私が「家族本」をつくる理由/インタビューを通して大切なものを知り、想いを繋ぎ続けるギフトを贈りたい
大切な人との繋がりを実感し、出会えたことを喜び合う。
そんな時間は「私の人生でよかった」と、じんわりと日常を温め続けてくれる心の糧になる。
2022年から2年間。述べ100名以上の方へ、人生の節目に想いを遺すインタビューライターとして、個人や家族の方の人生の節目に、これまでの軌跡をインタビューを通して振り返り、経験してきた出来事や味わってきた感情を言葉に遺すお手伝いをしてきました。
いつでも触れられるようにとオンラインの場に遺し続けるなか、やっぱり手に直接触れられる、温度を感じる「本」というカタチで届けたい。
そんな想いが強くなり、1年以上の試行錯誤を経て「家族本」というサービスを立ち上げました。
家族本とは
誕生日や記念日、還暦や退職などの人生の節目、その日を起点として「今日までどんな人生を生きて来たの?」と、これまでの話を尋ね、語られたその人のストーリーを、最新の姿を写した写真とともに1冊の本にするギフトサービスです。
出版との違い
家族本は、何百冊と沢山の人に届けるための出版とは違い、身近な家族や大切な人のために作られる本です。
これまで、お孫さんから、卒寿のばーばへのお祝いとして。息子さんから、自分の父の人生を孫にも伝えたいという未来へのギフトとして。両親から、生まれてきたお子さんに「あなたは愛されて生まれてきたんだよ」という想いを伝え続けるために……。
立ち会うタイミングも、依頼される方の想いも様々ですが、そこには「あなたと出逢えた人生でよかった」そんな人生を愛おしむ時間が生まれています。
知りたい、聞きたい。実体験から生まれたインタビューギフト
私は、大人になるにつれて、昔両親に言っていた言葉が理解できるようになったり「あれってそういうことだったんだ!」と初めて知る機会も、もっと知りたいと思う機会も増えてきたように感じています。
「そんな短い丈のスカートなんか履いて!足を出して冷やしたらダメだよ」
そんな母の言葉をふと思い返した時、私の身体や健康を思っての優しさなのに、当時は”うるさいなぁ”くらいにしか思えなかったなぁとか。(そんな表情の私を見て、母はなんと思っていたんだろう…。)
普段寡黙で口数が少ない父が、ポロっとこぼす昔話が意外すぎて衝撃を受けた経験があったり。
自分が結婚する時になって、そういえば両親はどこで出会って、どこに惹かれて、どうして結婚したんだろう?って気になりだしたり。
そもそも「親」である前に、お父さんとお母さんはどういう人生を歩んできて、どんなことを大切に生きてきたんだろう?どんな想いで働いてたんだろう?
おじいちゃんとおばあちゃんは?私の家族って、どんな人なの?
こんなに身近な存在なのに、知らないことが沢山ある。
一人の人として、彼女、彼らの人生を知りたい。
でも、日々それぞれの人生を生きていると、改めて聞く機会がなかったり、聞こうとするにも気恥ずかしさからなかなか聞けなかったりもする。
だけど、記憶は日々上書きされていくもので、知りたくなった時に聞いても「どうだったかなぁ」なんて曖昧になることも少なくありません。物理的に聞けない距離になったり、聞ける距離にいたとしても、忘れてしまっては知る由もありません。
せっかく話せる「今」があるのに、知り合い続けるきっかけは、日常に溢れているのに。もったいないなぁって思ったんです。
家族でも、変わり続ける関係性だから
もうひとつ。私は家族を「変わり続ける関係性」だと思っています。
家族本をつくっていますと言うと「すごく家族のことを大切に想っている人なんだね」そう言われることも少なくありません。けれど、その問いにはすぐ「YES」と答えられないんです。
確かに、今でこそ自分の家族が大事だと、大切だと言い切れます。が、過去の私は違ったり、今でもその関係性に悩むことだってあります。
幸せそうになんでも話せる友達家族が羨ましいと思う時もありました。(一時的なものにはなりましたが)兄が勘当され、家族がバラバラになったと悲しくなった時期がありました。私自身、結婚したら離婚はないという価値観だったのに、別れを選んだ経験もあります。
保育士をしていた経験からも、身近な友人との会話、インタビュアーとしていろんな人の人生に立ち会わせていただく経験からも、本当に様々な家族のカタチがあるのだと目の当たりにし続けてきました。
例え続柄(関係性)の名前が変わらなくたって、いろんなことが起こる人生だからリアルな関係性が変わらない保証なんてないし、むしろ変わっていくことも自然なことだと、私は思うんです。(その変化や生まれたストーリーがその人らしさ、家族らしさにもなる)
でも、だからこそ。
確かにあった一緒に過ごした楽しかった思い出や幸せだった時間。確かにそこにあった愛を、思い出したい時に「事実」として触れられるものがあったなら。
何度も思い出したい想い出をカタチに残すことは、自分の人生でよかったと肯定するきっかけになる。そう思っています。
第三者だからこそ、聞けることがある。話せることがある。
インタビューさせて頂いた方から、こんな声を頂きました。
正直に言うと、これは「あったらいいけど、なくても困らない」そんなサービスだと思います。でも、時間が経つほどに価値が増す。人生を温め、豊かにしてくれるものだとも断言できます。
写真という目に見えるものと、言葉(感情)という目に見えないもの。
どちらも日々移り変わっていくものだからこそ、今しか遺せない想いがあって、今だから話せるストーリーがある。
「本当はもっと知りたいけど、そのためにはきっかけが欲しくて」「日常的に会話はしているし、一緒の時間を大切にもしているけれど、記録までは手が回ってなくて」そんな人にこそ、頼ってもらえたら嬉しいななんて思います。
大切な人との「今」を知り合い続ける
私がこのインタビューという「対話」を通して1番大事にしたいこと。それは、大切な人との”今”を、もっと大切にしたいと思えるきっかけをつくることです。
ただ話すだけじゃない。一緒に振り返られる想い出を真ん中に「こんなことがあってね、あんなことがあってね」「じゃあ、今はどう?」「これからどんな未来を描いてる?」過去と今が繋がって、今と未来が繋がっていく。
ロマンチストじゃないけれど、80億人の暮らすこの地球で、長いようで短い限られた人生のなかで出逢えることって、軌跡みたいな出来事で。
「あなたと出逢えた人生でよかった」
話すことで、聞くことで、知ることでそのきっかけがつくれたなら。今の自分を、その人との出逢いを、今よりちょっと愛おしく思える。そんな心を温め続ける、繋がりを実感し続けられる1冊をお贈りします。
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photo by.ayako yasui