見出し画像

コロナ後遺症②(軽症・発症3カ月後)

先日に引き続いてCOVID-19の後遺症について。昨年、オランダから軽症患者の後遺症について報告された論文をご紹介。

方法

特定の2つのウェブサイトでオランダのCOVID-19患者に対してオンラインアンケートを実施。ウェブサイトは Facebook(特定の2つのコロナ関連のグループに所属している)と the Lung Foundation Netherlandsの2つ。

対象患者は、①検査で確定診断され外来治療された患者、②検査で確定診断され入院治療された患者(ICUは含まない)、③症状から臨床診断された患者、④疑い患者(検査なし)。

感染時とアンケート時の症状について回答。29個の症状についてyes/noで回答し、その他の症状で自由記載欄が設けられた。(ただし自由記載欄は異質性が高いため解析には含めていない)

結果

2159人がアンケートに回答し(推定の回答率は16%)、欠損値などのため最終的に2113人が研究対象となった。内訳は①確定診断された入院患者 112人、②確定診断された外来患者  345人、③症状から臨床診断された患者 882人、④疑い患者 774人。アンケート回答したのは発症から79日(中央値)だった。年齢 47歳(中央値)、女性 85%(①では女性 70%だが、②~④では女性 82~91%)、BMI 25.2(中央値)、基礎疾患なし 61%、61%が一般開業医で治療されている。

急性期の症状で多いのは、疲労 95%、呼吸困難 90%、頭痛 76%、胸部圧迫感 75%、咳嗽 68%、筋肉痛 65%、咽頭痛 62%、微熱(37.0~37.9℃)61%、肩甲骨間の痛み 61%、肺の灼熱感/痛み 61%・・・と続く。

アンケート回答時点での症状では、疲労 87%、呼吸困難 71%、頭痛 38%、胸部圧迫感 44%、咳嗽 29%、筋肉痛 36%、咽頭痛 26%、微熱(37.0~37.9℃)22%、肩甲骨間の痛み 33%、肺の灼熱感/痛み 24%・・・と続く。

コメント

以前のイタリアからの報告では入院を要した中等症以上を対象としていたのに対して、本研究では9割以上が検査陰性や軽症の患者であり、軽症患者の中期的な症状の経過を明らかにした。

ただし対象患者を選択する段階で注意すべき点が2つある。

1つは「③症状から臨床診断された患者」や「④疑い患者」が7割以上を占めるため、COVID-19以外の疾患が誤って含まれてしまう可能性だ。COVID-19の診断方法はゴールドスタンダードが確立されることなく、PCR検査がデファクトスタンダードとなっているため、「陽性=COVID-19」・「陰性=COVID-19ではない」と誤解されやすい。しかしPCR検査は低感度・高特異度のため、「陰性=COVID-19かどうか分からない」が正しい。病歴や症状などからCOVID-19を診断することはできるが、どの程度正しくCOVID-19患者のみを対象とできているのかは、今回のデータのみでは証明できない。

2つ目として本研究は参加が自主性のため、症状の頻度を過大評価しやすい。なぜなら症状が残っている人ほど積極的にアンケートに回答してくれやすいからだ。実施、発症から3か月も経過している軽症患者において疲労 87%や呼吸困難 71%は、臨床医感覚としても過大評価感がある。慢性的な症状の頻度を相対的に比較することは可能かもしれないが、絶対的な頻度は参考程度にしておく方が無難だろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?