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IRフェアのブース設計 - 名証IR所感

はじめに

皆様ご存じの通り、9/6~9/7に愛知県名古屋市は中小企業振興会館にて名証IR EXPOがありましたが、僕も大学生の頃ぶりに行ってきました。

実に10年ぶり位な気がします。

僕も多分そろそろ1,500社位は取材してきていて、出た決算全部読むぜ! みたいなことをやっていた時もあった (最近、決算発表の時期は逆にIR支援のお仕事対応が重なり、昔程読めていない問題があります) ので、多分どの会社もさっと見たこと位はあるはずなのですが、「この会社…何やってる会社だっけ…?」みたいなことがぼちぼちあるなぁと反省しながら色々な会社の話を聞いていました。

8割位は投資家として回っていて、「中々面白い社長だなぁ」とか、「しばらく見てなかったけどあの事業はそんなことになっていたんだなぁ」とか、「昔よりも株主/投資家の方を向いている気がするなぁ」とか、色々なことを思っていたのですが、それとは別に思ったことがあり、今回のnoteを書くに至りました。

それは…
「ブースの掲示、どうにも情報が足りなくて話聞こうか迷う…」
という問題です。

普段「IR資料、こういうの載せてくれると嬉しいな」とか「こういう風に情報を整理しておいてくれると助かるな」とかやっている訳ですが、最近はこの辺について、色々な人が色々な観点から指摘してくれることもあってか、ある程度情報が揃ってきた気がします。

一方で、こういうIR EXPOみたいなのは年間で言うと名証IRと日経IR位しかない訳で、イベント的なこともあってあまり話題にならないのか、「こういう情報が欲しい!」っていうのあまり見かけた覚えが無いなぁ…と、名証IR撤退前に思い、最後は会場をそんな観点で一周してみて、思ったことを書いていければというのが本稿です。

ターゲットは誰と捉えるか

とはいえ、まず考えたいのは「誰に向けてのものなのか」だと思います。

これに関しては、現地でお話した長年名証IRを見てきた投資家が面白いことを言っていました。

「昔よりも若い人が多くなったと思うし、そもそも人も多くなった」
「昔はもっと粗品を貰いに来る年配の方が多かった」
※表現を一部マイルドにしております

また、たまたま土曜日に企業側に居た人と話したのですが、その方も
「昔は開場してすぐ年配の方が押しかけてきて、帰りに見ると粗品だけ回収されて説明資料がゴミ箱に捨てられていた」
みたいなことを仰っていました。

まぁかつての名証IRの民度は置いておき、やはり株式投資がより広い年代に浸透し、
かつポジティブな扱いを受けるようになってきている、というのがあるのかと思います。

その上で、どういった層をターゲットにするべきでしょうか。
IR EXPOみたいなイベントでは以下の2つの意味合いがあると思っています。

① 株価対策としてのIR
② 潜在顧客層へのコミュニケーション

①はいわゆる「IR」です。適正な株価に近付けるため、自社に興味を持ってもらい、状況について適切に伝え、今が割安であれば買ってもらうように、今が割高であれば待ってもらう、あるいは売ってもらうように働きかける取り組みです。

②は、おそらく個人投資家向けかつ広い層が来る場として、「あの会社の運営するサービス/商品を使ってみたい/行ってみたい」というような需要に繋げたい、あるいは「あの会社、感じが悪かったからサービスはもう使わないでおこう」というのを避けたい、という思いです。

僕自身は正直②はどれ位重要性を求められてるか分かりません。(事業会社経験無し)
ただ、話を聞いている感じや、各社のブース設計を見る感じ結構少なくない割合が考えているのかなと思います。

それぞれに対するアプローチは多分違うな…ということで、分けて考えてみます。

株価に対するアプローチ

上記①でアプローチしたい対象(投資家)が何を考えているかというと、結論は「この会社の株を買ったら儲かるのか?」あるいは「この会社を保有し続けていて良いのか?」だと思います。

この層がまず気になるのは以下の点だと思います。
1: 株価は割安かどうか
2: 成長している企業かどうか
3: これまでと比較した変化があるかどうか

この内、3は直接的に表現するのが難しい気がします。一方で、1,2については当該情報を掲示しておくだけなので割とやり易い気がするのですが…実際回っていたところ、この辺りを完全に開示している企業はほぼ無かったです。

なので、まずは以下のような情報がパッと見れるようになっていると、何かしらで引っかかる投資家を作ることが出来るのではないでしょうか。

1: 株価
「単元当たり幾らか? 買いやすい値段か?」に対するフック
2: 時価総額 
「小型株が良い」「大型株が良い」を気にする投資家に対するフック
3: 指標 (PER, PBR)
「割安株が良い」投資家に対するフック
4: 配当利回り/優待利回り
「高配当株が良い」投資家に対するフック
配当額の推移とかもあると気にする人が多そう
5: 業績推移+中計があれば計画値 (売上高、営業利益、純利益)
「成長株が良い」投資家に対するフック (額と率両方で示してくれるとベター)

実際、この辺りの数字だけ見てチャンスがありそうであれば「とりあえず話を聞こう」となる投資家は一定数居ると思うのですが、この辺りの情報が完備されているブースは正直ほぼ無かったです。ぐるっと回って見た限りFUJIだけだった気がします。

多かったのは市場関連情報として株価を掲示している企業ですが、正直株価だけってあまり役に立たないんですよね…
金曜、土曜と変動があるので掲示しにくいのはあると思いますが、ホワイトボード風にして書き込んでいる企業様とかもあったので、工夫次第かと思います。
でも他のイベントと使いまわしとかもしているのかな…それだとコストがかかるのかな…

(確か)トヨタ紡織さんだったと思うのですが、市場関連情報などをモニターで開示していました。これだと更新しやすいし、自動遷移するような画面になっているとスペースも取らなくて良さそうだなぁと思いました。電気どこから引っ張って来てたんだろ。

上の情報が全部出ている前提で、事業に関しては以下のような情報があると投資家的に掘り下げ易い気がします。

1: そもそも何を扱っているのか? (メイン事業やサービス、セグメント複数ある場合はその割合も知りたい)
2: 市場はどういう環境なのか? 成長市場なのか?
3: 今伸びている/伸ばしたいビジネスは何なのか?
4: 中長期の戦略は?

基本的には当たり前の内容だと思いますが、たまに①がそもそも不透明なブースとかもあり、「開示している内容的にはこういう事業だと思うけどなぁ」と思いつつ話を聞くこともありました。

あと、折角色々な企業と会えるイベントなので、この情報があると嬉しかったなというのがあります。
それは、「今ブースに社長が居ます/居ません」情報です。

どこか忘れてしまったんですけどこれが掲示されている企業さんがあり、結構良いなと感じました。

結局のところ、会社の方向性を決定付け、全社としての業績を引っ張っていく要素に、トップの意思や力があるのは間違いないと思います。
「社長来てるならちょっと話聞こうかな」と思う投資家は一定居るはずです。

勿論色々な人が話したいと思うので、可能であれば1人で拘束せず順番に話聞きましょう。というか僕も聞きたいから…

上の情報があると、「とりあえず話聞こうかな」センサーに引っかかりやすいのではないかと思います。

企業イメージ/ファン作りに対するアプローチ

改めて②に関してですが…あまりそういう考え方したことないので、こっちは推測になるんですよね。
むしろ皆さんの「こういうの好き!」をコメントでくれると企業様側が万が一このnoteを見た時参考になるかもしれません。

そういう訳で、僕が好きなのは商品/製品の実物を置いてくれている企業です。

B2Bの製造業なんて特に製品を見るケースが無いから面白いですし、実際に見てみると解像度が上がることもあります。
愛知時計のメーターとか、ダイナパックの食品向け段ボールとか「あー、確かになー」とかいう感じでした。

B2Cでも、普段あまり比べられないものだったりすると製品とかの良さが伝わりそうです。トヨタ紡織の自動車の座席シートとか展示されてましたが、あぁいうの好きです。ニチハのサイディングもありましたね。結構重かった。

あとは優待関連の情報でしょうか。
この辺で目に付いたのは、JBイレブンとか名港海運ですかね。
個人的には優待の中身ガッツリ書くなら優待利回りの目安も書いておいてくれると嬉しいですね。

優待利回り高いなら高いで「100株持っておこうかな」とか思いますよね、多分。

私が思うのはこの辺りなのですが、是非「この情報が欲しい!」系の話があったら教えて欲しいところです。

おわりに

基本的に、この手の投資家向けの取り組みとしては
① 如何に効率良く認知を取るか
② 認知して貰えた人に売買して貰うか
だと思っています。これはIR支援で資料作る時と同じですね。

人を引っ張る情報は全部まとめて、効率良く投資家を引っ掛けていきましょう!

求、上記以外で「正直これが欲しいと思ってた」情報!

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