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全国学生調査の本当の狙い─教学マネジメント指針と補助金との関係を読み解く。

全国学生調査は、表向きは「学生の学びの実態を把握する調査」という建前になっています。しかし、詳細に検討すると、単なる実態調査ではなく、「教学マネジメント指針」 の実行性を担保し、「教育の質向上を経常費補助金の配分と結びつける仕組み」 になりつつあることが見えてきます。

特に令和4年の第7回調査以降、大きな方針転換を目立たせずに、少しずつ政策適合の方向へ調整 が進められています。


1. 教学マネジメント指針との関係

「教学マネジメント指針」は、大学が教育の質を担保し、その改善サイクルを明確に示すことを求める文部科学省のガイドラインです。
特に、「IRの活用」「教育データの透明化」「学生の学びの可視化」を重視していて、全国学生調査の方向性と一致する部分が多くなっています。

そこで、議論の時間軸と変更点と補助金の加点係数にどのように関わっているかみていきます。

第7回(令和4年10月)
変更点:「社会的責任や倫理観」の設問を明確化
指針との関連:「学士課程教育の成果を測定する指標」への対応

第8回(令和5年6月)
変更点:「学習時間」「授業の質」「キャリア教育」の実態把握を強化
指針との関連:「学修成果の可視化」への布石

第9回(令和6年3月)
変更点:教学IRの活用を強調し、調査結果をFD/SD活動や教学改革に活かす方針へ
指針との関連:「データに基づく教育改善サイクル」への適合を強化

第10回(令和6年4月)
変更点:「ポジティブリスト方式」による情報公表を検討(特定の大学のみ公表)
指針との関連:IRデータの透明性を強調しつつ、大学の自主性を担保する方向へ微調整

結論
全国学生調査は、教学マネジメント指針が求める「教育の質の可視化・改善」に確実に組み込まれていることがわかります。


2. 経常費補助金(教育の質改善)との関係

全国学生調査の結果は、今後、経常費補助金の評価指標として組み込まれる可能性が高い と考えられます。特に、「教育の質の向上」や「学生の学びの実態把握」に関する指標が補助金審査に直結する流れが見えてきます。


そこで、議論の時間軸と変更点と補助金の加点係数にどのように関わっているかみていきます。

第7回(令和4年10月)
変更点:「学生の学修成果」をどう測るかを議論
補助金との関連:教育の質評価の基盤づくり

第8回(令和5年6月)
変更点:学生の学習時間の減少・課題フィードバックの不足が問題として浮上
補助金との関連:「教育の質」に直結する形で可視化開始

第9回(令和6年3月)
変更点:LMSやゼミ単位での調査促進策を強化
補助金との関連:回答率向上 → 全国比較が可能になり、大学の教育の質が明確に数値化

第10回(令和6年4月)
変更点:「ポジティブリスト方式」により上位大学を公表へ
補助金との関連:教育の質が高い大学を評価し、補助金配分に影響を与える仕組みが整備

結論
このように、全国学生調査の結果を教育の質評価の指標として組み込み、補助金配分に連動させる動きが進んでいることがわかります。


3. 目立たぬように微調整しながら政策に適合させる動き

全国学生調査の会議では、気づかれぬよう大きな方針転換はせず、少しずつ「教学マネジメント指針」「教育の質改善」へ適合する形に調整が確実に進んでいることがわかります。

微調整の具体例

  • 質問数の削減(60問 → 48問 → 45問 → 33問)
    学生の負担を軽減するとしながらも、「必要な指標は確保」する形へ収束

  • 調査時期の調整(11月~12月 → 10月~3月)
    回答率向上を図る

  • IR活用の推奨(教学IR・FD・SD活動との連携)
    大学の自主性を尊重するという形を取りつつ、実質的にデータ活用を義務化

  • 情報公表の「ポジティブリスト方式」
    競争を生む仕組みを構築しつつ、大学の反発を抑える

結論
こうした調整は、合理的に考えれば、政策の方向性に適合させるためのものと考えられます。一方で大学側の反発を警戒しながら慎重に進められている様子もうかがえます。


4. 総括(全国学生調査の本当の狙い)

全国学生調査は単なる実態調査ではなく、政策適合度を測る仕組みになりつつあることは確実といえます。
大学は単にアンケート調査に協力をするということではなく「教学マネジメント指針」「教育の質向上」の内容の理解と方向性を意識しなければ、評価は下がり、補助金に影響を与える仕組み に仕上がっています。


5. 大学当局(IR)はどう考える?

IRが取り組むべきことは・・・

全国学生調査のデータを「内部改善」に活用しないといけない
教学IRを強化し、データ分析結果を補助金戦略に活かす
公表データ(ポジティブリスト)を分析し、他大学と比較して強み・弱みを明確化する
なにより「これは必要だよ」ということを、学内にわかってもらう。これが一番ハードル高かそうです。

全国学生調査を「文科省の求める方向」に合わせるのではなく、「大学の戦略のために活用する」視点が必要となる。

これは大学の経営や補助金戦略にとって見過ごせない変化です。
単に調査に回答するのではなく、「教学マネジメント指針」や「教育の質改善」の枠組みの中で、どのようにデータを使うかを考える必要があります。本当に、真剣に考えないといけないですけれど、皆さんの大学ではどのようにしているのでしょう。気になります。


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