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2024年 年間ベストアルバム10

皆様、お世話になっております。をかしです。今年はバンドへの加入・ソロ活動など外に向けた精力的な音楽活動を行えた、自身の音楽人生における大きな1年となりました。と同時に、今年発表された新譜との素晴らしい出会いに巡り会えた、音楽鑑賞豊かな1年でもありました。


これまでは、私個人のTwitterアカウント (https://x.com/wokashi_fever?s=21&t=k_NakYKbwYIPGGjlJypUPg)にて、アルバム/アーティストの羅列にて年間ベストアルバムを紹介していました。しかし、今年からこのnote(ブログ)を始めたこともあって、アーティスト紹介・アルバム視聴の感想など「自身がインプットした事を言語化させて発信する」"しっかり伝える・紹介する"必要性や、その意識の芽生えが強く生まれてきました。そこで今回、2024年の年間ベストアルバム トップ10枚について下記に綴っていきたく思います。

ここに記述するアルバムのどれもが素晴らしく、順番に紹介はしますが、あくまで私自身の好みの差分によって序列が生まれてしまうことはご容赦ください、、。

現時点(今文字を打っている時点)でどのくらいの文章になりそうか検討がつかないのですが、つらつらと書いていけたらと思います。ご一読いただけますと幸いです。




〜2024年 ベストアルバム 10枚 紹介〜



10.NewDad『MADRA』

2018年結成、アイルランド出身のオルタナティブバンド。ポストパンクやドリームポップ・シューゲイザーの血脈を受け継いだ正当なる新世代アーティストとして、着実にファンを増やしている新進気鋭の存在。


前々から早耳なリスナーに聴かれていたNewDadが、今年満を持して1st Albumをリリース。The CureやPixiesなど往年のバンドへのリスペクトを公言し、直接的な影響元が見えやすい音楽性でありながら、チャーミングかつポップネスさ華々しい曲が散りばめられた耳馴染みの良い一枚でした。

音楽性との相性もあってか、Instagram・TikTok等のSNSを利用する10,20代への普及、これまでインディーロックにふれていなかった層への積極的なアピールも功を奏して、リスナー/ファンともに増加している印象も強いです。

加えて、音楽性の良さだけでなく、こうしたセルフプロデュース・マーケティングの上手さ、さらに上記アーティスト先人達を自分らのフィルターを通して体系的に伝えようとする活動の仕方も非常に素晴らしい。今年来日公演も果たし、チケットもソールドアウトした実績を思うと、その人気ぶりをうかがえます。


今年1月リリースの新譜ですが、12月の今まで通年で繰り返し聴いているアルバムです。また、上述したように現代において、音楽性そのものだけでない「最も理想的なアーティスト活動の一つ」を行っているバンドだと私的に捉えております。これからも今後の活動が楽しみです。







9.Pale Waves『Smitten』

2014年、イングランド・マンチェスターより活動開始。インディーポップながらも煌めくメロディアスな曲調&リスペクト元への正当なる影響下を感じる楽曲の数々は、年代問わず多くのリスナーから親しまれている。

作品ごとに振り幅広く、前作は00'sオルタナなParamore的バンドサウンドでファンの心を燻った良作でしたが、今作は彼女らが元来持つゴスをベースにドリーミィーなポップさ広がるアルバムに仕上がっています。もう堪らなく最高ですね。そう、最高。

今回紹介する洋楽の中でも、特に耳馴染みの良い作品なのではないかなと。私の音楽嗜好も強いのですが、ポストパンクやニューウェーヴがこうしたポップさのフィルターを通して体系的に聴かれる、そこから辿る行為はすごく豊かな音楽体験だと思うのです。

文化的な違いもあってか、このあたりの音楽が海外と比較すると日本で普及しないもどかしさは常々考えるところだったり、、、。そうした意味合いもあって、Pale Wavesや上述したNewDadなどの新世代アーティストの活躍が心から嬉しく思います。


まあ、こんないち個人の文化的なこと元々より、まずは聴いてもらいたい…(切望)。ポップさは正義(?)なのです。








8.Plastic Tree『Plastic Tree』

1993年結成。ニュー・ウェーブやポスト・パンクなど、海外インディーロックの影響を色濃く受けた音楽性を有し、活動当時より他のヴィジュアル系周辺シーンとは一線を画した存在を放つ。怪奇小説・幻想文学を織り込んだ文学的歌詞も音楽表現の一翼を担っており、現在も根強いファンを多く持つ。


前からとても好きなバンド。近年ではメンバーの作詞作曲も安定しており、良い意味で基盤が整っている作品を発売していた印象です。今作は30周年作品を題してバンド名を冠したアルバムなのですが、彼らの持つ夢想的な音楽、想像以上のその集大成たる深化っぷりに驚かされました。

見ていただきたいのはその曲名。中でも「痣花」〜「メルヘン」〜「夢落ち」のラスト3曲。
もう、ここまで噎せ返る程の耽美な香りのタイトルを付けられるのはこのバンドだけなのでは、、と思ってしまいます。潔いいほどに耽美ですね。


音楽性の変遷やメンバー交代、多数の所属レーベルの移籍など、30年という長い活動で直面した壁や変化の経験も多かったと思いますが、ゴスやグランジに影響を受けて、メルヘンな芸術を愛好する、そうした、自分達の嗜好をPlastic Treeに反映させる表現の姿勢はホントに変わらない。"変わったけれども、変わらない"バンドの代表格なのかもしれません。


この1〜2年でTikTokを中心に海外シーンでバズりはじめているPlastic Tree。これはDIR EN GREYやthb Gazetteなど他のヴィジュアル系と同様かもしれませんが、"キャラクター性"や"歌謡曲的要素"に和の面影を感じられる、日本の独自の文化体系に魅入られる人が多い故の人気の高まりなのかなと。プラは特にvo.有村竜太朗の病的かつメルヘンな佇まいも相まって。


V系の形骸化、シーンの断絶、さらにはV系といえばVtuber系を指すだとか、、色々嘆かれてもう長いですが、Plastic Treeはヴィジュアル系不変の文化の象徴的存在として、これからも永く活動してほしいものです。







7.Bring Me The Horizon『POST HUMAN: Nex GEn』

2004年イギリスにて結成。初期はメロデス/デスコアなど凶悪な音楽性を有していたが、次第にポップネスやミクスチャーの才を開花。2010年中盤頃よりスタジアム級の人気バンドへとスターダムを駆け上がる。「常に進化・変化し続ける音楽性」のため、新作リリースの度に多く批評家から議論を巻き起こさせるロック界の革命児。



「今回はどんなアプローチを仕掛けてくるんだろうか?」とリスナーに予想させている時点で、もうBring Me The Horizon(以下BMTH)にしてやられているな…とリリースの度に思います。トレンドや話題性の取り入れ方が本当にに巧い。このようなバンドだからこそなんでしょうね、今年随一かつメタルコア/エモキッズ感涙のM4『Top 10 staTues tHat CriEd bloOd』が極上のキラーチューンすぎて、とにかく刺さります。さほどこの辺りの音楽を通ってなかった身でも泣かされますね…。エモエモです。。

と思えば、上記したAURORAを迎えたM5『IiMOuslne』は、Deftonesライクのオルタナティブメタル/ニューメタルだったり。振り幅や豊富な音楽性の広さ・深さにとにかく揺さぶられる。



これまでも、メタルギア等小島秀夫作品へのオマージュ、YOASOBIとの邂逅など、世界的な人気も然ることながら、自分達が影響を受けた/与えた文化芸術を取り入れ、BMTHの音楽に昇華させる貪欲さが"モンスターバンド"と言われる所以なのだと思います。


もう結成して20年が経つというのに刷新感を見せ続けている。むしろ若返っているようにすら思います。「批判や変化を恐れず突き進む表現の強さ、その極まれり」を体現し続けるアーティスト性、センセーショナルさに光あれ。







6.清春『ETERNAL』

1994年ロックバンド・黒夢のボーカルとしてデビュー。リリースごとに音楽性を変化させる表現スタイル、退廃的な風貌・ときに破滅的なパンクマインドなステージングが話題を呼び、稀代のカリスマミュージシャンとして人気を博する。また、変遷した表現も相まって、華麗に自分を映し出すファッショニスタとしても多くの支持を集める。



「清春、今度はラテン歌謡を歌っているらしい」時代の移り変わりとともに、その時々に即して多様な表現を見せてきた清春ですが、ラテンかあ…流石にどうなんだろうか….と正直疑念を持ちながらそう耳にした瞬間、あまりの完成度の高さに腰を抜かしました。新譜、めちゃくちゃ凄いです。キャリアハイの最高傑作ですらあるんじゃないかと。(疑ってすみません。。)

彼が得意とする歌唱の歌謡由来さ、元来持つ退廃的かつムーディーさ香る声色がラテンミュージックとの相性が抜群に良い。ダークな世界観もあって、暗いラテンの雰囲気の醸し出される曲調に、漏れ出さんばかりの色気が漂っています。パーカッション主体のリズムセクションも彼の歌に華を添えている。


来年には黒夢・SADSのライブが控えて、またバンドサウンドに立ち返るかもしれないし、反対に全く別の音楽表現を模索するのかもしれません。最近のベースレスなミニマルな楽曲編成を追求して、より静かなアンビエント方面に進んだり…なんて勝手な想像をもさせてくれます。


誰にも媚びず、自身が求める表現を追求した、真のミュージシャンたる究極性が見えた最高の作品。それでもこれに飽き足らず、さらに深部を追求する清春は誰も見たことのない世界へ誘ってくれることでしょう。清春はこれからも目を離させてくれない。







5.Faye Webster『Underdressed at the Symphony』

アメリカ・アトランタ出身のシンガーソングライター。USフォーク・フォークを奏でながらも、ヒップホップやオルタナティブロックシーンにも接近してアーティストと共演するなど旺盛な実験精神も持ち合わせる。


今年初聴きのアーティスト。自然体かつ柔らかな歌声に木漏れ日的安らぎを感じられます。ただ『Underdresed at the Symphony』のタイトル、1曲目『Thinking About You』からの2曲目『But Not kiss』など、穏やかの一言では収まらない人間の複雑な内情を捉えていたり。

ヒップホップミュージシャンのリル・ヨッティーとコラボした『Lego Ring』では、歪んだベースのフィーチャー、積極的なリズムチェンジなど多面性を見せてくれます。賛否あるところかもですが、オートチューンを活用したボーカルアプローチも非常に新鮮。


心の深淵を思慮深く重んじているからこその多幸感、とも言えるのでしょうか。「苦さを知っているからこそ、甘さを感じられる」からこその魅力なのでしょうね。"多様さに豊かさが宿る"懐の深さ・広さを思わせられます。


日常的な生活・心の情動から人間を見つけた"優しさ"に救われる一作。







4.Camera Obscura『Look to the East, Look to the West』

1996年結成。スコットランドのインディー・ギターポップバンド。60年代の温かみに溢れたセピアな曲調、合奏的ハーモニーが奏でる旋律の美しさが魅力。出身の音楽都市から「グラスゴーの至宝」とも称され、その音楽性は高く評価されている。


今作を聴くまでしっかりと認識できてなかったバンド。たしか名門音楽レーベル・4ADから音源をリリースしていると見て、数曲耳にした程度だった記憶があります。しかし今回本作を聴いて、往年の甘美なギター・キーボードが彩る華やかさ・ハモンド・オルガンの音色に癒しと彼女達の音楽愛に満ち満ちた表現を、大変愛おしいものと記憶しました。

メロウなカントリー調も思わせながら、リズムのタイトさは楽曲を強固に感じさせます。それゆえに、ウワモノ楽器の旋律が非常に美しい。



個人的な話、今年はあまり旅行や遠い地に足を運べなかったのもあって、このような異国の地に思いを馳せられる音楽に身を委ねたくなったのかもしれません。


今回名を挙げている作品中に、この手のジャンルと近いアルバムもあまりなかったような。これまで耳にしなかったからこそ、唯一性のある音像に心揺らめいた気がします。恐らくそうでなかったとしても、本作に安らいだ音楽体験は自身の内に大切なものとして、胸に納められていることかと思います。












3.堀江由衣『文学少女の歌集Ⅲ-文学少女と夜明けのバス停-』

1997年声優デビュー。当時より担当作のOP/EDを歌うなど歌手の活動でも有名。アニメ『シスタープリンセス』のOP『Love Destiny』以降、所謂"アイドル声優"としての知名度も高く知られるようになり、渡辺麻友や竹達彩奈など後世のアイドル・声優に多大なる影響を与える。普遍性を帯びた少女的声帯の持ち主で、芸歴30年近く経ってもなお、その透明度は健在。


2024年ずは抜けて再生数の多かった作品。好みの度合いだと、今年最も好きなアルバム。


私自身、堀江由衣のファンで、実は前作を2022年のアルバムランキングで私的no.1に選んだほど。今回もこう選出しましたが、ただの贔屓目だけでない理由を後述したい。


文学少女シリーズ第3作目(歌集目)のテーマは"夏の夜と、夜明け"。このコンセプトやアルバム収録曲は、堀江由衣自身がセルフプロデュース的に、各作詞家・作曲家にイメージを伝える方式にて制作されています。夏の儚き終わりを線香花火に例えたM1『夏は短し、恋せよ乙女』、恋心囚われた夏を爽快的に描くM2『Love me Wonder』から始まり、夏を振り返り、夜明けを迎えるM11『Good morning』にて幕を閉じる。作品全編を繋がりを持ったコンセプチュアル・アルバム。


ここ近年、特に文学少女シリーズを刊行し始めて楽曲群の定まった方向性あって、楽曲クオリティの向上には目を見張るものがありました。アーティスティックな路線に舵を切る同業者も少なくないですが、そこは堀江由衣。絶対にアイドル性を失うことなく、楽曲を届けようとする気概を感じます。ここまで作家性×アイドルさを両立させたバランス感覚は中々他に類を見ない。曲は殆ど耳で聴くものですが、楽曲の見映えが華やかなのです。


日本どこか古風な日常、または風景描写を見せる曲が多いものの、本人が実感した<推し活>を主題に制作された、エレクトロ・ダンスポップ曲M5『まじめにムリ、すきっ』。長年の制作パートナーかつ、歌い手の魅力を誰よりも理解している男・清竜人。彼が作詞曲を提供した、自分自身への愛の囁きを堀江由衣に歌わせる究極のファン曲M6『名前を呼んでくれたなら…♡』など、新機軸や幅の広さも窺える楽曲ラインナップが揃っています。


何より、これらを楽曲群を歌いこなし、アルバムコンセプトに沿った堀江由衣本人の歌唱が素晴らしく素敵。はっきりとした発声、だけど少し気だるげ。夏を快活に謳歌する姿と、夜風に当たりながら座敷や広縁に寝転んだ様子、その両面を同時に想起させる歌声を見事に表現しています。流石という他ない。



四季折々巡る季節は、当然のごとく毎年訪れるもので、その時々に過ごす日々や日常はかけがえがない。当たり前な日常も、ときには特別に思える瞬間だって多くあります。写真のように思い出を切り取って、記憶と記録を紡いで形作られる「歌集」。これを眺め返すことによって、私たちは日々を大切に思い出し、今を生きられるのだと思います。


少し寂しいですが、我々は常に夜明けの先の物語を及び知ることはできません。ただ、簡単に推し量れない余韻こそが、文学的な趣深さなのだと儚き季節は教えてくれることでしょう。

夏は、巡る。








2.BUCK-TICK『スブロサ SUBROSA」

1987年メジャーデビュー。全ての髪を染め上げ&逆立てた強烈なビジュアルが注目され、80年代終盤以降の第2次バンドブームの一角として一際異彩を放つ。初期のゴシックパンクやビートロックの印象は強いものの、次第にインダストリアル/ハードコア・テクノ/ドラムンベース等の打ち込み要素など、千の多彩な音楽風景を描く。
40年近くの活動でシングル44枚、アルバム23枚を意欲的に作品をリリース(記事作成時点)しながら「変化し続けることで体を成し、常に最新作が最高傑作」とアーティストの前進性を評されており、数々の同業者から惜しまれずリスペクトされるレジェンドバンド。


今年の音楽シーンで最も語られるべきアルバムの一枚だと思います。昨年はBUCK-TICKにとって、終末的輪廻より愛を死生観を歌ったアルバム『異空 -IZORA-』をリリースすると同時に、2024年10月19日、バンドのフロントマンvo.櫻井敦司が急逝した、あまりにも喪失に包まれた一年でした。最初に訃報を聞いた際に受けたショックは、到底言葉できるものではありません。


しかし、BUCK-TICKは前を進む決断を下します。同年12月、日本武道館にてバクチク現象─2023─を開催。公演中、翌年に新曲・ニューアルバムのリリースを宣言。そして2024年。11月に新曲『雷神 風神 - レゾナンス 』、そして12月にアルバム『スブロサ SUBROSA』を発売しました。

ただただ凄すぎる。。我々の想像を絶する苦難や選択の帰路に佇んだだろうに、櫻井が逝去した同年(しかも1〜2ヶ月にて)にライブを開催し、その翌年には本当にアルバムを発売している。これだけでもバンドのバイタリティに感服し圧倒されますが、何より驚いたのがアルバム自体の素晴らしさ。


当時新譜を聴くまで「これまでも星野提供の作曲の存在や、今井作詞・歌唱曲であってもBUCK-TICK、なにより櫻井敦司が元来纏っていた"哀愁"と"艶やかさ"が確かに感じられた」ため、今作でもある程度香りが見える、テクノ調のアルバムになるのではと見立てを持っていました。


しかし蓋を開けてみたら、これまで多様なジャンルから染め上げてきたBUCK-TICK色を更に上塗りするかのごとく、誰も聞いたことのないジャンルレスな未知かつ自由な作風に吹き飛ばされた。それも、音楽をまだまだ遊んでやろうとする天邪鬼な様子すら感じられます。


インダストリアルな曲調に今井節全開のラップが響き渡るM2『スブロサ SUBROSA』、ニューウェーブシンセサウンドがけたたましく鳴る中、道化的に愛と平和を歌うご機嫌ナンバーM10『paradeno mori』などファーストインパクトの強烈な楽曲群がアルバムを構成している。

ただ、天井から薔薇を吊り下げた部屋での会話は秘密厳守という風習〈薔薇の下で、秘密裏に〉を意味する、ラテン語『スブロサ』が題するように、M1『百万那由多ノ塵SCUM』、M12『絶望という名の君へ』あたりは、亡き櫻井への手向けと思われる歌詞・彼に向けた優しき歌声がフィーチャーされていて、櫻井敦司の存在があったからこそのアルバムでもあります。


上記の収録内容を鑑みると、これは主観強めですが「あっちゃんは心配しなくていい、俺たちは自由に楽しくやっていくぜ」という、櫻井に向けた4人なりの活動表明と、彼への気遣いが表れたのがこの『スブロサ SUBROSA』ではないのだろうかと、思案してしまいます。


勿論、これはファンに向けたメッセージでもあるかとは思われます。故人の弔い方、さらに飛躍した音楽性&刷新性、こうしたBUCK-TICKのアティチュード、"今と、未来の歩き方" を、変わりゆく中で常に己の体を成してきたバンドだからこそ、その強さにどこまでも偉大さを感じる。


今年も12月29日に日本武道館公演を控えているBUCK-TICK。これからもBUCK-TICKのパレードが続くのは、<演者>と<観客> 双方の存在あってこその相互関係ゆえではないかと。

常に未知の表現を追い求めて、表現の核を保持しながらもパレードの催し物を変遷し続けたメンバー、そんなBUCK-TICKの魅世物小屋に惹かれて「今回はどんな内容なんだろうか?」と、パレードを見たいと願うファンやリスナー。


愛や平和、エロスとタナトス、夢と現実、星に月、永遠不滅な人間賛歌を美しき情景・情動とともに長年歌い続けて/親しまれたBUCK-TICKは、これからも今と、これからの煌めきを伝っていく。行こう  未来へと、行こう。


















1.Alcest「Les Chants de l'Aurore」

2000年フランスにて結成。ブラックメタルにシューゲイザー・ポストロック要素を取り入れた「ブラックゲイズ」なるジャンルを提示。サタニズムな暗黒面を有するブラックメタルと、幽玄さに夢想を抱くシューゲイザーの掛け合わせ。そして同ジャンルもとよりAlcestが描写する空想世界は、国内・シーン内外を問わず越境した認知度を誇り、信仰深いファンを数多く持つ。


浄化。感涙。
美の極地に辿り着いた本作は、聴く者の禊を祓い、救わんとする程の神々しさを宿した芸術作品。


もののけ姫に影響を受けた彼らが描く、自然に魂が宿る様を神道的側面から歌ったM1『Komorebi』、夕陽に照らされながらの森林浴を思わせる多幸感溢れる温かさと、物悲しさを慟哭とする咆哮が叫ばれる大作M2『L'Envol』、アンティーク調のピアノが魂を安らげる想起的なM5『Réminiscence』など、木漏れ日の世界が安寧をもたらす世界観のアルバムとなっています。


前作から5年振りのリリースとなった本作。約10年に渡る長期間のツアーが重なって、コロナ禍も相まって心身ともに深く疲弊し「パンデミック中は1年間曲どころかフレーズの1つすら全く書けなかった」とインタビューにて答えています。

しかし、意図せず訪れた休息の日々が、再び活動意欲の源泉に水が流れ込むきっかけとなります。親しき間柄や家族との親交をより重んじるようになり、人間の温かな気持ちを抱けるようになったと言います。

そしてこの体験は、Alcestに制作インスピレーションの元となる"ドリーミーさの再発見"を思い出させます。活動当初のコンセプトを再来、つまり"光と調和"の世界に満ちた本作は、闇の中をもがき続けてきた近年のバンド経歴から生まれた、回帰的なアルバムなのです。


「暗い時代だからこそ、光に溢れた音楽を作ることに強い意味があると思うんだ」と話すAlcest。音楽を、そして人生を豊穣にせんと願う想いが、この優しき福音のように鳴る楽曲達に込められています。


光と調和を、希望をもって抱きしめて。








おわりに


ここまでお読みいただきましてありがとうございました。追記にはなりますが、選考外のアルバムも含めて、各アルバムから一曲ずつ選出した、2024年ベストソングをYouTubeの再生プレイリストより作成しました。アクセスしやすい再生フォーマットですので、是非こちらもご覧いただけますと幸いです。




話が最初に戻りますが、こうしたベストアルバムの紹介ブログを作成したりと、私生活も含めて、改めて本当に音楽に恵まれた1年だったなと振り返ります。

これからも皆様の音楽人生が実り豊かで、幸多き時間となりますように。

よいお年を



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