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ストックホルムの展示会で注文が一個もつかずに悔しくて泣いた話
「こんなとこまで来て1個も売れないなんて!」
くやしくて涙があふれた。
2月の午後のストックホルムの展示会場。
北欧の冬は凍りつくほど寒い。
生まれてはじめて降り立った北欧の街は一面の銀世界だった。
ファッション業界の専門誌が主催する展示会。
申し込むときに海外での展示会の出展費用が無料になる「交換プログラム」に応募した。
アイテムはマイナーな帽子だし、そんなに期待される帽子のブランドでもないから受かるわけないよねと思いながらもチェックボックスにチェックするだけなので気楽に応募してみた。
しばらくして突然届いた『出展決定』のお知らせ。応募していたことも忘れていた。
え?!ストックホルム?!どこだそれ?!北欧だよね?
ストックホルムで展示会なんて聞いたことないぞ。
出る気もないのに応募して受かってしまった。はじめての海外の展示会。
展示会初日。
自信をもってデザインした帽子たちは来場したショップのバイヤーたちの目を引くはずだった。
しかし、訪れたのは 同じ建物で開催している骨董市にやってきた 一般客たちばかり。ビジネスの見本市なのにぜんぜんプロのバイヤーの姿が無い。
展示会用のサンプルは 一般客に販売することはできない。
これから生産するための見本になるものでもあり日本で控えてる展示会に出品するものでもあるからだ。
実際に製品化するのは半年後。売れるわけでもない帽子を一般客にかぶってもらう毎日。
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4日目の最終日についに
「あなたの帽子はとてもユニークで個性的。そして新鮮で新しいわ。
私はすごく帽子が好きなんだけどサンプルだから買えないのが残念
きっとあなたは成功すると思うわ」
そうお客様から声をかけていただいた。
はじめての海外の展示会で帽子は1個も注文が入ることはなかった。
「こんなところまで来て受注ゼロなんて」
悔しくて泣いた。
展示会のリサーチもせずに浮かれて展示会に出展してしまった自分を恥じた。
その後、次々へと海外の展示会に挑戦していくことになるのだけれど、その時は二度と海外の展示会なんて出るもんじゃないと思った。
ネガティブ・ケイパビリティ。
「事実や理由をせっかちに求めず不確実さや不思議さ、懐疑の中にいられる能力」
時々この言葉を思うと胸が熱くなる。
失敗したと思ったことがあっても淡々とコツコツとやり続けていると必ず結果につながることは今だからわかる気がする。
このストックホルムの展示会の失敗の経験があったから、その後コペンハーゲンの展示会やパリの展示会で結果を出せたと信じています。
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