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ピルを飲んでいた女性が車中泊をして血栓症に・・【地震大国の日本で気をつけたいこと】

ピルについての論文を見ていたら、こんなものを見つけました。

経口避妊薬摂取と自動車内での夜間滞在に起因する静脈血栓塞栓症 熊本地震(2016年)での1症例

なんと、ヤーズ服用中の女性が熊本地震後に血栓症を発症していたという報告です。

今回は、本文献から学べること+地震にあった際の「血栓症予防」についてまとめていきます。

なんせ、日本は地震大国。
いつどこで、地震の被害に合うかはわかりません。

そういえば、先日も千葉で地震がありましたね。

万が一の備えあって憂い無し、です。それでは見ていきましょう。

1.ピルは身動きが取れない状況下ではより注意が必要な薬

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血栓症は「動かない」ことで発症リスクが高まります。

✔なぜ「血栓症」が怖いのか

「なぜ血栓症が怖いのか」という質問に簡潔に答えると、命に直結する疾患だからです。

✔血栓症とは?

具体的には、主に足や太ももの静脈に血の塊ができ、それが肺や脳に飛んで血管を詰まらせてしまう、というイメージです。

静脈を流れる血液は動脈を流れる血液に比べて、非常に進む力が弱いです。
普段は足の筋肉がポンプの役割を果たしているので、血液を心臓に返すことができています。

その機能がうまく働かなくなると、血液の動きが鈍くなります。

血液の流れが鈍くなると、血液の中で血そのものが固まっていきます。すると、塊になった血液はそのまま静脈を流れていき肺にいきつきます。

肺の血管は細い部分があるので、ここでつまったら「肺血栓塞栓症」となり呼吸が苦しくなったりと症状がでるわけです。


✔ピルにはどれくらいの「血栓リスク」があるのか

具体的な数字はでていませんが、低用量経口避妊薬の使用に関するガイドライン(改訂版)によると

妊娠時の血栓症リスクが女性10万人当たり年間60例に対し、ピル服用によるリスクは10例

と言われています。

6分の1なので、結構低い確率であることは確かですが、非服用時と比べると血栓リスクは3~5倍増加するとも言われているのでどう解釈するかはあなた次第。

私的には、やっぱり足を普段から動かすようにして予防はしっかりとしときたいな、という感じです。


✔今回の事例

今回の事例は、熊本地震の際に7日間車中泊をした女性が、8日目に呼吸困難感を訴えて「肺血栓塞栓症」を発症した、というものです。

40代の女性で、6年間ヤーズを服用していました。

今回の血栓症発症には、以下の要因が絡んでいる可能性があると示されています。

・水分・食事の不足
・7日間の車中泊
・ヤーズの服用
・睡眠不足


✔なぜ血栓症を発症したのか?

・水分が不足すると脱水傾向になるので血がドロドロになります。血がドロドロになると、血が固まりやすくなって血栓リスクが高くなります。

・車中泊は、足を自由に動かすことができないので所謂「エコノミークラス症候群」状態です。足を自由に動かせない時間が長いと、血栓リスクが高くなります。

・ヤーズ服用者は、非服用者に比べて血栓発症リスクが3~5倍増加するという報告があります。

これらの要因が重なり合い、40代の女性は「肺血栓塞栓症」を発症したと考えられます。

でも女性はきちんと受診行動を起こし、最悪な状況に至る前に治療を開始することが出来ました。

✔余談:その女性に起こった初期症状

・左下肢の腫れ
・左下肢の痛み
・呼吸困難感

その女性は、8日目の昼車から出て散歩をしていた時、上記の症状に気が付きました。とても典型的な症状です。

ちなみに、車にいたのは夜だけで日中は外を歩き回っていたそう。

夜だけでもやはり車中泊はリスクになるのか、被災している現場で感じるストレスや、水分不足が多くたたってしまったのか。

本当のところは良くわからないですが、「車で7日間寝て血栓症になってしまった事例がある」という事実は知っておく必要があると感じました。

2.地震が起きた時のことを想定しておこう

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想定しておけば、最悪の状況にも備えることができます。

その①:ピルを服用中だった場合はどうする?

大きな地震が起きて避難所での生活を余儀なくされるような時、ピルを服用中であったとしたらそのまま飲み続けますか?

私もこの記事を書くまで考えたことありませんでした。
なので今、ぜひ考えてみてください。

もし服用を続けるのであれば、予定通り生理をコントロールできますし、治療を継続させることができます。

逆に「血栓リスクが怖いから服用をやめる」という選択をした場合、数日後に消退出血が起こるので手元にナプキンがないと非常に困ることになります。

※そもそも自分の判断で辞めて良いものか、事前に医師に確認しておいたほうがいいでしょう。

こう考えると、「ナプキン用意しといたほうがいいな・・・」と思いますよね。

どっちの選択をしても、いずれは生理が来るのでナプキンは必ず用意しておいたほうが良さそうです。

その②:夜寝る場所が車内だった場合

自宅が崩壊しちゃったりして車中泊を余儀なくされる場合を想定してください。

その場合、今回の事例と同じ状況が起こります。

いくらその日からピルをやめても、完全にリスクがゼロになるわけではありません。
むしろ、ピルを飲むより車中泊のほうが原因としては強いという報告もあります。

つまり、車中泊をする場合はピル服用の有無によらずめちゃくちゃ注意が必要なのです。

ではその状況が余儀なくされてしまった場合に、どうするか?
これの対策としては、次の「準備しておきたいもの」という章で詳しくお伝えします。

3.地震に備えて準備しておきたいものは2つ

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準備しておきたいもの、それは①弾性ストッキングと②水分です。

その①:弾性ストッキング

弾性ストッキングとは、血栓予防アイテムです。

病棟では、寝たきりで足を一切動かすことができない患者さんや、下半身麻痺の方に使用しています。

履くだけで足がきゅっとしまり、血液の流れを助けるポンプの役割を果たしてくれるので夜間履くだけで血栓予防になります。

その②:水分

水分の不足は「脱水」の原因になり、脱水になると血液がドロドロになって血が固まりやすくなってしまうので、水分の確保は非常に重要です。

「なぜ水分が大事なの?」

そう思うかもしれませんが、今回の事例で水分と食料の不足も血栓症発症の要因として挙げられています。

人は約2L/日ほどの水を必要とするので、なるべく水分を確保できるよう事前に準備を固めておきましょう。

地震に備えて、ピルを服用中の人は「弾性ストッキング」と「水分」は用意しておいたほうが吉、です。

4.まとめ


以上、ピルを飲んでいた女性が車中泊をして血栓症に・・【地震大国の日本で気をつけたいこと】でした。

私自身も、地震が起こった際どんな準備をしておくべきなのか、そしてどういう対処法を行うべきなのか、それを改めて考えることができました。

本記事をまとめると、

・車中泊×ピルの服用×水分不足が非常に危険
・ピルの服用を続けるか否かを考えるためにはナプキンが手元にあることが大事
・車中泊になることを考えると、「弾性ストッキング」と「水分」の準備はめちゃくちゃ重要

です。

今回の事例から学べたことは結構多かったですね。

ちなみに、

「これは40代の女性の事例なんだから若い人は大丈夫でしょう!」

と思っていたとしたら、それは間違いです。
こちらに20代でもヤーズフレックスを飲んでいて死亡してしまった3例を紹介しています。

≫ピルを服用して死亡してしまった事例を見る

今回は血栓症予防としての対策をメインにまとめましたが、なによりも「リスクが隣にある」ことを認識して日常生活を送っていくことが大切です。

地震の被害にあった際、わたしはピルとどう向き合っていくのか。
そんなことを今一度見直していけば、最悪の事態は防げるかもしれませんね。

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