宝石缶詰め(ショートショートnote杯参加作品)
今、子どもを中心に大人気の缶詰がある。
名前は宝石缶詰め。
小瓶に入った液体と缶詰のセットで、密閉された缶を開けると中には子どもの指先ほどの光る石が一つ入っている。それを日光の良く当たる窓辺に置き、小瓶の液体を毎日一滴づつかけるのだ。すると小瓶が空になった頃には手の平程の大きさの石になるというものである。液体をかける時間や、日光の当たり具合で色や形に変化があるらしく、出来上がった石は世界に一つだけしかない自分だけの宝石になるという宣伝文句だった。
子ども向けの雑貨屋で手に入るそれは、入荷すればたちまち売り切れでなかなか手に入らない品になっている。
ところがある日、生産業者が急に販売中止を発表した。
理由は製品の原材料が入手困難になったため。
「人魚の涙が使われてたらしいよ」
そんな噂を耳にした。
そうか、人魚の涙は枯れてしまったのか。