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【第11話の2】とあるファミレスのお昼時 ~新入社員の客編

今回の1分で読める1000文字小説は、まだ学生のノリが楽しい新入社員視点で見た変哲もないファミレスの日常が舞台です。第11話の1でウェイトレスを巻き込んだちょっとしたアクシデントはこの新入社員達のテーブルから始まった。



1000文字小説

 毎月こう何度も土曜日出勤があるとは聞いてない。こんな忙しいプロジェクトに配属された新入社員の同期は俺を含めて野郎4人。まだまだ定時で帰っている同期が多いけど、新入社員の勢いか結構仕事漬けの毎日を皆んな楽しんでいる。


 今日も恒例の土曜日出勤だけど、最近はランチを楽しみにもするようになってきて、珍しく意見が一致して今日はファミレスに決まった。


「おい、大原。お腹いっぱいだろうけどパフェはほんまに食べるのか」大原ってのは身長は180㎝くらいあるがたまに女子が出てくるちょっと変わった神奈川人で、入店前にファミレス入口のショーケースを見ていて、なんと今日はデザートにパフェを食べる、と言い出していたのだ。
「さすがにあのパフェは無理でしょ。」と横島。横島は皆のためにつくしてくれるいい奴だが現実主義者だ。
「俺は、あのパフェいくよ」と大原。あのパフェとは『あんこサンデーミルキーパフェ トール』のことで、このファミレスのなかで一番でかいパフェだ。
「やめとけって大原。今日も夜は長いし、あれ食うの無理だって、腹壊すって」と笑いながら大原をたしなめているのは池田。空気を読まない笑い上戸だ。


 外食先で日常的にパフェを食う男子なんて初めて見た。さすが東京は人種のるつぼ。このチョイチョイ女子がでてくる大原ならパフェを注文してもおかしくないのかもしれない。
「実はずっと気になっていたのよあのパフェ。」と大原。しかし女性の店員さんにあのパフェを注文するのか。俺なら恥ずかしいぞ。席に女性がいるのならまだしも男しかいないのに。俺たちは何度も大原に思いとどまるように促したが、意志は変わらなかった。
「おまえらはデザートいらないの?」と大原は聞くがとても小さなケーキ等を注文する感じではない。あの巨大な塔ともいえるパフェを迎え入れるには、邪魔でしかない。


 「横島、そこのボタン押してくれ」とついに店員を呼ぶ。しばらくして店員さんが席に注文をとりにきた。
「おまたせいたしました。」とウェイトレス。
「あんこサンデーミルキーパフェ トールを一つ、以上で」と大原。すごいな、顔の表情一つ変えず淡々と注文をさばくなんて。俺ならクスっと笑ってしまいそうだ。この人バイトなんだろうけどプロ意識がすごい。注文するまでは大原に気持ち悪さすら感じていたが、ウェイトレスに堂々と注文しきった姿を見て、何か男らしさを感じているのだから、不思議なものだ。

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