注目の判決
税理士法人 入江会計事務所の北村です。
人が亡くなり、亡くなった人が持っていた財産を相続や遺言により
取得した場合に課税されるのが相続税ですが、この相続税に関する
裁判で先日、注目すべき判決が下されたので、紹介します。
亡くなった人が持っていたマンション2棟について、相続税の申告
書に記載されていたマンションの価額が低すぎるので修正申告する
よう指摘したところ、それを不服としたために裁判になりました。
相続税を計算するにあたっては、亡くなった人から取得した財産に
ついて、それぞれ決められたルールに従って、その財産一つ一つを
亡くなった時点での価値を評価していきます。
亡くなった人が所有していた土地や建物については、一般的には路
線価や固定資産税評価額をベースに土地や建物の評価を行って、申
告書に記載します。今回もこのルールに基づいて申告書が作成され
ていたのですが、税務署側は路線価などによる評価額ではなく、不
動産鑑定士などによる評価額によって評価すべきとしました。
その結果、当初の申告ではマンションの評価額を3億3,000万
円として申告してしたところが、税務署側の指摘後は12億7,0
00万円となり、2億円以上の相続税を追徴されることになりまし
た。
このことを不服として納税者側は裁判を起こし、地裁、高裁を経て
最終的には最高裁にまで持ち込まれて争われたのですが、結局、税
務署側の主張が支持され、納税者側は敗れてしまいました。
亡くなった人がこのマンションを取得したのは90歳、91歳の時
(亡くなる3年前)で、これが将来発生する相続税の節税目的の取
得と見なされたこと、このマンション取得にあたり銀行融資を受け
た際に融資した銀行の担当者が作成した稟議書に「相続対策」と記
載されていたこと、さらにこれらのマンションのうちの1棟を相続
開始の9ヶ月後に売却したことが重なったことで、税務当局の目に
留まり、今回の事態に至ったようです。
相続税の計算にあたり土地や建物の評価額を計算する際に路線価や
固定資産税評価額を用いることはルール通りであって、決して間違
いではないのですが、今回のようにこれらの評価額と不動産鑑定士
などによる評価額との間に大きな差額がある場合には必ずしも税務
当局に認められるものでない、という今回の判断はとても大きな意
義のあるものであり、我々にとっても少なからぬ影響を受けるもの
でありました。
将来の相続にあたり、事前に対策をして節税を考えることは大事で
すが、今回のようにその結果、税額が大きく変わってしまうという
場合には、慎重の上にも慎重を重ねるぐらいの気持ちで事を進めて
いく必要がある、ということを認識させられました。
改めて気持ちを引き締めて、日々の仕事に取り組んでいかなければ
ならないと感じた次第です。