30歳を迎えた私に、心からの祝福を/石川みゆさんのLife Story
4月生まれ。同学年の人よりも早く誕生日を迎えることがコンプレックスだった20代。「一生20代でいたい!」と思うほど、30歳に対してネガティブなイメージしかなかったみゆさんは今年、想像もしていなかった気持ちでその節目を迎えた。
「30歳が、これからの自分が楽しみで仕方ないです!」
留学、世界一周の旅、社会人になり結婚、出産、独立、起業。様々な経験を通してどんな感情を味わい、数々の葛藤を乗り越えてきたのか。何故、あれほど嫌だった30歳が、こんなにも喜びに溢れた気持ちで迎えられたのか。
みゆさんにしか歩めなかった20代の、10年の軌跡について伺いました。
子どもの時から「大人」が嫌いだった
━━30歳のお誕生日、おめでとうございます!大切な節目、どんな心境で迎えられましたか?
もう、ポジティブな気持ちしかなかったです!なんか、それが信じられなくて。
━━信じられない?どうしてですか?
28歳の時までずっと30歳になるのが嫌だったから「当日こんな気持ちで迎えられてるんだ!?」みたいな感動?なのかな。そんな自分になれたことが、すごく嬉しかったんです。
━━以前は、どんな気持ちで誕生日を迎えられていたんですか?
私、4月生まれなので結構友達にいじられるんですよ。「また先におばちゃんになったね」って(笑)それがコンプレックスになっていたんですよね。「みんなより早く、またひとつ年取っちゃったなぁ」って思っていました。
━━年を重ねる自分を、素直に喜ぶことができなかったんですね。
思えば、学生時代から「大人」に対してすごい悪い印象しかなかったんです。子どもの頃って、校則とか世の中の”子どもならではのルール”があるじゃないですか。そこに疑問を抱く度に「なんで守らないといけないの?」って聞くけれど、学校の先生も身近な大人も、誰ひとり納得のいく答えをだしてくれる人はいなくて。
そこからずっと大人が嫌いで反発ばかりしていたし、その大人に自分もなることがすごく嫌だったんだと思います。やっと理想とする大人に出会えたのは、中国に留学した20代になってからでした。
人生を変えた出会いと経験
━━19歳から23歳。中国での留学は、今のみゆさんにとってどんな経験になりましたか?
“本来の私を取り戻せた“と思える時間でしたね。留学を通して出会った友達は、今でもものすごく大きな存在になっています。特に、留学先の寮で半年間一緒に過ごしたドイツ人のルームメイトからは、1番大きな影響を受けたかもしれません。
━━影響とは、どのような?
ひとつ年上の彼女は、すごく自分を内観できていて、自分の意志をしっかり持っていたんです。そんな彼女に「みゆはもっとYES、NOはっきりした方が良いよ!」って怒られたことがあって。
当時の私って、自分の軸も確立していないから上辺だけというか、気持ちの深堀りされると答えられなくなっちゃう状態で。「今日、遊びに行こうよ!」って他愛もない会話でも、「テスト勉強しないといけないしな…どうしようかな…」とか、かなり優柔不断だったんですよね。
━━相手に嫌な思いをさせないためにという、ある意味日本人らしい性格だったんですね。
そんな様子を見ていた彼女が「NOって言われたからって、あなたのこと嫌いになるわけじゃない。はっきり言ってくれた方が気持ち良いし、そういう関係でいたいんだよ」って言ってくれて。
その時に初めて自分を客観視できて、そこから自分の意思を言えるようになっていったんです。今思えば、彼女の生き方に憧れていたので”自分もそうなって良いんだ”って思えたきっかけにもなったのかもしれません。
夢だった世界一周に行けたのもまた、留学中に出会った友達のおかげだったんです。
一年の休学/夢だった世界一周の旅へ
━━そもそも、世界一周に行きたいと思ったきっかけは?
「僕らの人生を変えた世界一周」という本を読んだことがきっかけでした。一時帰国中、東京旅行へ行った時に、代官山の蔦屋書店で買って、その帰り道の満員電車のなかで読んで。私、人目を気にせずぼろ泣きをして(笑)読み終わった後「これは行くぞ」って決めてたんです。
でも、物理的に休学しないと行けなくて。ただでさえ海外の大学は9月入学・6月卒業で、自分とひとつ年下の人達と就活をするのに、休学するとさらに下の人と新卒入社することになる。2年のブランクをつくってまで行くかどうかギリギリまで悩んでた時、韓国人のクラスメイトに言われたんです。
「たった2年でしょ?これから何年生きると思ってるの!20代のことしか考えてないから2年が大きく感じるけど、80年、100年の一生を考えた時、そんなの点じゃん!行きなよ!」って。
━━その一言が言えるって、カッコイイですね。みゆさんが将来のイメージを持てていなかったのって、もしかすると大人になることへの抵抗感からも繋がっているのでは…?
確かに…!そうだったのかもしれないですね。あの時に初めて、人生を長い視野で見ることができて「100年生きるなら、2年で悩むなんて」と思えて。背中を押されてすぐに、休学届けを出しに行きました。
私、行く前に、家族や友達に宛てて遺書を書いたんですよ。
━━遺書ですか?
どう生きたいか、覚悟が生まれた遺書
━━なぜ遺書を書こうと思ったんですか?
内戦をしている地域にも行くので、初めて”生きて帰ってこれないかもしれない”と思って。私が”後悔しない人生を生きよう”って覚悟できたのは、間違いなくこの経験にも繋がっていると思います。
世界20か国、キューバやアフリカに行った時、お風呂が冷水だったり、蛇口から水がちょっとしか出なかったり。日本だったら災害時に経験するインフラ状態が日常の生活を経験した時、日本が素敵な国だなって思ったし、有ることの難しさを「有難い」と心から思えた。そこに感謝して生きようって。
旅をしている時はまさに、最高な人生を生きてるなって思ってましたね!
━━「後悔しない人生を」みゆさんの想いには、死について考えた経験から生まれた“覚悟“があったんですね。
私の人生観っていうのは、人の生死が深く関わってるなって思います。それに気付いたのも20代だったなぁ。
共働きの両親に代わって祖父母に育ててもらっていたんですけど、私が25歳の時におばあちゃんが亡くなって。その時は本当にもう、すごいつらかった。つらかったけど、それ以上のことにも気付かせてもらって。
その後、20代で今度は自分で命を生む立場になった時、おばあちゃんと我が子、ふたりの間に自分がいるんだなってことをすごく実感して。命の繋がりを感じる素晴らしい経験ができたなって思います。
苦しかった新卒時代/見失った自分らしさ
━━順風満帆に見える20代前半。それなのになぜ、28歳まで30代に対してネガティブなイメージを持っていたのでしょうか?
キャリアについて悩んでいたのも大きかったと思います。特に、新卒の数年間がすごくつらかったんですけど…。
留学の後、家族のことをきっかけに、沖縄に戻る選択をして、日系の旅行会社へ入ったんですね。一番忙しいインバウンドの部署に配属されて、ただでさえ忙しい時に、上司から「新人だから」という理由で、毎朝1時間早く出社して掃除をしなさいって言われて。
私がどれだけできるのか試そうとしてるように感じたんですよ。でも、それに言い返せないのが悔しかったんです。
年功序列とか、日本の昔ながらのやり方が合わないなって窮屈に感じながら、辞める理由がなくて毎日必死で働いてたんですけど。それでもまだ、学んだ語学を活かせる仕事にはやりがいも感じていて。
…でも、26歳で妊娠出産をして時短勤務で職場復帰をした時に、それまで勤めていた海外向けの部署から、日本人向けの部署に異動になったんです。仕事と育児の両立を考えると仕方のないことだけれど、語学を全く使わない部署への異動で、学んだものがどんどん失われて行く感覚になっていきました。
━━自分の求めていた生き方ができるようになった留学時代とは一転、また社会のルールやしがらみ、自分を活かせない環境に苦しむことになったんですね。
「置かれた場所で咲きなさい」って言葉があるじゃないですか。あの言葉、私には合わないなと思ったんです。自分で咲く場所を探したいし、自分の選択を大事にしたいから”決められること”に違和感があるんだろうなって。復帰後の業務は正直つらくて心から楽しめなかったし、ここでは咲けないとも感じていました。
━━28歳で退職し、個人事業主になる道を選ばれたのも、自分で自分の咲く場所を決めたかったからなんですね。
そうです。勤めていた会社は、嫌いで辞めたわけではないんですよ。だけど、世界一周に行く前に遺言を書いた覚悟とか、そもそもその想いすら失いつつあった。それにすごく悩んでいたし、未来をポジティブに考えられない状態だったなって思います。
━━みゆさんにとっての「後悔しない生き方」って、今日が良ければそれで良いという考えではなくて。”これまでの自分”がどう思うかも大事にしたい。語学も経験も、一朝一夕で身につくものではないからこそ、過去の自分も喜ぶ選択をしたかったように感じます。
本当ですね。守りたい想いや生き方があるのに、守れていなかったからつらかったんだなって、今は思います。
自分の咲く場所/独立した後に拓けた道
━━改めて自分の生き方を模索し始め、現在女性のキャリア支援サービスを準備中とのこと。独立してからこの2年の急展開がすごいですね!?
人生を振り返った時って、いくつかターニングポイントがあると思うんですけど、キャリアスクールICOREに入ったこともそのひとつでした。
創業者のお一人、喜多桜子さんは世界一周に行くきっかけにもなった方で(電車で泣いた本の著者のお一人で!)その繋がりからICOREを知って、3期生として入ることにしたんです。
ICOREって、同じ価値観持った方とか、自分で自分の人生を切り開く方ばかりで。私はずーっと、自分の人生観についてだったり、真面目な話でも同じ熱量で話せる環境を求めていて。その場所をやっと見つけられたんです!
苦しい時に、人生と本気で向き合って深められる人や環境と出会えた。そこで向き合えたからこそ今があるなって思います。
━━望んでいた自分の想いを話せる人や環境、そこで辿り着いたのがICOREだったんですね。
私は、一度きりの人生をもっと「本気で」生きる人を増やしたいと思っていて。でも、周りを見た時、過去の私のように本当の自分がわからなくなったり、ライフステージの変化が多い女性は働き方について特に悩みを抱えている方が多いと感じるんです。
もっと楽しく働いていいし、もっと自分の人生を楽しんでいい。新しい生き方・働き方に挑戦する女性をサポートする、そんなサービスを作りました。
━━みゆさんのこれまでの経験が、今のサービスへの原動力になっているんですね。
想像していなかった「幸せな家族」
━━みゆさんのSNSでは、よく家族との日常が綴られていますよね。20代を語る上で、家族の存在も大きかったのでは?
本当に家族には支えられていました。私、もともと結婚願望がなくて(笑)そんな自分が25歳で結婚、26歳で上の子を出産、29歳で下の子を産むなんて考えてもいなかったです。
━━想像もしてなかった未来だったんですね。
そうなんですよ!私、独身の頃はみんなで飲み歩いたりするくらい両親と弟も仲が良くて。100%素のままでいられる関係が居心地が良すぎて、そこを越えられる家族って想像できなかったんですよ。
そこから夫と出会い、子ども達が生まれて新しい自分の家族ができてから思うのは、こっちも負けないくらい良いなって!(笑)もちろん、両親が築いてくれた家族も大切だけど、それ以上に自分の家族が居心地が良くて、大切で。
3歳の娘なんて、どっちが親かなぁって思うくらいしっかりしてて。「ままぁ~、また○○忘れてるよ~!」「わー!ありがとう!」って。私、30歳なのに(笑)
━━毎日「ありがとう」が言える家族がいるって、幸せだなぁ。
すごいことですよね!これが日常になると当たり前になっちゃうんですけど、有り難いなって思う感謝の気持ちを大事にしようって、今改めて思いました。
あと、出産はあれ、なんなんですかね!?すごい神秘的だし、自分って人間なんだっていうか、人として生まれて来た意味をかんがえさせられたというか。あの感覚は、未だに言葉にできない不思議な感動と、驚きと。
——これまで「死」から考えていた人生観が、出産を通して「どう生きるのか」違う視点からも考えさせられたのかもしれませんね。
本来の自分を取り戻せた30歳の今
━━改めて、20代を振り返った今、どんな想いが心に湧いてきましたか?
良い20代だった!って、心から思えているなぁって感じました。自分を見失って苦しい思いはしたけど、そこで自分と向き合うって選択を取らなかったら、今みたいにプラスな気持ちで30代を迎えられてなかったと思うんです。
今年の誕生日に、毎年愛のあるいじりメッセージを送ってくれていた友達が「みゆのことだから、すごくポジティブな気持ちで30代迎えられてるんだろうなって思うよ」って、ストレートに良いことを言ってくれて。私のもがいてるところも見ててくれた人だからすごく嬉しかったし、私自身、捉え方がものすごく変わったなぁって感じた瞬間でしたね。
━━今日があるのは、みゆさんのこれまでのお陰ですね。
そうですね、「ありがとう!」って感じです。20代は子どもから大人への成長過程で、上へ上へって意識が向いていたんですけど、30代は年を重ねて上にも行けるし、自分を深めていける。人生を深められるイメージしかなくて、これからが楽しみだなって思います!
━━年を重ねることに対する捉え方が変わるくらい、自分と向き合い続けてきたみゆさんだからこそ、今、こうして20代の自分に感謝の気持ちが溢れているんですね。最後に、敢えてこの10年に名前を付けるなら?
タイトルかー!うーん…。「本当の自分を取り戻せた20代」かな。このタイトル、めっちゃ視聴率低そうですね(笑)でも、ありのままになれた自分って感じです!
あとがき/みゆさんへ
「30歳へ、ようこそ!」インタビューの当日、沖縄で暮らすみゆさんとZOOMを繋いだ開口一番、私が伝えた言葉に「すごく嬉しい~!」と答えるみゆさんが、去年の相談会の時からは想像できませんでした。
昔から自分のなかにある声を敏感に感じられていたみゆさん。子ども時代、自分の声と真っ直ぐ向き合ってもらえなかった経験が、もしかしたらみゆさんの”らしさ”を内側に閉じ込めていたのかもしれません。
留学で望む生き方、世界一周で広げた視点、自分を表現して良い周囲との関係性が築けることを知れたのに、それが望み通りにはいかなかった20代後半。その葛藤はきっと、今のみゆさんの相手を想う想像力や、自分にも他者にも誠実に向き合う姿勢に活かされているのではないかと感じました。
「やらなかった後悔があまりなかった人生でしたね。恋愛くらい?(笑)」そんな無邪気に話す姿からは、自分の想いに真っ直ぐな子どものようなワクワク感と、これからも後悔のないように生きる覚悟が垣間見えて。愛する家族とともに、まだまだ人生を豊かに味わい続けるみゆさんの旅路が、幸多きことを願っています。
今ここにいるひとりひとりの
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