たのしいMRE その2

 前回はMREのMENU15の中身を書いたというわけで、今度は実食の話。

 ただし私が食べた奴は150%間違いなく賞味期限を大幅に超えた物である。
 そもそもMREはあくまで軍用品であって市販品ではなく、民間に流れているのは平たく言えば廃棄品である。食品としての品質など担保されていないし、オークションはグッズショップなどではその点を承知し、あくまでインテリアの類として扱ってくれ的な事を書き添えてある。
 それを実際に食べるのは、言ってみれば食べることを想定しないものを食べるようなものであり、完全なる自己責任である。
 自分も食べてみたいと思った人は、その点を努々お忘れなきように。

医薬品にも使用期限があるので、常備している人は定期的にチェックしようね

FRHで温める

中の白いのがヒーター(発熱材)。

 MREに付属する加熱器具ことFRH。仕組みとしてはホッカイロにマグネシウムを入れたようなもので、うまくやればお湯を沸かすこともできるらしい。
 ちなみにこの発熱のメカニズムは「Supercorroding Galvanic Cells(超浸食ガルバニ電池)」とかいう、スーパーロボットでも動かせそうな名前で特許がとられているそうな。

調理中の姿か? これが

 作業に没頭しがちな性分なので途中写真を撮り忘れたが、使い方は以下のとおり。

  1. FRHの袋上部の封を開ける

  2. 袋の中にMREのパウチを入れ、ヒーター(発熱材)と重ねる

  3. パウチとヒーターを下の線(DO NOT OVERFILL)より上の所で持ち、線のところまで水を入れる。

  4. パウチとヒーターを袋の底へスライドさせ、袋上部を折り曲げる

  5. 袋をMREのカートン(箱)に入れる

  6. カートンを石などに立てかけて置く

 なぜわざわざ箱に入れるのかは、おそらくヒーターとパウチを密着させて効率よく加熱させるとか、熱を外に逃がさないようにするための工夫だと思う。詳しい資料が無いので分からないけど、たぶんそんな感じ。

 私も袋に記載のマニュアルに沿って使ってみた。
 が、今回FRHが劣化してしまっていたようで、水を注いでしばらく待っても全く発熱しなかった。塩を入れるなどで反応を促進できるそうだが、全く発熱しないのでは無駄であろうと諦めることに。
 こういうのはMRE実食界隈ではよくある事で、放出品にありがちなトラブルらしい。流石に新品でこんなことはそう無いと思うが、実戦で兵士がこんなトラブルに見舞われていないことを願うばかりである。

仕方がないので今回は湯煎する事にした。
戦場でもお湯を沸かす余裕がある時はこうしているかもしれない。

ランボー怒りの湯煎

実食

メキシカンスタイル・チキンシチュー

何か汁気多くない?

 MENU15のメインディッシュ。
 本来はパウチの中からスプーンで食べる物だが、家の中でその食べ方はなんだか切なくなるので皿に移す。プレートの食器とかがあれば、補給部隊のもとでひとまずの休息をとる兵士気分もあったろうが、生憎と用意が無かった。

 しかし如何せんモノが古すぎたのか、何やら妙な香りがする。梱包の臭いが移っているとかでは無さげ。他所様の食レポだとピザっぽい香りがするそうだが、それとはまったく違う。
 どうやらハズレを引いてしまったらしい。

見た目は美味しそう

 味と匂いに目をつむって視覚のみで語ればなかなか良さげ。
 もし次があれば良品に巡り合いたいものである。

全部入れる勇気は無かった

 付属品のレッドペッパーを投入。もとよりこれに入れる用だとか。
すごい粉状で、何やらよく溶けそうに見えるが大して溶けず、混ぜても茶色い塊が浮かぶ。
 少量でも結構な辛さがあり、食べていると冷房の効いた屋内でも体温が上がって汗ばむ感じがした。実にメキシカン。

サンタフェ スタイル・ライス・アンド・ビーンズ

ディストピア飯っぽくも見える

 サンタフェとはメキシコの都市 ではなくアメリカ合衆国のニューメキシコ州北部の都市。同州の州都である。同地の文化・風土には明るくないが、インゲン豆と唐辛子が主要な野菜で、現地料理にも多用されている。

 少しディストピアを感じる見た目の塊も出来てしまっているが、全体的には水分がやや少ないリゾットのような食感。コメの粒は潰れてしまっているが、コーンとインゲン豆が良い感じのアクセントに。
 辛みはそれほどではなく、匂いも良好。こちらの状態は良かった模様。
 レーションというと味が濃いという印象だが、実際に食べて見るとそういう感じはあまり無く、どちらかと言えば塩気が強いと感じる程度。意外と食べられる味である。普段食いは勘弁だが。

ベジタブルクラッカーとチーズスプレッド

飲み物は必須

 クラッカーは特に何の変哲もない、ごく普通のクラッカー。単品でもイケるが、やはり何かつけて食べるの定番。だからどのMREにもスプレッドやジャムなんかが付属している。
 MENU15のチーズスプレッドはハラペーニョ入りになっているが、チーズの味が濃いせいか大して辛くは無い。どちらかと言えば塩辛さの方が強くクラッカーとの相性は良好。普段からちょっとしたおやつにしても良いくらい。

 ちなみに画像のチーズスプレッドはこれでも大体4分の1くらいの量。
 毎日三食食べていたら太りそうな気がするが、戦場の運動量なら問題は無いという事か、それともこれがアメリカ流という奴なのか。

ベバリッジ

明らかにヤバい色をしている

 トロピカルパンチ味のジュース。
 よく分からないが、南国とかパラダイスとかフルーツとかをテーマにしたフレーバー的なやつ。時期やメニューなどによって他にもグレープ味とかいろいろあるそうな。
 本来はベバレッジバッグに入れて作るそうだが、すこぶる飲みづらそうだったのでグラスに投入。私はあくまで味や見た目を調べているのである。

 で出来上がりはどんなのかというと、うっかり写真を撮り忘れた
 見た目としてはアセロラジュースの彩度を引き上げて、気持ち明るくしたような色合い。ケミカル感ある見た目だが、味はアセロラジュースを甘くしたような感じで、存外に美味い。撮り忘れた理由はそれだという事にしておく。
 欧米のお菓子あるあるのように甘ったるくて味が濃いという感じは無く、すっきりとした飲みごたえで、疲れた時はさぞ身に染みるであろう。

インスタントコーヒー

おこげか何かで?

 アクセサリーに入っているインスタントコーヒー。
 豆が入っているとかではなく、フリーズドライした物をお湯で溶かす。状態があまりよくなかったのか、画像のようなどう見ても食べない方がいい気がしてくるような見た目になっていた。
 それでも「お湯で加熱すれば死にはしないだろ」という雑な精神でお湯を注いだ。

色は薄め?

 すると(相対的に)驚くほどまともなコーヒーになった。
 だいぶお湯を入れすぎたとはいえしっかり溶けてくれた。香りや味も安いインスタントみたいなものと思えば上々。

すーっと溶けていく

 コーヒークリームは大匙一杯くらいの量。
 入れるとあっという間に溶けていく。

チーズ・フィルド・プレッツェル

多分一番おいしい奴

 男性の指くらいの太さで、中にチーズが詰められている。赤っぽい色なので遠目だと明太子か何かに見えた。
 プレッツェルのカリッとした食感と、チーズの適度な塩気が小気味良く、いくらでも食べられそうな一品。食後のデザートにも行動中の軽食にも合いそう。何なら酒のつまみに出されても良い。ビールが欲しいとぼやきながらぼりぼり食べている兵士もいるのではなかろうか。


 M&M‘Sのチョコレートについては賞味期限を大きく過ぎており、実際一粒食べてみたところだいぶ酸化していたので断念。
 もっとも、これについてはその辺の店でも売っている品なので、カルディコーヒーとかそういった系の店などを当たってみると良いだろう。

総評

世間が言うほど不味くなく、ちゃんと食べられる物

 今回のは古くて劣化したブツだったというのを考慮してだが、その点を差し引いても死ぬほど不味いなどというものではない。
 流石に普段の食事にするのは願い下げだが、半日以上延々走ったり転げまわったりした後、やれやれやっと休めると荷物を下ろして硬い地面に腰を下ろして食べる物としては悪くない。
 褒めているのか貶しているのかよく分からんが、極限環境で安全な食料が食べられるというだけでも十分有難い装備である事は間違いあるまい。


ところでMREとかって楽天市場でも売ってるらしい。
冒頭で述べた通り、品質の保証はつかないけど。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?