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「デジタル地域通貨」とは何か?というお話

みなさんこんにちは。
アイリッジ IR担当です。

最近、ご当地通貨の存在を耳にする機会も増えてきたかと思います。
その中でも先行事例としてメディアで取り上げられる機会が多いのが、
飛騨高山エリアの「さるぼぼコイン」
千葉県木更津市の「アクアコイン」
この2つ。

何を隠そうこの2つのデジタル地域通貨には、
当社グループの㈱フィノバレーが提供している
デジタル地域通貨プラットフォーム「MoneyEasy」が採用されています。

今回は、そんな「デジタル地域通貨」について私なりに解説していきたいと思いますのでどうぞよろしくお願いします。

全国14か所のデジタル地域通貨がプラットフォームとして「MoneyEasy」を採用(23/12末時点)


そもそも「地域通貨」とは何者か?


いわゆる日本銀行券、日本円のような「法定通貨」に対して、
特定の限られた地域やコミュニティ内に限定して独自に発行される通貨が「地域通貨」と呼ばれています。

その歴史は意外と古く、1930年代から海外で使われるようになったのだとか。今回は触れませんが、この辺りの話も面白そうです。

とはいえ、万人が使うことのできる法定通貨が存在するのに、何故わざわざコミュニティに限定した地域通貨を作る必要があるのでしょうか。

地域通貨とは? という観点で調べてみました。

地域通貨を地域通貨たらしめているのは、「人や地域を支えたい」「環境に良いことをしたい」といった経済合理性の観点からはむしろ不合理な目的やニーズに訴求する工夫が凝らされている点にあります。つまり、人的交流や相互助け合い、環境保護といった経済外的な活動までをカバーした、交換手段としての機能に特化した通貨が「地域通貨」と言えるでしょう。また法定通貨との関係で言うと、地域通貨は経済外的な役割のない法定通貨をカバーする、補完的な存在であると言えます。

NTTデータ OctoKnot掲載記事(下記リンク)より引用

なるほど、同じ通貨でも地域通貨は法定通貨を補完する役割を持たせてきた歴史があるようです。

一方で、「経済外的な活動」の位置づけでは、地域通貨の仕組みを持続的に運用していくための運用コストをどのように賄っていけばいいのか、という課題は付いて回りそうだと私は感じました。


「デジタル」地域通貨とは?


さて、デジタル地域通貨。
2017年12月から商用開始した「さるぼぼコイン」こそが先駆けであり、
その成功事例を皮切りに今では広く全国に波及しています。

端的に言えば前述の「地域通貨」をデジタル化したもの。
紙の商品券をスマホアプリや電子マネーの形で提供する取組み。
いわゆる「キャッシュレス決済」がイメージしやすいと思います。

他のデジタル通貨との最大の違いは、
「キャッシュレス決済の使えるエリアが地域限定」であることでしょう。

ざっくりとした市場環境としては、
2019年末からのコロナ禍、非接触をキーワードに、キャッシュレス決済が我々の生活内へ一気に浸透したことを契機に、また、経済支援策としてのプレミアム付き商品券事業など、従来「紙の商品券」だったものをデジタル化することで運用コストを抑えたいなどといったニーズが高まっている。

という状況にあります。

そのような背景もあり、近年盛り上がりを魅せるデジタル地域通貨ですが、
まだまだ認知が進んでいない事業領域であることもあってか「デジタル地域通貨とは何ぞや?」という投資家の皆さまからの声がよく聞かれます。

例えば、

  • 全国で使える〇〇ペイとデジタル地域通貨では何が違うのか?

  • CBDC(中央銀行デジタル通貨)のニュースを見たが、デジタル地域通貨に影響はあるのか?

  • デジタル地域通貨は具体的にどういったニーズがあるのか?

といった質問をいただいています。

デジタル地域通貨をより理解するため、
まずはそれぞれの言葉について整理していきたいと思います。


「デジタル通貨」とは?


よく混同されがちなのが「デジタル通貨」という言葉になります。
広い意味で「現在使われている現金以外の決済手段」のことをデジタル通貨と言うようです。

特定のサービスを指す言葉ではなく、総称と解釈してよさそうですね。

「デジタル通貨」とは
 → デジタル地域通貨(さるぼぼコイン、アクアコイン・・・)
   電子マネー(Suica、PASMO・・・)
   仮想通貨(ビットコイン、イーサリアム・・・)
   CBDC(デジタル円(後述))
といった所でしょうか。


「デジタル地域通貨」とは?


デジタル通貨のうち、「地域の経済やコミュニティの活性化のため、特定の地域の中で流通し、参加店舗で使えるデジタル化された通貨」のことをデジタル地域通貨と言うようです。

全国どこでも使える〇〇ペイに比べ、使えるエリアが限定されているデジタル地域通貨は一見すると不便なように思えますが、
「地域内にお金を循環させることで、コミュニティの活性化に繋げる」
といった具合に、明確な目的を持たせることができるという点が全国どこでも使える〇〇ペイとの大きな違いではないでしょうか。

この辺りは地域通貨の歴史的な背景を踏まえると理解しやすそうですね。


「CBDC(中央銀行デジタル通貨)」とは?


近年ニュースでも聞かれるようになったCBDCですが、
これはデジタル通貨のうち、
「誰でも1年365日、1日24時間使える支払手段である銀行券をデジタル化したもの」をCBDC(Central Bank Digital Currency)と言うそうです。

銀行券(日本円)そのものをデジタル化、〇〇ペイやデジタル地域通貨のように「1円=1コイン」といった形ではなく「1円そのものをデジタル化(デジタル円)」とする。といった所でしょうか。

ひとまず今回は、CBDC=デジタル円と整理したいと思います。


・・・ふむ?
「現在使われている現金以外の決済手段」をデジタル通貨と呼ぶのであれば・・・

CBDCがあれば大体のデジタル通貨は不要なのでは?という疑問


言葉の意味だけを捉えると、CBDCはデジタル通貨の中でも上位互換のような、いわゆるデジタル円が普及すると他のデジタル通貨の存在価値が薄れてしまうように思いましたがどうなのでしょうか?

その辺りをさらに理解するために、デジタル地域通貨やCBDC(デジタル円)の「目的」に注目して掘り下げて整理してみたいと思います。


デジタル地域通貨の目的


フィノバレーでは、デジタル地域通貨を短期間で安価に開始できるプラットフォームシステム「MoneyEasy」の提供を通じて、次のような「地域の課題解決」を目指しています。

  • 地域や行政の様々な課題の解決を目指す

  • 地域内でのお金の流れに変化を起こし、資金循環を促す

デジタル地域通貨では「デジタル×地域通貨」という特性を活かすことで、他のデジタル通貨にはない「決済だけに限定しない地域独自のインフラ」としての役割を持たせることができる点が大きな提供価値となっています。

これこそが「デジタル地域通貨の目的」と言えそうですね。

以下、引用。

デジタル地域通貨の利用用途は単なる決済手段という枠組みを超え、行政で実施している各種給付金の付与や、健康ポイント・脱炭素ポイント・ボランティアポイントなどのさまざまな施策に活用することができ、地域内経済循環を促すだけでなく、住民の行動変容や地域コミュニティの活性化を実現することが可能です。

NTT東日本 BizDrive掲載記事(下記リンク)より引用
NTT東日本 BizDrive掲載記事(下記リンク)より画像引用

前述の法定通貨と地域通貨の歴史的な背景や役割と照らしてみると、
地域通貨はデジタル化によってアップデートされた。という表現が私としてはしっくりきました。

その結果、「経済外的な役割」を担ってきた地域通貨がキャッシュレス決済機能や地域のインフラとしての機能といった「経済的な役割」も一部担えるようになり、地域通貨を運営していくために必要となるコストを自前で賄えるようになった(=デジタル化によって地域通貨を持続的に運用できる仕組みができた)と、考えることができるかと思います。

まさに鬼に金棒、虎に翼、地域通貨にデジタル化といった印象。


CBDC(デジタル円)の目的


さて、それでは注目のCBDC(デジタル円)の目的ですが、一般的に次のように言われているようです。

  • 紙幣の製造コストの削減

  • 現金の流通過程に生じる金融機関や店舗などの負担コスト(レジ、ATMなど)の削減

  • クロスボーダー決済(海外送金など)への発展や新たなサービスの期待

いわゆる法定通貨のデジタル化ですので、他のデジタル通貨と比べ、よりマクロな(大きい)目的を持っていることがわかりました。

ただ、それだけにルールやセキュリティ、そもそものシステムをどうするのか、といった制度設計の難しさは想像に難くありません。

仮に紙幣や硬貨の代替としてデジタル円が整備されたとして、手元の現金管理はどうなるんですかね?

ウォレットカードだったり、スマホアプリ、それこそ何らかのプラットフォーム上で管理されるようになるのでしょうか。

そういった観点からも「地域」というエリア内でルールを整備することで事足りるデジタル地域通貨の存在は、法定通貨の補完的な役割を担っているとも言えそうです。


2023年11月時点のCBDCの取組み状況について


2023年11月14日に日本銀行決済機構局から「中央銀行デジタル通貨に関する日本銀行の取り組み」が公表されていました。
かいつまんで説明すると、

  • 現時点ではCBDCを発行する計画はない

  • CBDCの社会のニーズが急激に高まる可能性もあるので、実証実験や制度設計面の検討は進めていく

とのことでした。身近になるのはまだ先のようです。

参考リンク
https://www.boj.or.jp/paym/digital/dig231114b.pdf


まとめ


  • 地域通貨の歴史は意外と古い

  • 地域通貨は法定通貨の「経済外的な役割」を担ってきた

  • 地域通貨のデジタル化により「経済的な役割」を果たせるようになった(=運用コストを自前で賄える仕組みができた)

  • 地域通貨はデジタル化によって「使えるエリアを限定したデジタル通貨」の枠組みを超えて「地域独自のインフラ」へと進化している

こんなところでしょうか。

あくまでも個人的な見解ではありますが、
将来、CBDC(デジタル円)が整備されたとしても、それは法定通貨の話ですので、地域通貨としてのデジタル地域通貨が果たすべき役割(地域のインフラとしての役割)は残り続けるのではないでしょうか。


参考① さるぼぼコインが上手くいっていると言われる理由は?


デジタル地域通貨の成功事例として取り上げられる機会の多い「さるぼぼコイン」ですが、その要因についても調べてみました。

さるぼぼコインは、信用組合である飛騨信用組合が運営する地域通貨です。そもそも信用組合は非営利組織であり、飛騨信用組合はさるぼぼコインの運用による過剰な利益を追求する必要はありません。そのため飛騨信用組合では、さるぼぼコインを維持できる程度の手数料で運用できているのです。結果として、さるぼぼコインの加盟店やユーザーのコスト負担が抑えられ、広く支持を集めています

NTTデータ Octonot掲載記事(下記リンク)より


参考② フィノバレー代表 川田氏のインタビュー


最後に、フィノバレー代表の川田氏へのデジタル地域通貨事業に関するインタビュー記事(2019年12月)をご紹介したいと思います。
全文はリンク先からご確認ください。

-現在、デジタル地域通貨はどの程度普及していますか。
川田 日本で地域通貨が注目されたのは、2000年前後の地域振興券が最初でしょう。消費税が3%から5%に上がったタイミングで全国約600の自治体が商品券を配りました。紙ベースでしたが、これは地域限定なので地域通貨の一種といっていいと思います。ただ、結局は地域の経済振興にあまりつながらないまま終わりました。紙ベースは運営コストが約20%かかります。また広告宣伝にもコストがかかる。そのため国の補助金なしでは継続が難しいのです

~中略~

-地域が抱えている課題について教えてください。
川田 地域にお金が落ちないのです。まずAmazonなどアメリカ資本のサイトでショッピングをする人が増えてきました。そしてリアルの店舗も、新しくできるのは東京資本のチェーン店ばかりです。チェ―ン店が進出すれば雇用は生まれます。しかし、超過利益は東京の本社に行ってしまう。それが地域に再投資されればいいのですが、一部は世界中の株主に配当されて流失します。
地元のお店で買い物とするとしても決済手段が問題になります。例えばクレジットカードで決済すると、東京や海外のカード会社が決済手数料として3~5%くらいを持っていきます。このままキャッシュレス決済が普及すればするほど、地域回るお金がますます少なくなる構造なのです。
地域でお金を使い、そのお金がまた地域に回っていく、お金の"地産地消"の仕組みをどうすれば作れるのか。そのソリューションとして、デジタル地域通貨への関心が高まっているのです。

公益財団法人 吉田秀雄記念事業財団 掲載記事(下記リンク)より引用



今回は、デジタル地域通貨について見てきました。

「デジタル地域通貨とはなにか?」に関する疑問の解消に少しでも役に立てていれば嬉しく思います。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。


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