刺したネタで、これをBe-1グランプリで披露するのも意味深に思えてしまってとても面白かったです。
バイト生活を止められないおぐさんが演じることでより深みが出ているように感じられました。

受け手である我々観客やお笑いファンが思っていたことを芸人さん側も同じように思っていたんだなとよく分かりました。



11.野田ちゃん(SMA)


大晦日のおもしろ荘を機にメディアの露出が増えてきました。
昨年のR-1グランプリも準決勝に進んだ自虐漫談です。

コンビ解散を経て未だに芸人として芽が出ないことを逆手に取って売れない状況を開き直ってポジティブ思考で乗り切っていきます。

今回は語りだけでなく小道具(?)も用意しておりなお面白かったです。

今日のネタで気づいたのですが、野田ちゃんは僕が生まれる前からアルバイトをしていました。



12.快児(サンミュージックプロダクション)


敗者復活戦1位通過の快児さんがファーストステージのトリを務めました。

今回のネタは『ファンレター』、熱狂的な女性お笑いファンが推しの芸人さんに手紙を書いているが、段々とおかしくなって……という内容でした。

狂気的な風貌で鋭い着眼点で話を進めていく姿はギャップがあってとても面白かったです。
単なる愛情ゆえの暴走ではなく違った方向性で話を展開させつつ最後はまた愛の暴走で締めました。

この方も初めてネタを見ましたがとても面白い1人コントでした。



以上がファーストステージの感想でした。

ここから上位3名がファイナルステージに進出します。
審査の結果、

1位 野田ちゃん
2位 ギャバホイ
3位 ふみつけ大将軍小仲

の3名が進出しました。
惜しくも僅差でふとっちょ☆カウボーイが4位で敗退してしまい、とても悔しがっていたのが印象的でした。
会場が揺れるほどの大うけでしたので本人としても手ごたえがあったのかもしれませんね。


次にファイナルステージの感想です。
出番順は3位から順番に2位、1位と続きます。
審査員が1番面白かった芸人さんに1票入れ、最も票を集めた方が今大会の優勝者になる往年のM-1グランプリスタイルで決めます。


①ふみつけ大将軍小仲(SMA)

今回も一人コントを披露しました。
タイトルは『テレビ番組で再会し、一緒に暮らした親子』です。
借金から家族を守るために1人家を出た父親が、番組を通して家族と再会し、もう一度一緒に暮らすことになったが……

ファーストステージの役と年齢も背景も違う中でしっかりと演じ分けられてたのはとても印象的ですごい上手だなと思いました。
今回は父と娘の会話でこの2つの関係性特有の悲愴感がしっかりと感じ取れる演技でとても面白かったです。



②ギャバホイ(フリー)

今回もショートコントを披露しました。
セトリも新旧交えたベストネタでそろえてきました。
『おすそ分け』でかなり審査員とお客さんの心をつかんだ印象です。
最後に『アナコンダに飲み込まれている明るい女』で締めて大団円のまま終了。

個人的には『火サスが気になって眠れない旦那さん』が好みで観たかったですが、ちょっと尺が長いの3分間の中には納めきれなかったかな?
でも今回もまだ観たいと思わせるようなそんなショートコントの数々でした。



③野田ちゃん(SMA)

今回も自虐漫談を披露しました。
ファーストステージでは今までの芸人人生において話されていましたが、ファイナルステージではここ最近の近状をネタに話されていました。

いつものようにポジティブ思考を発揮していましたが、最後にファーストステージとは違った展開に進めてマンネリが起こらないようになっており、とても面白かったです。

以上を持ってファイナルステージが終了しました。
一人コント、ショートコント、漫談と全く異なる芸風で審査員方もかなり頭を抱えて悩んでおりました。
それぞれ甲乙つけがたいクオリティーの高いネタであり、自分の1票で優勝が決まると考えると審査も難しいと思います。


およそ10分ほど悩んで審査をした結果……


1位 野田ちゃん 3票
2位 ギャバホイ 2票
3位 ふみつけ大将軍小仲 1票

という結果になり優勝は野田ちゃんに決定しました。
最終的にファーストステージと同じ順位になりましたね。


おもしろ荘からの優勝で勢いの止まらない野田ちゃん
トップバッターながら準優勝を果たしたギャバホイ
決勝経験者など強敵に囲まれながら3位に勝ち残ったふみつけ大将軍小仲
惜しくもファイナルステージに残れなかった方々

これを機にもっと日の目を浴びて活躍出来る日が来ることを祈っております。
最後に主催からまた来年の開催も宣言されたので次回も楽しみにしたいと思います。


ありがとうございました。


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